たじま ゆきひこ:作 くもん出版 定価:1500円 + 税 (2014年6月)
私のお薦め度:★★★★☆
第20回 日本絵本大賞の対象を受賞した絵本です。
本書の推薦文を書かれている明石洋子さんから、お薦め絵本として寄贈を いただきました。
本書の推薦文を書かれている明石洋子さんから、お薦め絵本として寄贈を いただきました。
作者の田島征彦さんは、今はオノコロジマで暮らしながら、型染めで絵本を作られています。そのオノコロジマの小学校に転校してきた「おおた ゆうすけ」くんが、学校で出会った ふしぎなともだち「やっくん」の物語です。
絵本の魅力を文で表すのは難しいのですが、オノコロジマ(実は、淡路島の古代の呼び名です)での、自閉症児やっくんとともだちたちのホンワカした日々です。
型染めの絵は昔懐かしく、一人ひとりの子ともたちも個性的で、やっくんがみんなの中に溶け込んで、本当に自然でそこにいるのが当たり前に見えています。
型染めの絵は昔懐かしく、一人ひとりの子ともたちも個性的で、やっくんがみんなの中に溶け込んで、本当に自然でそこにいるのが当たり前に見えています。
「れいぞうこ かってに あけたら あかん。
れいぞうこ かってに あけたら あかん。」
しぎょう式の 日、 たいいくかんの ろくぼくに のぼって ひとりごとを いっている 子が いて、びっくりした。
だれも 気にしていない ことにも びっくりした。
れいぞうこ かってに あけたら あかん。」
しぎょう式の 日、 たいいくかんの ろくぼくに のぼって ひとりごとを いっている 子が いて、びっくりした。
だれも 気にしていない ことにも びっくりした。
最近は、自閉症についても、子ども達向けの入門書や解説書もたくさん出版されるようになりました。
自閉症ってどういう障害か、とか、どんな風に接すればいいか、など、わかりやすい絵や言葉で説明されています。
それはそれでいいと思うのですが、この絵本では障害の説明や具体的な対処法はでてきません。
それはそれでいいと思うのですが、この絵本では障害の説明や具体的な対処法はでてきません。
みんなは、やっくんが いけない ことを したら、 やさしく おしえている。
大声を だしている ときは、おちつくまで まつ。
やっくんを みんなの中へ つつみこんでいるようだ。
あそぶ ときも、 べんきょうする ときも いっしょだ。
ただ、ごく自然にやっくんを一緒に包みこむように、あるがままに暮らしています。
小さい頃から、いっしょだったからそれが当たり前で、中学生、そしておとなになっても、やっくんはやっくん、それは変わりません。
小さい頃から、いっしょだったからそれが当たり前で、中学生、そしておとなになっても、やっくんはやっくん、それは変わりません。
中学校の入学式。
やっくんは、やっぱり きんちょうして 大きな 声で さけびだした。
先生が とんできたが、みんなで 先生を とめた。
ぼくたちは、やっくんを むりに とめると もっと たいへんな ことに なるのを しっていた。
やっくんは、やっぱり きんちょうして 大きな 声で さけびだした。
先生が とんできたが、みんなで 先生を とめた。
ぼくたちは、やっくんを むりに とめると もっと たいへんな ことに なるのを しっていた。
ひとりごとを いう ことで、 やっくんは 自分の 気持ちを おちつかせる。
「やっくん しずかに しなさい。やっくん しずかに しなさい」
ひとりごとも、やっくんの ふくさようの ない くすりだ。
「やっくん しずかに しなさい。やっくん しずかに しなさい」
ひとりごとも、やっくんの ふくさようの ない くすりだ。
周りのみんなが、やっくんの行動を理解して「副作用のない薬」とひとりごとを言うことも認めてあげれば、精神科医の調合された「副作用のある薬」(薬って、なんらかの副作用を伴うものなのだそうです)は、そんなに必要ではなくなるかもしれません。
昔は、日本全部がこのオノコロジマのように、障害をもった人や変わった(異質な)子どもたちにとって許容範囲が広かった、みんなが暮らしやすかったように思えますね。
もちろん、この社会の中で障害を持ったやっくんは苦労しながら生きています。
たとえオノコロジマでも、現実は確かに厳しいです。
パニックになることもあるし、いじめられることも、障害を理解されないで怒鳴られることも・・・
たとえオノコロジマでも、現実は確かに厳しいです。
パニックになることもあるし、いじめられることも、障害を理解されないで怒鳴られることも・・・
としょかんへ ゆうびんはいたつに いって、やっくんと であった。
「とけい なるか、とけい ボンボン なるか、とけい・・・・・・」
「こら、しずかに せい! しずかに せんか!」
としょかんに きていた 人が やっくんに どなった。
しかられても、やっくんは へんじが できず、 いわれた ことを くりかえすだけ。
「とけい なるか、とけい ボンボン なるか、とけい・・・・・・」
「こら、しずかに せい! しずかに せんか!」
としょかんに きていた 人が やっくんに どなった。
しかられても、やっくんは へんじが できず、 いわれた ことを くりかえすだけ。
「しずかに せい! しずかに せい! しずかに」
「こらぁ! 人を ばかに するのか!」
やっくんは 自分の てくびを かんでいる。
ずいぶん つらい おもいを してるんだろうな。
この話は、実際に社会に出て郵便局に就職した「おおた ゆうすけ」くん(こと小田陽介くん)とクロネコヤマトのメール便の配達の仕事をする「やっくん」(こと治井一馬くん)が配達先でいつも出会っていることをモデルにして、創作されたエピソードだと思います。
まだまだ、一般的には自閉症というものが理解されていないことがわかります。でも少なくともやっくんを包みこむように大きくなってきたクラスメートたちなら、そんなことはないですね。子どもたちが社会の中で育つことにより、社会の方も育っていくのだと思います。
ところで、作者の田島征彦さんの名前を見て、どこかで見たようなお名前・・・と思われた方もいるのではないでしょうか。
田島征彦(たじま・ゆきひこ)さんは「じこくのそうべえ」などで有名な型染めの絵本作家の方です。
よく似たお名前も田島征三(たしま・せいぞう)さんは「しがらきから吹いてくる風」に登場するドローイングの、やはり絵本作家の方です。
実は、お二人は双子の兄弟で、お二人で合作絵本の「ふたりはふたご」も作られています。
こちらも “ふしぎな” ご縁ですので、興味のある方はご覧ください。
こちらも “ふしぎな” ご縁ですので、興味のある方はご覧ください。
それはさておき、この「ふしぎな ともだち」ぜひ小学校や特別支援学級の書架には置いてほしい本です。何度も何度も繰り返し見たくなるような、とても味のある不思議な絵本です。
(「育てる会会報 209号」 2015.9より)
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