いじめられない、仲間はずれにされない子に育てる 真っ先に読むアスペルガー症候群の本 | 私のお薦め本コーナー 自閉症関連書籍

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自閉症・アスペルガー症候群および関連障害や福祉関係の書籍紹介です by:トチタロ

司馬 理英子:著  主婦の友社  定価:1100円+税  (2015年3月)
 
          私のお薦め度:★★★☆☆

今月は、新刊本の中から、題名とかわいいイラストに惹かれてみなさんが“真っ先に”一度は手に取るのではないかと思われる本について紹介します(2015年3月31日発行)。

なにしろ表紙のタイトルは 「いじめられない 仲間はずれにされない子に育てる 真っ先に読む アスペルガー症候群の本」、いいキャッチコピーですね。
著者は「のび太・ジャイアン症候群」の名付け親で、これまではどちらかというと、ADHD関係の著書が多かった、医師の司馬 理英子 先生です。
入門本ですので、イラストも多く80Pほどですので、気軽に読めると思います。
 
内容は、2部構成で、PART1は『 「育てにくい子」と感じたら、アスペルガー症候群が隠れているかもしれません 』の章で、お母さんが子育てに違和感を感じてからの、アスペルガー症候群の発見とその特性の解説、PART2は『 潜在能力を引き上げ、問題行動をストップさせるために家庭でできること 』として、家庭でのこれからの“対処法”についてアドバイスされています。
 
ですから、すでに告知を受けて、家庭で子育てに取り組んでいる育てる会のみなさんにとっては、当たり前の話のような印象をもたれるのではないかと思います。その意味では、今月のお薦め本は、会員の方に向けて、というよりは、まだどう“ちょっと変わった”孫と付き合っていけばいいのか戸惑っているおじいちゃんやおばあちゃん方にお薦めの本のように思えます。
育てる会でも世界自閉症啓発デー記念講演会で「今さら聞けない 自閉症 基本の「き」」のタイトルでセミナーをお願いしましたが、同じように本書のPART2も「コミュニケーションをとるための 基本の「き」」で始まります。“真っ先に”読む、入門書だと言えるでしょう。
 
書かれているアドバイスもお医者さんらしく(司馬先生ご自身は、自らがADHDであるとカミングアウトされておられるそうですが)、いたって実利的な内容が多いです。
先ほどの基本の「き」の内容も、①「呼ばれたらそちらを見る、返事をする」、②「「おはよう」「こんにちは」「さようなら」を言おう」、③「ありがとう」を言おう・・・など、どんなことに気をつけていれば “いじめられない、仲間はずれにされない”か、という対処法が書かれています。お医者さんからもらう、処方箋のような一冊です。
 
でも考えてみると、私たちからみると、そんな当たり前に見えることが、このような形で“処方箋”にしてもらわないと、暗黙のルールとして身についていないのが自閉症・アスペルガー症候群の特性で、また「本人が分かっていない」ということを分かっていない保護者が多いのも、自閉圏と非自閉圏の文化の違い故(ゆえ)なのかもしれませんね。
また、対処法として有効なやり方としてコミック会話やソーシャルストーリーなども紹介されているので、興味を持たれたお母さん方には指針となる入門書だと言えるでしょう。
 
ただ、全体を通して、あまり著者の司馬先生の姿、というか、人間性、思いの部分があまり見えてこないのが、残念といえば残念なところでしょうか。
いわば、初めての大病院の診察室で、初対面の冷静な白衣の先生から、診断と、これからの家庭での対処法を聴いている・・・というような感じでした。
 
もちろん、本書の最初のページにあるように、医師として、4人のお子さんを育てた母として、また当事者として、暖かいエールは送っていただいています。
 
発達障害は発達のでこぼこがあるのが特徴で、得意な領域がある一方で、かなり難しい領域もあります。そのため、一生懸命に子育てをしていても発達障害の特徴をしらないとうまくいかないことが多いのです。
しかし、早く気づき、適切なサポートをしてあげれば、能力を伸ばし、社会に適応しやすくなることがわかってきました。
学校教育法が一部改正され、平成19年4月から「特別支援教育」が実施されています。教育環境も大きく変わりつつありますので、希望を持って子どもに接してください。
 
それでも、初心者の方に分かりやすいことばで、しかも短く伝えようとすると用語の解説や、一般的対応法の紹介が中心になってしまうのは、イラスト付き入門書の宿命ともいえるでしょう。
 
育てる会の会員のみなさんも、子どもが大きくなってくると、「ちょっと気になる」と若いお母さんから、先輩のお母さんとして相談を受けることも増えてくると思います。そんな時に「こんな本もあるよ」と、とりあえず“真っ先に”お薦めしてもいい本の一冊だと思います。
 
          (「育てる会会報 203号」 2015.3より)
 
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目次
 
  巻頭コミック
    勉強はできるけど、まわりとの協調性がなく、女の子の世界で孤立してしまう
          ・・・・ 小学校2年生のミカちゃんの場合
    みんなと一緒の行動が苦手
          ・・・・ 幼稚園のユウくんの場合
    一見、問題なくやれているが、自分の気持ちを表現できない
          ・・・・ 4歳のアヤちゃんの場合
    興味のないことに関心を向けるのが極端に苦手
          ・・・・ 小学校2年生のリョウくんの場合
 
PART1  「育てにくい子」と感じたら、アスペルガー症候群が隠れているかもしれません
 
  子育てがうまくいかないとき、発達障害のせいである可能性があります
  アスペルガー症候群とはこんな発達障害
    アスペルガー症候群の特徴は①
                              人とのかかわり方が独特
    アスペルガー症候群の特徴は②
                              他人とのコミュニケーションがとりにくい言葉でのコミュニケーション
    アスペルガー症候群の特徴は③
                              他人とのコミュニケーションがとりにくい言葉以外のコミュニケーション
    アスペルガー症候群の特徴は④
                              興味、関心の幅が狭い、こだわりが強い
    アスペルガー症候群の特徴は⑤
                              相手の気持ちがわかりにくい
    アスペルガー症候群の特徴は⑥
                              感覚が過敏なこと
  アスペルガー症候群の子育てでつまずきやすいのは
  わざとやっているのではない行動をうまく見つけ対処するには
  「~しなさい」と命令しない
  子どもを叱るのはやめよう
  子どものいいところを見つけてほめよう
  こじれた親子関係を修復する魔法の時間 「スペシャルタイム」
 
  Column 新しいカテゴリー「自閉症スペクトラム障害」とは
 
PART2 潜在能力を引き上げ、問題行動をストップさせるために家庭でできること
 
    コミュニケーションをとるための基本の「き」① 呼ばれたらそちらを見る、返事をする
    コミュニケーションをとるための基本の「き」② 「おはよう」「こんにちは」「さようなら」を言おう
    コミュニケーションをとるための基本の「き」③ 「ありがとう」を言おう
    コミュニケーションをとるための基本の「き」④ 助けてほしいと言えるように教えよう
    コミュニケーションをとるための基本の「き」⑤ 「いや」「やめて」が言えるように教えよう
  相手の言葉を真に受けやすい
  わからないことに対してとても不安
  〈こだわり〉が強いときにはこうしよう
  〈パニック状態〉になったときの対処法は
  集中するのが苦手なときには
    毎日を過ごしやすくするためにお母さんができること① スケジュールを決める
    毎日を過ごしやすくするためにお母さんができること② 書いて教える
    毎日を過ごしやすくするためにお母さんができること③ わかりやすいやり方を伝える
    毎日を過ごしやすくするためにお母さんができること④ 人とのかかわりのルールを教える
  通級指導教室(通級)を活用する
  特別支援学級(固定)を活用する
  何か変だな?と感じたときに相談できるところは?支援してもらえるサービスとは?
 
   索引