原 仁・高橋 あつ子:編著 合同出版 定価:1600円+税
私のお薦め度:★★★★☆
「自閉症のともだちを理解する」という書名や、イラストがたくさんある構成から、自閉症の子どものいるクラスの「ともだち」向けの本かと思われるかも知れませんが・・・実は、私もそう思って手にとりました・・・、少し違いました。
対象は、主に小学校の普通学級で自閉症児を担任されている先生に向けて書かれています。
まずは、「事例編」で、自閉症の特性から起こってくる様々な場面を列挙して、その時の本人の気持ちを代弁し、それに対する良い対応と良くない対応を具体的に解説しています。
確かに、専門知識をあまり持たないまま、初めて自閉症児の担任となってしまったような先生にとっては、行動の背景に気づかず、誤解されやすい子どもたちです。
「気になった言葉をいつまでも繰り返す」
「のりや絵の具が手につくのを極端に嫌がる」
「食事に関してとてもこだわりがある」
「正しい姿勢が保てない」
など、自閉症の特性を知らないと、「わがまま」や「自分勝手」と誤解され、ともすれば無理やり全体に合わせて、従わそうとするケースもあると思います。
例えば「ピストルの音ががまんできない」
子どもにとっては、きらいな音が聞こえると「頭が割れるよう」「耳がちぎれるよう」に痛かったり、「頭をどんどん殴られているように」感じたりするばあいもあります。耐えられないほどの苦痛を感じる子もいます。
そんな子にとって「がまんしろと言われても無理」なことは当然ですね。また、言葉のない子にとって、耳を押さえたり、逃げ出しそうになるとしたら、「こんな思いを感じているのではないか」、と推察してあげるのは周りの人の役割でしょう。
この場合の「よい対応」としているのは、「子どもが耐えられるものに変える」で具体的には「笛、タンバリン、電子音式信号機などうるさくない音に変える」ことを提案しています。
まずは先生が、自閉症について正しく理解して、クラスメイトが本人の「ともだち」になり「なかよし応援団」となるためには、どのようにクラス運営をしていけばよいか。
それを目的として書かれている本です。
後半は、これも初めて自閉症やアスペルガー症候群を持つ子どもを担任することになった先生の疑問に答えるようなQ&Aとなっています。
「基礎知識編」とあるように、確かに専門書で勉強する前に、その前提条件として知っておいてほしい用語や療法の解説もあります。
最初の質問は
「自閉症スペクトラム(障害)と広汎性発達障害はどう違うのですか?」
さあ、どうでしょう? なんとなく 分かっていると思っていても、改めて問われると正しく答えられる方も少ないのではないでしょうか。
特に、子どもたちの療育に関わっていると、どちらの診断を受けていても「同じものです」と言ってしまいそうですね。
本書によると「ほぼ同じ概念」と言われることが多いのですが(ですから“ほぼ同じもの”で間違ってはいないようです)、違いは二つあるそうです。
一つはASD(自閉症スペクトラム障害)は障害を連続体ととらえるのに対し、PDD(広汎性発達障害)はカテゴリーに分ける診断基準の概念ですから、自閉症とアスペルガー症候群は別々に診断され、両者が併存することはない、ということです。
もう一つは、PDDにはASDにはない、レット症候群(女子に発症する、いわゆる“手もみ自閉症”)と小児期崩壊性障害が含まれることです。
これからは、これらも把握したうえで、「ほぼ同じですよ」と言いましょう (^_^.)
他にも、
「自閉症はなぜ発症するのでしょう?」
「自閉症は薬で治りますか?」
「高機能症候群とアスペルガー症候群の違いはなんですか?」
などの素朴な疑問から、
「TEACCHプルグラムとは?」
「感覚統合療法とは?」
「ソーシャルストーリーとは?」
「心の理論とは?」・・・などなど、の疑問にわかりやすく解説されています。
イラスト版とあるように、各ページ イラスト入りで読みやすくなっていますので、日ごろお忙しい先生方でも気楽に手に取れ、また「事例編」などは気になる行動からまずは読み始めて、そしてクラスに「なかよし応援団」を作る手助けにしていただきたい一冊です。
(「育てる会会報 171号
」 2012.8 より)
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目次
まえがき
【 事例編 】
01 会話の受け答えがうまくできない
02 自分だけがわかる言葉を使う
03 ひとりごとを言う
04 会話がかみあわない
05 相手の言葉を自分に置き換えて返事をすることがむずかしい
06 表情を読み取れず、言葉のみに反応する
07 気になった言葉をいつまでも繰り返す
08 場になじまない大きな声でしゃべる
09 ひとり遊びが多い
10 会話をしていても目が合わない
11 自分の都合のいいときだけ参加する
12 場を読めない、空気を読めない
13 表情・身振りで意思表示がうまくできない
14 人が見ている時に限って目立つことをしてしまう
15 人から言われたよくない言葉ばかりおぼえている
16 事実とは異なることを言う
17 言語表現やマナーなどを学習しても、活用できない
18 かかわりが一方的になってしまう
19 人の名前を覚えられない
20 他の人からどう見られているか気にしない
21 相手との距離感がつかめない
22 創造的な遊びが苦手
23 相手の気持ちが理解できない
24 経験したことを作文や絵にできない
25 想像して文章を書くのが苦手
26 「自由に」と言われてこまってしまう
27 特定の者、行動などに対して強く執着する
28 急な予定変更に対応することが苦手
29 のりや絵の具が手につくのを極端に嫌がる
30 食事に関してとてもこだわりがある
31 いろいろな物のにおいをかぐ
32 体を揺らしたりピョンピョンはね続けるのが好き
33 ピストルの音ががまんできない
34 狭い所に入りたがる
35 よく人や物にぶつかる
36 危険を予測することが苦手
37 目の前で手をひらひらさせる
38 暑がり寒がり
39 衣服の調節ができない
40 正しい姿勢が保てない
41 突然笑いだしたり、泣き叫んだりする
42 ストレスや疲れを感じにくい
43 自分の髪の毛を引っぱったり他人にかみついたりする
44 指先や体がうまく動かせない
45 自分にも話されているのかわからない
46 好きなことが途中でやめられない
【 基礎知識編 】
自閉症スペクトラム(障害)と広汎性発達障害はどう違うのですか?
自閉症はなぜ発症するのでしょう?
自閉症の診断とは?
乳児期の自閉症の特徴はなんでしょうか?
自閉症の赤ちゃんの頭は大きいのでしょうか?
ダウン症候群にも自閉症の診断は可能ですか?
高機能自閉症とアスペルガー症候群の違いはなんですか?
自閉症と注意欠陥多動性障害(ADHD)は別々の障害ですか?
より広い自閉症の表現型(BAP)とはなんですか?
自閉症とてんかんは合併するのですか?
DAMP症候群とは?
類自閉パターンとはなんですか?
ミラーミューロンと自閉症の関係は?
自閉症の子どもはどのくらいいますか?
自閉症は薬で治りますか?
顔を覚えられない子どもがいますがどうしてなのでしょう?
感覚統合療法とはどのようなものですか?
TEACCH(ティーチ)プログラムとはどのようなものですか?
ソーシャルストーリーとはなんですか?
心の理論とはどのようなものですか?
ソーシャルスキルトレーニングとはなんですか?
語用論とはどのようなものですか?
発達障害者支援法とはどのような法律ですか?
発達障害者支援法で受けられる支援は?
自閉症の人が社会生活をおくるために気をつけることはなんですか?
自閉症の人は不登校につながりやすいのですか?
自閉症の人は非行の加害者になりやすいのですか?
自閉症の二次障害とはどのようなものですか?
参考文献
解説