自閉症のTEACCH実践 ③ | 私のお薦め本コーナー 自閉症関連書籍

私のお薦め本コーナー 自閉症関連書籍

自閉症・アスペルガー症候群および関連障害や福祉関係の書籍紹介です by:トチタロ

佐々木正美:編 桑原綾子・重松孝治・服巻智子 他:著
岩崎学術出版社 定価:2500円+税 (2007.9)

    私のお薦め度:★★★☆☆

今月のお薦め本は、いつもの新刊書とは少し違って、実は5年ほど前に出版された本です。
全国各地で、TEACCHプログラムを療育や支援に取り入れて実践されているみなさんからの報告集です。すでに3巻目なので、ご覧になられた方も多いと思います。


実は、今年の8月4日に育てる会でセミナーをお願いしている、桑原綾子先生が第1章 で

『「ライフサポート ここはうす」3年の歩み ~家族の方・地域の方との連携を通して~』

を執筆されていらっしゃるので、この機会に改めて読み直してみて、みなさんにもぜひご紹介したいと思った次第です。


桑原先生が、以前勤められていた今治市の知的障害児施設ひよこ園は、自閉症児へのTEACCH プログラムをとり入れた療育に取り組まれています。

このシリーズの第1巻「自閉症のTEACCH実践 」や「同 ②」 でも紹介されています。私たちも、児童デイサービス赤磐ぐんぐんを立ち上げる際には、みんなで見学に行かせていただいて、実際の支援の様子を拝見させていただき多いに参考にさせていただきました。その時の様子は、当時の育てる会会報75号にも載せさせていただきました。


桑原先生の「ライフサポートここはうす」は、そのひよこ園に通う保護者の方たちが、研修を続けるため設立したNPO法人コミュニケーションハンディキャップ研究会(通称:コミ研)が運営主体となっています。
本書では、その立ち上げの様子から、ここはうすで実際に行われている支援のやり方までが詳しく書かれています。


2003年4月にたくさんの方から応援をいただき、今治市のはずれにある一軒家を借り、開所する運びとなった。「このようなサービスの前例はない」との理由で行政からの支援は得られなかった。さらに自分たちの思いひとつからはじめたところもあって、経営や運営の知識もなく、すべて勇み足。しかし、何とか自分たちの足で立ち、いい支援が継続できるような経営状態を確立し、たくさんの方に恩返しをしたい、そして誰より自閉症を伴う子どもたちにとっていい支援をしていきたいと日夜努力を重ねている。


私たちが「ないものは作っていこう!」と育てる会でやってきたことと同じ思いですね。お金はないけど、思いだけはいっぱい・・・学びたいことがいっぱいの「ここはうす」です。
今、ここはうすのサービスメニューは、個別相談、自立生活支援、タイムケア・ナイトケア、訪問相談、スタッフ派遣サービスなどなど、まさに「ライフサポート」となっています。


ここはうすの紹介が長くなりましたが、「お薦め本」コーナーなので、書籍の紹介もしないといけませんね。
これまではTEACCHというと、「衝立で仕切ったり、絵カードを使ったりする、アレでしょう」と、その手法的な面だけが一人歩きして批判を受けることもありました。
それに対して、TEACCHの理念や生涯にわたるトータルな支援ということも、少しずつ浸透してきているように思いますが、本書を読んで改めて感じたのは、その「手法的」な部分の有効性でした。


それは第4章の「診療所での実践 ~絵カードを利用して~」での京都市児童福祉センター診療所での実践でした。家庭や学校とは違い、医療機関で使用されるカードは、診療時だけのもので、まさに「手法」です。

しかし、その視覚的な絵カードにより、自閉症児たちはそれまでの混乱が“嘘のように”、落ち着いて診察や治療を受けるようになります。


これから何があるのか、いつ終わり、終わったあと何があるのか、目に見える形で示されら子どもたちは、知的障害があろうとなかろうと、脳波検査やCT、採血などに応じられるようになった報告です。
それは医療機関に限らず有効だと思いますので、公共機関や店舗など多くの場所で、その
TEAACH的“手法”が広まっていくことを願っています。理念は、長く子どもたちと接する支援者が理解していればいいこととで、それを一般の方に説いてもなかなか難しいと思いますので、とりあえずは絵カードを広めることに努めていけばいいのかもしれません。


また、第3章では、いつもお世話になっている重松孝治先生が、NPO法人BON主催のサマーキャンプの実践から「余暇支援」について書かれています。
重松先生には、育てる会でも毎年のびのびキャンプのスーパーバイズをお願いしています。今年の“のびのびキャンプ”に参加希望の方は、一般の小学校やボーイスカウトなどで行われる集団行動を目的としたキャンプとの違いを知るためにも、一度は目をとおしておいていただきたい章です。


こうしたマスプログラムは全員が集合することで盛り上がる活動であるが、決して参加を強要されるものではない。キャンパーの中にはさまざまな要因からこのような集団活動に対して、拒否的な反応を見せる人もいるかもしれない。たとえば他者と接触したり、大きな歓声に対して苦痛を感じる場合もあるだろう。各スタンツの進行の予定が分からずに不安になるキャンパーもいるかもしれない。
キャンプは余暇活動であり、こうした集団活動に参加することを目的としたトレーニングの場ではない。苦痛を伴ったり、参加を嫌がる場合にそれを強要することは望ましいことではない。
それよりも各キャンパーにとっての参加の仕方を考えることが必要である。たとえばこうしたマスプログラムに積極的に参加するキャンパーもいる一方で、その様子を少し離れた場所から眺めていたいキャンパーもいるだろう。中にはキャビンでゆっくり過ごしながら、聞こえてくる声に合わせて歌っているキャンパーもいるかもしれない。参加の仕方や楽しみ方はそれぞれであることを忘れてはならない。
 
他にも、第6章では服巻智子先生が、それいゆセンター時代の「高機能自閉症・アスペルガー成人支援部門」での成人支援の具体例の紹介など、多岐にわたる分野での自閉症支援の様子がまとめられています。

少し残念なのは、多くの実践が紹介されているため、各分野でのページ数が限られていることですが、それは改めてじっくり学んでいきたいと思います。


その意味で、8月の桑原先生のセミナーにも期待しています。入門・紹介本としてお薦めの一冊です。


                (「育てる会会報 170号」 2012.7 より)

-----------------------------------------------------------------

自閉症のTEACCH実践〈3〉/岩崎学術出版社
¥2,625
Amazon.co.jp


自閉症のTEACCH実践/岩崎学術出版社
¥3,780
Amazon.co.jp


自閉症のTEACCH実践〈2〉/岩崎学術出版社
¥3,675
Amazon.co.jp


青年期自閉症へのサポート―青年・成人期のTEACCH実践/岩崎学術出版社
¥2,940
Amazon.co.jp


自閉症とインクルージョン教育の実践―学校現場のTEACCHプログラム/岩崎学術出版社
¥2,940
Amazon.co.jp


-----------------------------------------------------------------


目次


  自閉症のTEACCH実践③の出版にあたって ・・・・・・・・ 佐々木 正美


第1章 「ライフサポート ここはうす」 3年の歩み
       ~家族の方・地域の方との連携を通して ・・・ 桑原 綾子


第2章 共に育つ園生活をめざして ・・・・・・・・・・・・・・・・ 河本 弘美


第3章 余暇支援
       ~キャンプ活動の実践から ・・・・・・・・・・・・・・ 重松 孝治


第4章 診療所での実践
       ~絵カードを利用して ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 北村 佳世子


第5章 成人通所施設における支援
       ~“わたげ”の取り組み ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 後藤 博行


第6章 自閉症・アスペルガー障害の成人支援の現状 ・・ 服巻 智子・貞包 由紀子

 

第7章 家庭での取り組み ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 金子 啓子