大震災 自閉っこ家族のサバイバル | 私のお薦め本コーナー 自閉症関連書籍

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自閉症・アスペルガー症候群および関連障害や福祉関係の書籍紹介です by:トチタロ

高橋 みかわ:編・著 ぶどう社 定価:1600円+税 (2011年7月)


     私のお薦め度:★★★★☆


今年、2011年を振り返ったとき、いつまでたっても3月11日に起こった大震災は忘れられない出来事となるでしょう。

地震とその後の津波によって多くの方が亡くなられ、また、福島の原発事故のため、今も避難生活を強いられている方がたくさんいらっしゃいます。


本書はそんな東北地方で、自閉症児を抱えた家族が、地震直後の大変な時期をどのように生き抜いてきたかというサバイバルの記録です。
災害の少ない岡山に住んでいると、そのお母さん方の地震発生当初からの対応・・信じられないほどにあざやかで凄いです。
普段から地震や津波の起こることを覚悟して、その想定のもとに、いかに自閉症の我が子や家族を守っていくか・・・という気概が感じられます。


宮城では、宮城沖を震源とするM7.5クラスの地震が25~40年周期で起きています。それが近い将来99%の確率で起こるとも言われていました。
それで「我が家は避難所は無理だから、いざとなったら車に避難すればいいだろう」と考えていました。しかし、現実はそんな甘い思いとはかけ離れていたのです。
 (「はじめに」より)


確かに岡山では想像できませんが、「近い将来99%の確率」と言われると、もはや逃げることはできないですね。ただ今回の災害はM9.0という地震と10メートルを超えるという津波、以前の宮城沖地震をはるかに超える想定外のものだっただけに、現実はもっと厳しかったわけですね。

そんな中でも、筆者の一人、高橋さん、地震直後のマンションの自室の主ブレーカーを切り、車のキーを持って駐車場へ。車のラジオを点けて、周りの人たちと大津波警報を知るわけです。その後、マンションのエレベーターに閉じ込められた人やけがをした人がいないか確認をして、具合の悪くなった人をみつけ自分の車へ乗せて世話をする。その間に、携帯の通話に制限がかかるかもと、自分の無事を各地の親族などに一斉メール送信・・・
のどかな岡山に暮らしていると、大きな揺れや余震の中、ここまで冷静にテキパキできる人は、まずいないでしょうね。


その後の高橋さん、息子のきら君(21歳、作業所に通われている)が帰ってきたときパニックを起こさぬよう、またもしも起こしたとしても危険のないよう、家の中を最低限片づけ環境整備をしたあと、夜8時頃、きら君を迎えに車で作業所にかいます。当然ながら停電のため、あたりは暗闇です。


幹線道路を抜けると全く信号が点いてない。家の明かりもない。真っ暗闇。真っ暗な道、真っ暗な歩道。たま~に歩いて人を見かける。
ゆっくりゆっくり進む。交差点では徐行して、お互いに譲り合って。
事故なんて一件も起きてない。なんかすごいぞ、日本人!


なんかすごいぞ、日本人。

今年を表す漢字は「絆」に決まったそうですが、本書でも、家族の絆、友人との絆、地域の絆で生き抜いた話が続きます。

またリアルの地域だけでなく、本書で紹介された「みかわ屋通信」。ようやく繋がった携帯を使ってのブログの発信です。ネットを使った、新しい形での絆です。震災直後から、およそ1か月半、4月26日まで続いたこのブログは、送り手も返信も、援助の手のまだ届かないほどの凄惨な立場におかれた自閉症の家族のはずなのですが、不思議に明るい印象を持つやりとりです。


その「みかわ屋通信」、結びの言葉には 『ゆっくりゆっくり、無理は禁物。「ありがとう」を合い言葉に、今日も一日』 そう使われる日が多かったです。


震災から4日目、気になったことがあります。それは助けていただいたときの言葉・・・・みんな「すみません」って言う・・・・
病院でも、疲れ切った受付さんが転んでしまった。みんな心配して近寄る。「すみません、大丈夫です」と涙をこらえながら・・・・
「涙はこらえちゃだめ。疲れているんだよ。緊張しっぱなしじゃない。ここにいるのはおばちゃん・おじちゃんばかり。だから・・・・」と言ってしまった。
一瞬泣きながらの笑顔。そのあと一気に涙を流し、振り絞る「すみません」
「ちがうよ。ありがとうだよ。そう言ってもらえると、言われた方も、言った方も、心がホコホコしてくるから・・・・」自然と口から出た言葉。周りは一瞬へっという顔になったけど・・・・
「そうだね。ありがとうだね」と、おばちゃん・おじちゃんがうなずく。
私たち被災者は、これからたくさんの人の善意と暖かさで助けられることだろう。だからこそ、「すみません」じゃなくて「ありがとう」。


これは、被災者ではなくとも、障害児を育てている親でも同じですね。周りに迷惑をかけることも多く、つい口癖のよういに「すみません」と言ってしまうことも多いのですが、なんかすごい日本人に囲まれて、支えられて生きている子どもたち、私たちも感謝をこめて「ありがとう」を合い言葉に暮らしていきたいですね。


もう一つ、本書で印象に残ったのは、予定ややり方の変更が苦手で、パニックを起こすのを覚悟していた、知的障害を持つ自閉症児たちが、意外に落ち着いて、ライフラインの途絶えた避難生活を過ごしてくれたとういう体験談でした。

普段、テレビや電気のスイッチ、風呂やトイレにこだわりを持つ子どもたちが、映らない、水が出ない・・など自分で確認すると、「・・そうなんだ・・」と納得して、拍子抜けするほどに、その不自由な暮らしを受け入れたそうです。もちろん、中には布団から出られないほどのショックを感じた子どもたちもいたそうですが、総じてみな驚くくらい落ち着いていたそうです。


白米を食べられなかった自閉っこが食べるようになったり、エリちゃんのお気に入りのパンツ、けい君の昼間の電気のように、自分からこだわりを崩して周りに合わせています。
逆に、きらは食べ物の温感のこだわりを強くしたり、ヒロ君は布団の中で自分の手を噛むことで自分を落ち着か
せたり、なお君は泥だらけの家を見て家に入るのをあきらめたり、非常事態を察知して誰に言われるのでもなく自分からやりとげています。
まさに究極の自己調整、適応力を発揮しています。


これこそが、彼らが本来持っている『生きる力』なのではないでしょうか。では、そんな立派な力を持っているなら、何があっても大丈夫でしょうか。いいえそれは違うような気がします。
あのとき、自閉っこはとても辛かった。でも、そうするしかなかった・・・・ できるなら、平和な環境で、自閉っこの持っている『生きる力』を発揮できるようにしてあげたい・・・・心の底からそう思います。


本書の末尾にある「もしものときのための準備」のリストにあがっているほどの準備はできないかもしれませんが(そのせっかく備蓄した水や食料も、もっと困っている人がいると、分け合ってしまうのが、なんかすごいぞ、日本人なのですが)、自閉症をもつ子どもたちがなるべく辛い思いをしないように、子どもたちが安定して過ごせるグッズなどは、非常時にすぐ持ち出せるように心がけておくべきでしょうね。

大震災は悲惨な災害でしたが、それだけに人と人が繋がる絆の大切さを改めて教えられた一冊でした。
また、本書の印税や収益の一部は義捐金として関係者に贈られるそうです


                  (「育てる会会報 164号 」 2011年12月)


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目次


  はじめに


1章 ライフラインのとまった街で


  我が家の3・11 あのときなにがあったか ・・・ 高橋 みかわ


    全てのライフラインが途絶えたなかで
    自閉っこ家族は、どうやってサバイバルしたか
    仙台市内のマンションで避難生活を送った家族の体験記と
    「自閉っこにしてみたら」のお話をご紹介します


2章 ブログとメールでつながりあった


  ― 「みかわ屋通信」の1カ月


    今回の震災で、災害時の携帯電話の有用性が
    あらためてクローズアップされています
    ブログや携帯電話のメールでつながり合い、支え合った
    自閉っこママとその仲間のお話をご紹介します


3章 津波に襲われた街で


  家は浸水したけど、家族で一緒に暮らせるなら ・・・ 浅野 雅子


  震災は障害を軽く超えた!って感じ ・・・ 及川 恵美


    津波と火事で中心部が壊滅した石巻市
    その街で、自宅で避難生活をした自閉っこ家族の体験記と
    実家に避難した自閉っこ家族の体験記をご紹介します
    あのとき何が起こったのか、リアルにお伝えします


4章 地域の避難所で


  中学校で、娘の頑張りとみなさんの理解で ・・・ 三浦 由里香


  支援学校で、息子に寄り添い続けて ・・・ あるお母さんに聞く


  学校を避難所としてひらいた先生たち ・・・ 石巻支援学校の先生方に聞く


    自閉っこ家族にとっては敷居の高い避難所……
    地域の中学校で2か月の避難生活を乗り切った家族の体験記と
    支援学校に避難して自閉っこに寄り添い続けた家族と
    地域の人たちを受け入れ避難所を開設した石巻支援学校の
    お話をまとめ、ご紹介します


おわりに
  『家族』 ― 『地域』 ― 『絆』

  付録 もしものときのための準備

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