ギフテッド  ~天才の育て方~ | 私のお薦め本コーナー 自閉症関連書籍

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自閉症・アスペルガー症候群および関連障害や福祉関係の書籍紹介です by:トチタロ

杉山 登志郎・岡 南・小倉 正義:著  学研  定価:1700円+税(2009.12)


      私のお薦め度:★★★☆☆


本書の表題となっている「ギフテッド」とは、通常「神から与えられた特別の資質を持つ者」という意味で、日本語では「英才児」「天才児」などと訳されることもあります。よって、副題が「天才の育て方」となるわけです。
高機能広汎性発達障害やアスペルガー症候群、ADHD、LDなど、いわゆる軽度発達障害と呼ばれる人々の中には、生まれたときから特別な才能を持っている子どもたちがいることは、みなさんもすでにご存知のことでしょう。彼らを発達“障害”としてみるのではなく、その突出した部分に着目し、人類の進歩のためにも、また彼らの人生を肯定感のある豊かなものとするためにも、“天才”部分を大切にし、うまく育てていこうというのが本書の趣旨のように思えました。
筆者の言葉を借りれば、「発達凸凹+適応障害=発達障害」ということになりますので、発達の凸凹はあっても、適応障害さえ防ぐことができたら、それはもはや発達“障害”ではないという見方です。


本書は、学研の雑誌「実践 障害児教育」に1年間連載されたシリーズに加筆訂正されたものです。
筆者のお一人、杉山登志郎先生については、もうみなさんご存知でしょう。それまでフラッシュバックといわれていた、自閉症者が突然過去の出来事を思い出してパニックになる様子を「タイムスリップ現象」とわかりやすく名づけられたように、本書のなかでも、杉山先生ならでの新しい造語が出てきています。


例えば、この発達に凸凹のある子どものことを「峻才」と呼んでいます。峻険な山に高い峰や深い谷があるように、特に高い創造性や著しい能力の凸凹を持つ子のことで、言い得て妙というところでしょうか。ただ造語なので、本書の題名は一般的な「ギフテッド・天才の育て方」となったのでしょう。

なお、ギフテッドに似た表現で「サヴァン症候群」という言葉を聞かれた方もあると思います。映画「レインマン」にもあるように、サヴァン症候群とは知的障害や自閉症の人の中に、常任にはない記憶力や特殊な能力を持っている人たちのことですが、ギフテッドには通常知的な遅れは含まないといえるでしょう。


また本書の中で杉山先生はアスペルガー症候群についても、血液型になぞらえてA・B・O・AB型と、ユニークに分類されています。詳しくは本書をお読みいただきたいのですが、その中で社会に適応(Adjustable)
しているのがアスペA型で、筆者のカルテの中でも8割を占め、なんとか折り合いをつけながら暮らしているそうです。


一方で困った型もあります。


B型はBothersome(困った)で、時に問題行動を起こす非社会的な群である。未診断、未治療で、しかも非常に優秀な方の中に散見される。この群の特徴は、人の話を全く聞けないことである。自分のこだわりが強く、それに固執し、実現させてしまう。周囲のより社会的な者は、困ったものだと思いつつも、こういう場合、極論を正論として述べるほうが強いに決まっているので、それに押されてしまって妥協を重ねる。その結果、アスペB型の人のこだわりのとおりになるので、ますます増長させることになる。実は困ったことに小学校の校長にしばしばこのアスペB型の方を見ることがある。
こういう方に対しては、「あなたは優秀だが、実はアスペB型だ」ときちんと直面化するのが、周囲の人たちのためにも、また本人自身のよりよい社会的適応のためにも必要であると思う。その場合、「だれが猫に鈴をつけるのか」という問題がしばしばもち上がるのであるが。


笑ってしまいますが(笑っちゃ、いけませんね)、それはさておき、本書の本題に戻ると、ギフテッドである彼らの優れた部分を伸ばすために必要なのが「特別支援教育」の大切なもう一つの役目であるということです。


発達“障害”(適応障害)の子どもたちだけでなく、発達に凸凹のある子どもたちにとっても、その一人ひとりに合わせた特別な支援が必要なことはおわかりいただけると思います。本書の中では、その有効な方法としてアメリカで開発された全校強化履修モデル(SEM)も紹介されています。


これは簡単に言うと、本人の能力や興味、学び方のスタイルを細かくアセスメントし、習得度に応じてカリキュラムも効率化して、才能や能力に応じて強化学習を図っていくという方法です。
これを、すぐに日本の教育現場に取り入れることは難しいと思いますが、本書で提案されているように、子どもや教師が何に興味を持っているかを細かく調査することから取り掛かるぐらいはできるはずですね。


強化クラスター(興味をもっているものを組織して授業の中に入れること)をすぐにカリキュラムに取り入れることは難しいとしても、工夫しだいではこれらの時間の中で強化クラスターと類似した時間を創出することは可能である。例えば、部活動の種類を子どもの興味や先生の資源に合わせてつくり直したり、総合的な学習の時間で子どもたちの興味のある領域について、専門的な範囲まで詳しく調べて発表したりする時間をつくるなどの工夫が、教師の専門性があれば可能であろう。


やはり、ここでも課題となるのは教師の専門性ということになるのでしょうか。
問題はそれだけの専門性を持った教師が、特別支援教育の現場にいるかどうかということですね。


特別支援教育を担当する特に通常学校の特別支援学級の担任は、その多くが特別支援教育の経験がない教師によって担われている。子どもにどのように接したらよいのか、手探りで行わざるをえない。場合によっては、いまだに、通常学級の運営に支障がある教師が特別支援教育を担当しているということもある。
専門性に欠けるがゆえに、数年間でまた通常学級に戻り、学校の現場は永遠に素人教師によって構成されているところもある。ところが保護者の側は、特に広汎性発達障害系の保護者は、発達障害に関する多くの情報をかき集めていて、場合によっては教師よりはるかに専門知識をもつといったこともまれではない。


残念ながらよく聞く話ですね。
それに対して教育委員会が「専門性を高めるために」、と実施している対策とは、本書の中でも指摘されているような、夏休みの間の「特別支援教育の認定講習」だけというのでは、はたしてどれだけ効果があるのかどうか疑問です。


杉山先生の提案されている、「特別支援教員免許は夏休みの集中講義でよしとするのではなく、大学院で取得する専修免許を基礎とすべき」、は将来に向けての方向性だとしても、せめて今、年に10回行っている育てる会の即実践講座ぐらいの発達障害についての知識は、特別支援学級を担任される先生方全てに持っていていただきたいですね。保護者からのせつなる願いです。


(「育てる会会報 160号 」 2011.9)


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目次


前書き ・・・ 杉山 登志郎


第1章 発達障害から発達凸凹へ ・・・ 杉山 登志郎
      コラム 自閉症スペクトラムと広汎性発達障害


第2章 アスペA型 ・・・ 杉山 登志郎


第3章 視覚優位性の世界 ・・・ 岡 南

 
      コラム 視覚優位のアンドリアセン

第4章 視覚優位型の子どもたちへの特別支援教育 ・・・ 岡 南
      コラム 映像思考の子どもの語彙力を増やすには


第5章 聴覚優位型の見え方の障害を支援する ・・・ 岡 南 
      コラム 奥行き感をつかめない子どもたちの日常


第6章 視覚認知から見た文字の認知をめぐって ・・・ 岡 南 
      コラム 天才たちを支援した人々


第7章 アメリカにおけるギフテッドへの教育 ・・・ 小倉 正義
     コラム 効果的な学習方法って何だろう?


第8章 2Eの子どもへの教育 ・・・ 小倉 正義
      コラム 才能児の発見のためのチェックリスト
      コラム 2Eの子どもたちへの授業


第9章 創造性とは ・・・ 杉山 登志郎


第10章 未来への提言 ・・・ 杉山 登志郎
      コラム より広範な自閉症表現型(Broader Autism Phenotype)
      コラム 特別支援教育の免許状をめぐって


後書きに代えて ・・・ 岡 南/小倉 正義


参考文献
著者プロフィール
奥付