上林 靖子:監修 講談社 定価:1300円+税
私のお薦め度:★★★☆☆
今月は「お薦め本」というよりは、「紹介本」という意味合いの本です。
近頃よく目にする発達障害に関する横文字の中に「ピアカウンセリング」「SST(ソーシャルスキルトレーニング)」などと並んで、この「ペアレント・トレーニング」という言葉もあります。セミナーで販売している本の中にも結構入っていますね。
ところで、この「ペアレント・トレーニング」どういったトレーニング法なのでしょう?
実は、私は本書を読むまでは、「賢い保護者」になるための、一般的な療法だと思っていました。障害の特性を正しく理解し、その特性に応じた子育てを身に付けていくことを総称してペアレント・トレーニングと呼んでいるとの思い込みですね。私と同じように思っている方も多いのでは・・・と思っての、「紹介本」です。
本書によると、ペアレント・トレーニング(長いので、以下ペアトレと略します)とは、アメリカで最初はADHD児を対象に開発された、その後は発達障害全般に使われるようになった支援プログラムで、本書はその内の、カルフォルニア大学ロサンゼルス校で考案されたものを日本式にアレンジしたものだそうです。
その意味では、キャロル・グレイ女史がソーシャルストーリーズTMのように、開発したソーシャルストーリーをTM(トレードマーク:商標登録)して、独自のプログラムとしたのと似ているように思えます。
そのプログラムは細かいところまで、マニュアル化されていて、4~8名ほどの参加者が2~3名の専門家(うちリーダー1名が司会、サブリーダー1~2名がサポート役)のもとで、2週間に1回のペースで全10回のセッションを半年かけて行うというものだそうです。
各セッションの内容も1回目から最後の10回目まで決まっており、そのセッション内での時間配分も決められています。したがって、途中参加はできませんし、遅刻・欠席もしないように求められています。
このように、セッション1~10を順番に、専門家の指導のもとに行うのがペアトレだそうですが、本書にもこのように書かれています。
発達障害による困難を減らすための方法は、ペアトレ以外にもいくつかあります。教育的な対応から、薬を用いる医学的な対応まで、さまざまです。
自分達にあった方法を組み合わせるとよいでしょう。
そして、「自閉症の子には、絵カードなどを使った視覚的な支援が効果が発揮しやすい」としてTEACCHやABAなども紹介されています。
しっかりとしたペアトレプログラムに申し込むのもいいでしょうが、岡山では実施機関もあまり聞きませんし、なにより費用の問題もあります。監修者の経営する「まめの木クリニック」で使われている案内状の紹介見本でも、費用の項目だけは「※ 費用は場合によって異なります」との注釈で塗りつぶしてありましたので、余計気になりますね (^_^;)
ですから、充分とは言えないかもしれませんが、せっかく本書で各セッションの内容も紹介していただけていますので、それぞれ今行われている療法に加えて、このペアトレの方法もイイトコどりして活用していくというのが現実的なように思います。
そのペアトレで目指しているのは、一口で言うと「ほめ方の工夫」であるように感じられました、これについては、育てる会での講演会などでもよく耳にする方法ですね。「好ましい行動を、タイミングよくほめる」「ほめ方のバリエーションを増やす」「好ましくない行動には、注目しない」「静かにおだやかに指示をする」などの、各セッションの内容についても、すでに実施されている方も多いと思います。
ペアトレの特徴は、それらを系統的に、意味を押さえながら実施していくということでしょう。またそれぞれのセッションについて宿題もあり、次のセッションの前半半分は復習と宿題発表ということですので、セッションの間の2週間は家庭で意図的に一つのテーマで子どもと関わり記録していくといのが、効果的なのかもしれませんね。
他にも本書には、参考になるアイデアがたくさんあると思います。「100%できる場合まで待たず、できたところをほめる25%ルール」「行動をはじめた瞬間にほめる。終わるまで待つのは間違い」「反発されても同じ指示を繰り返す、ブロークン・レコード。子どもに真剣さが伝わる」などなど。
また、紹介されているQ&Aでも、ペアトレに限らず、役立ちそうなものも多いです。
Q:自分の言葉づかいが汚いのは どうすれば?
A:子どもが許しがたい行動をとったときや悪態をついたとき、とっさに乱暴な言葉で注意することは、誰にでもあります。完全になくすのは難しいです。
汚い言葉を子どもがまねしてしまって気になる場合には、子どもといっしょに「使いたくない言葉」のリストをつくり、お互いにそのルールを守るようにしましょう。
これなど、自分が使っていなくても、友達から汚い言葉を学んでしまった場合など、視覚的に伝えるためにはいい方法のように思えます。
本書は、最近よく見かける入門書と同じように、見開きページに大きなイラストと解説が載っていますので、読むだけでしたら30分もあれば読み終えるでしょう。
育てる会に置いていますので、機会があれば一度目を通されることをお薦めします。
(「育てる会 会報 158号
」 2011.7)
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目次
まえがき
ペアレント・トレーニングのすすめ
「うちの子にはほめるところがない」というあなたへ
1 ペアレント・トレーニングをはじめましょう!
ペアトレとは ・・・ 保護者が子育てを学ぶトレーニング
ペアトレとは ・・・ 発達障害対応法のひとつ
ペアトレとは ・・・ 子どもの性格ではなく行動に注目する
ペアトレ用語をかんたん解説 --- よい行動は「強化」しよう
トレーニングの目的 ・・・ 子どものことを理解するチャンス
コラム --- ペアトレの歴史 ロサンゼルスから東京、奈良へ
2 保護者同士で集まって、セッションスタート!
実例で学ぶペアトレのはじめ方 ・・・ どこでペアトレと出会う?
実例で学ぶペアトレのはじめ方 ・・・ なにを持っていく?
実例で学ぶペアトレのはじめ方 ・・・ 集まってなにをする?
実例で学ぶペアトレのはじめ方 ・・・ 何時間かかる?
いますぐ使える! ・・・ 事前に配られる案内状・当日に使うレジュメの読み方
セッション1 ・・・ 子どもの行動を三種類に分ける
セッション2 ・・・ 好ましい行動を、タイミングよくほめる
セッション2 ・・・ ほめ方のバリエーションを増やす
ペアトレ用語をかんたん解説 --- 「肯定的な注目」はほめること
セッション2 ・・・ 親子で遊ぶ、スペシャルタイム
セッション3 ・・・ 好ましくない行動には注目しない
セッション4 ・・・「ほめる」と「注目しない」を使い分ける
Q&A ・・・ 使いたい言葉と、使ってはいけない言葉とは?
セッション5 ・・・ 静かにおだやかに指示をする
セッション6~7 ・・・ 子どものやる気を引き出す
ペアトレ用語をかんたん解説 --- 「トークンシステム」でやる気アップ!
セッション8 ・・・ 許しがたい行動の防ぎ方を覚える
ペアトレ用語をかんたん解説 --- 刺激をとり去る「タイムアウト」
セッション9~10 ・・・ 連携の仕方も知っておく
いますぐ使える! ・・・ 学校との協力に欠かせない、連絡シートの例文
コラム --- ペアトレのいま 父親も参加している
3 確認・反省をしながら、ゆっくり学びます
学びのポイント ・・・ 約半年をかけてゆっくり進める
学びのポイント ・・・ 確認・実践・反省を繰り返して学ぶ
学びのポイント ・・・ 失敗したら、いつでもやり直せばいい
Q&A ・・・ トレーニングしてもうまくいかないのはなぜ?
コラム --- ペアトレの未来 日本向けのアレンジが進んでいる
ペアレント・トレーニング実施機関の探し方
ペアレント・トレーニング参加時の注意点