服巻 智子:著 NHK出版 定価:1600円+税 (2010年7月)
私のお薦め度:★★★★☆
本書は佐賀県自閉症協会の「お母さんの勉強会」において、30年以上も自閉症児者とその家族の支援を続けてこられた服巻智子先生が、その内容をまとめえられたものです。
したがって、いつもの先生のセミナーでお聴きしている本人への支援というお話よりは、発達障害という障害を告知されてからの揺れ動くお母さんの想いに寄り添って、そこから改めて子育てへ向かう時の心の支えとなる本と言えるでしょう。
副題の「ペアレンティグ」とは、子育ての方法と親の役割のことで、一時はやった“親業”という言葉と似ているニュアンスもありますが、それよりももっと自由な捉え方です。
ペアレンティングのあり方は、夫婦で話し合って作り上げていくべきことですが、それも「こうでなければならない」というあり方ではなく、それぞれの夫婦なりの考え方・方針・役割分担のあり方ができていくものです。
そして、それでよいのです。
本書を読んで強く感じたのは、このようなそれぞれの家庭での生き方を肯定してくれるような考え方でした。
30年前も今も、障害を告知されたばかりの親は、全くの初心者です。手探りで障害児の親としてのペアレンティングを始めなければなりません。そんな時に本書のような、支援者としての専門家の立場から、親の思いを支えてくれる本は貴重だと思います。
「子どもがかわいいと思えない」という若いお母さんからの相談です。
発達障害の場合、笑顔が少なく表情の変わらない子もいますし、お母さんより物に愛着を示したり、お母さんからは理解できないような自傷、他害、破壊行為などの問題行動を起こすこともあります。
子育ては24時間 365日休みなし! どんな仕事よりも大変でストレスとの戦いです。
ある意味、孤独な戦いですね。
ですから、良いのですよ、かわいいと思えない日や瞬間があっても。
自分を責めないで、あるがままの自分の感情を肯定しましょう。
「アタシってがんばっているよ。だれもほめてくれないけど、本当にがんばっている。偉いよね、アタシ。今は疲れているだけだ」
と、自分に言い聞かせながらちょっと休憩してみるのも良いかもしれません。
ただ、子どもの命は自分の手のひらの中にあって、その子は自分に命をゆだねてくれているということ、自分が世話をしなければ成長できないということを忘れないでいましょう。
そして、かわいいと思えない気持ちになったり、子育てで自己嫌悪に落ち込んだら、そんな時こそ自分の感情を一時棚上げして、食事やオムツ換え、清潔への配慮、掃除、洗濯など、日々の育児や家事を淡々とやってみましょう。まずはそこから再スタートです。日々、再スタートすれば良いのですよ。子どもの成長とともに、子育ての苦労が報われたと感じる瞬間や「かわいい」と思える瞬間が必ずやってくるし、その瞬間は増えていくこと間違いありません。
それまで、張り詰めて子育てを続けていたお母さんが、巡り会った専門家のお医者さんに「大変な中、これまでよくがんばってお子さんを育てられてきましたね」と優しく、それまでの生き方を肯定されたとたん、緊張の糸が切れてワッと泣き出してしまったという話を聞いたことがあります。
まだ、そんな優しいお医者さんと巡り会えていない方、「だれもほめてくれない」境遇の方、せめて本書で自分の子育てを自ら肯定してもらえればと思います。
一方で、障害児を育てている親へのアンケートでは、自閉症児・発達障害児を育てているお母さんのストレスが最も高いという結果も聞いたことがあります。障害への周りの理解が少ないため、子育てやしつけの問題と誤解され、お母さんが責められることが多いためと考えられます。ただでさえ大変な障害児の子育ての中で、近所や学校、ひどい場合には親族や家族から非難されることもありました。
私たちも正しい理解が広まることを求めて活動しているわけですが、世間では同じ親の立場からの訴えよりも、こうして活字になった専門家の意見の方がはるかに効果があるようですね(^_^;)
大いに本書を活用させていただきましょう。
また、本書にはそんな心理的なサポートだけではなく、服巻先生からのこれからの療育のための道しるべとなるエビデンスベースト(自閉症支援に有効であると効果が科学的に検証確認されている支援方法)も紹介されています。
TEACCHプログラム、ABA、PECS、コミック会話、ソーシャルストーリーズTM、The CAT-Kit、感覚統合法、RDI、アーリースタートデンバーモデル・・・などなど
これらをそれぞれの子どもに合わせて、常にアセスメントを続け柔軟に支援方法を組み合わせたり変更したりしながら教育支援のメニューを提供していくことが大切だと書かれています。
良いとこ取りの支援ですね。参考にしたいと思います。
他にもお母さん方へのアドバイスはきめ細かく、私などは思いがいたらなかったようなものも多いです。
園・学校と子どものことで話に行くときは、化粧をし身なりを整えていくこと。服装に気を遣い装いを改めることで、気持ちが冷静になれます。
また、先生方に与える印象も違ってきます。華美な服装ではなく、こざっぱりとした節度ある服装が望ましい。
事前に、話したいこと相談したいことをリストアップしておくこと。頭の中でリストアップするのではなく、具体的に書き出したものを用意しておくこと。
全てが、これまでの佐賀県でのお母さん方への具体的な支援から生まれてきたものでしょう。先生や支援者の方もみんな“人”であるから、正論を押し通しすぎない、とか、過度の依存や期待をしすぎない、とか、気をつけておかなければいけないと思うアドバイスばかりです。
障害を告知されたばかりのお母さんたちだけでなく、受容ができたと思っても子育ての中で、時として揺れ動く心をもつ親の方(みんないっしょだと思います)にとっても、心を支えてくれる1冊として本書をお薦めします。
(「育てる会会報 149号 」 2010.9)
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目次
まえがき
Part 1 もしかして
1 わが子が何か違っていると感じたら
Q1 発達障害とはなんですか
2 親としての心構え
Q2 子どもの落ちがないのは、親のしつけができていないから?
用語解説
3 家族計画と人生設計
Q3 発達障害と知的障害はどう違うのですか?
4 “困ったこうどう”の考え方と「氷山モデル}
5 家族のキーパーソン
Q4 親の会とは?
6 夫婦のあり方
Q5 夫がなかなか理解してくれない、という母親からの訴えをよく聞きますが?
7 きょうだいに気配りすべきこと
Q6 障害について、きょうだいにも説明すべきでしょうか?
Part 2 これからどうすれば
8 その子自身の人生
9 「子どもがかわいいと思えない」本音
10 家庭での工夫のコツ
11 自閉症スペクトラムとペット
Q7 わが家には発達障害の子どもがいますが、ペットを飼ってもよいですか?
12 サポートブックを作ろう!
Part 3 親だって癒されたい
13 親だって癒されたい ~夢をあきらめて
Q8 子どもが言うことを聞かない時、何もかも投げ出したくなるのです
14 ストレスマネージメントを生活に取り入れる
15 親のための時間管理法
16 お役立ち情報を手っ取り早く求める
Part 4 支援あれこれ
17 自閉症支援のノウハウ
Q9 活用できる行政サービスにはどのようなものがありますか?
18 支援方法のいろいろ
Q10 偏食がひどいのです。どうしたらよいでしょうか?
19 専門家の活用法
20 園選び・学校選びのコツ
21 園や学校の先生との関係づくり
22 いじめ
Part 5 子どもと自分自身の人生も考えて
23 すれ違いの間をつなぐこと
24 親の気持ちの変遷と子離れの計画
25 理解し合うことから生まれるもの
あとがき
コラム
お父さんの本音
つくしんぼの会のこと ~佐賀県の兄弟姉妹の会
一人寝はいつから
親が感じる焦り
非日常タイムのすすめ① ~ プチセレブ編
非日常タイムのすすめ② ~ 泣き映画編
おすすめ映画リスト
よそのお子さんが気になる時
身辺自立はいつまでに?