オリヴァー・サックス:著 吉田利子:訳 早川書房 定価:800円 + 税 (2001年4月)
私のお薦め度:★★★★☆
『 レナードの朝 』などで知られる、脳神経外科医のオリヴァー・サックス氏の、インタビューや考察をもとにした医学的エッセイです。ハヤカワ文庫「NF(ノン・フィクション)251」と、文庫版になり、とても読みやすく、手に入れられやすくなっています。
本書は、サックス氏が知り合った、7人の不思議な人生を歩む人々との出会いの記録なのですが、なかでもみなさんにお薦めしたいのは、本書のタイトルにもなっている 「火星の人類学者」 の章です。
ここで紹介されている「火星の人類学者」とは、みなさんもよくご存知のテンプル・グランディンさんです。
テンプルさんは高機能の自閉症の方で、現在はコロラド州立大学で動物学の助教授をされています。「我、自閉症に生まれて」や「自閉症の才能開発」で、自閉症者本人からのメッセージも書かれています。
そのテンプルさん、自らを「まるで火星で異種の生物を研究している学者のようなものだ。自分は火星の人類学者のような気がする。」と言われているそうですが、私にはむしろ、「人類を望遠鏡で火星から観察している火星人の人類学者(動物学者と同じ用な意味で)」というようなイメージを持ちました。
見かけは人類とよく似ているが、その内面の感性や文化は全く違っている・・そう、スタートレックのミスター・スポックのような・・・、人類に友好的な、でもなかなか人間の感情や情動が理解できない異星人の学者のイメージです。
それは、さておき本書では、テンプルさんの自伝とは一味違った、自閉症ではない人から見た高機能自閉症の人の姿、そのアイデンティティの毅然とした高さ・・でも、やっぱり奇妙な個性・・について、観察・考察されています。
とくにテンプルさんの章では、尊敬の念は抱きつつも、やはり違った文化を持つ人として冷静に分析されていて、会話の中で、自閉症としてこの世界で生きて行くことのの困難さや、同時に生きて行くことの価値などを自然に浮かび上がらせています。前述の自伝などと併せて読まれることをお薦めします。
また、その前章である「神童たち」の章では、同じく自閉症の天才サヴァンの少年画家、スティーブン・ウィルトシャーとの巡り合いと交際の様子が描かれています。口絵の作品といっしょにご覧ください。
(2002.10)
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目次
謝辞
はじめに
色盲の画家
最後のヒッピー
トゥレット症候群の外科医
「見えて」 いても 「見えない」
夢の風景
神童たち
火星の人類学者
訳者あとがき
文庫版のための訳者あとがき