吉田 友子:著 中央法規 定価:1800円+税 (2009年6月)
私のお薦め度:★★★★★
これまで紹介してきたお薦め本の中でも、特にみなさんに読んでいただきたいたと思っている本の中に、吉田友子先生の『「その子らしさ」を生かす子育て』がありました。
今の日本で、自閉症やアスペルガー症候群と診断されてまもないお子さんをお持ちのお母さん、これからいよいよ子育てに向かおうとするご両親にぜひ読んでおいていただきたい本でした。
それほどのお薦め本であったのですが、驚いたことに、その改訂版が出版されました。データを最新のものに変えられたばかりでなく、今、高機能自閉症やアスペルガー症候群への支援としては、これ以上の本はないのでは、と思っていた内容にまで踏み込まれて、特にきょうだい児や社会性への支援については更に深い洞察を加えられています。
吉田先生の、今現在で最新・最良のものを提供したいという熱い思いの感じられる改訂版です。
その新しくなったデータの中で、特に私が興味深かったのは、平成18年に横浜市の福祉保健センターでの1歳半検診で、多動などを含んだ発達の問題があるとされた子どもたちが19.4%もいたという報告でした。別の福祉保健センターでも19.1%、スウェーデンでの調査でも21.8%に神経発達・精神発達上の問題があったとされています。
実に5人に1人の割合です。我が家が初めて診断を受けた頃は、自閉症は1万人に5人ほどの稀な障害と思われていました。その後、自閉症スペクトラムの概念が啓まるにつれ、100人に1人と言われるようになり、また教育の分野でも通常学級のクラスにも6.3%もの特別な支援が必要な子ども達がいるということがわかってきました。
そして、今回の最新のデータでは、発達に問題があるとされるグレーゾーンの幼児がなんと20%ということです。早期発見、早期療育のための赤磐ぐんぐんなどの児童デイサービスの使命の重さを感じさせられた数字でした。
さて、本書に戻って、吉田先生がその「療育」について述べられている箇所を紹介します。
療育の目標は、子どもが自分に自信と誇りをもって暮らせるおとなになることです。技術を教えこむために自信や誇りを失わせては元も子もありません。療育は、将来のいつかのために今を犠牲にする修行ではありません。自分に自信と誇りをもって暮らせるおとなになるためにいちばん大切なことは、今の、この幼児期に、できるだけ多くの安心と自信を子どもにもたせることです。そのためにはたしかに技術はないよりあったほうが有利なので、技術を教えるのです。
何が本来の目的で、何がそのための方法なのか、そのことをいつも頭においておかないと「療育をめざして療育的でない暮らしを送る」ことになりかねません。
よりよい親とは、より大きな犠牲を払っている親のことではありません。笑っていないあなたに育てられた子どもが、将来、自分に誇りをもったおとなになれるでしょうか。
療育は先で笑うために今歯を食いしばることではないのです。親にとっても子にとっても、です。今を、この一度しかない大切な今を、より楽しくより便利により充実して暮らすためのアプローチのことなのです。
(前号でも紹介しましたが、私の大好きな一文です)
親として、また療育に関わる者として、常に心しておきたいことばだと思います。
他にも引用して紹介したいことが山ほどある本書です。心に響くことばが詰まっています。
もし、初版本を読んでいない方があるとしたら、ぜひこの改訂版を購入して読んでいただきたいと思います。既に、初版本を読まれている方にとっても、改めて読み返す時には、ぜひこの改訂版も読んでいただきたいと思います。座右に置いてぜひ何度も何度も読んでいただきたい本の一冊です。
では最後に、もう一つ、TEACCHに批判的な方がよく口にする、「物ではなく、お互い人としての信頼関係(ラポート)をつけることの大切さ」に対して、「物を手がかりにできることの大切さ」から、印象に残った一節を引用させていただいて、お薦め本の紹介を終わります。
将来の自立に向けての取り組みに、わが意を得たりという思いです。
また、担任とのあ・うんの呼吸で動いている子どもは担任が代わると大きな混乱の中に放りこまれてしまいます。これは、天性の勘の良さで子どもを扱う先生にあたった子どもが、翌年のクラス替えで味わう悲劇です。でも、物を手がかりにできる子どもは担任が代わっても引きつづきその技術を活用できます。
本当に指導上手な先生は、自分がいなくなった後でも子どもが使える技術を、子どもに定着させてくれるものです。物を手がかりにできることは、子どもの社会的な行動を確実なものにするのです。
(「育てる会会報 134号
」 2009.6)
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目次
第1章 自閉症とは
1 「障害」か「個性」か
2 自閉症スペクトラムの症状
3 自閉症スペクトラムに関するその他の医学情報
4 自閉症スペクトラムとの区別や合併が問題になる障害
第2章 発達の特性から育児を考える
1 コミュニケーションを育てる
2 社会的イマジネーション障害をどう支援するか
3 社会性の障害を補う技術
4 安定した毎日の暮らし(12のQ&A)
第3章 次にすること・考えること
1 相談すべき相手を見つける
2 きょうだい児がいるなら
3 最後にあなたに伝えたいこと
資料
1 自閉症スペクトラムに関連する用語の整理と診断基準
2 幼稚園・保育園への提出用しおり