梅永 雄二:編 教育出版 定価:1800円+税 (2008年4月)
私のお薦め度:★★★★☆
題名を読めば、育てる会の会員の方で、セミナーに何回か足を運んでいただいている方でしたら、中身もある程度想像つくのではないでしょうか。
そして、実際にその期待通りの内容の一冊にしあがっていると思います。各地で行なわれているTEACCHプログラムの実践報告と、それの理論的根拠を服巻繁氏がコメントとして解説しています。
似たような趣旨の本としては、佐々木正美先生の、「自閉症のTEACCH実践①~③」などがあげられると思いますが、そちらが教科書と見ると、本書は実際の現場の写真や図やグラフなどをふんだんに取り入れた、いわば副読本というようなイメージです。
各地の教育現場や福祉現場、就労現場、それに医療現場における個々の事例にしたがって、そこで行なわれている「構造化」を視覚的に著しています。
もちろん、個々の子どもたちに合わせての構造化ですから、そのまま自らの現場で使えるものではありませんが、ヒントやアイデアを刺激するものは多いと思います。
これまでもTEACCHのセミナーなどで何度も、その有効性が語られてきた構造化ですので、学校の現場の先生方の中には、もうすでに実行されているケースも多いでしょう。
例えば、教室の物理的構造化などでは、先日伺った哲平の通ったH養護学校などでは、小学部のどの教室を覗いても、子どもたちが落ち着いて過ごせるようにと、個別学習エリアと共同学習エリアがパーテーションを使って分かりやすいようになっていました。各学年の先生方が競うようにそれぞれ工夫をこらした教室になっていましたね。
それでも、副読本といったように、全国の各地の実践、まだまだ本書にはヒントになる個別の工夫は多いと思います。
例を挙げると、自閉症児たちが苦手とする運動会の練習、一日や週のスケジュールの中で、できるだけ事前に分かるように示すのは、多くの先生がやられていると思いますが、本書に登場するある先生は、その運動会だけ別途にとりあげて、本番にいたるまでのスケジュールを、この日はクラス練習、この日は全体練習を作っておられました。一日や週・月のスケジュールの中から、「運動会」だけを抜き出して表示することで、見通しが随分つきやすくなるように感じました。
また、後半の医療現場における支援の中で、高原牧先生が歯磨きカードの作り方についても書かれていました。
最後に、 「歯磨き前後の活動」をカードに付けてください。何でもよいのですが、このとき「お風呂」とか「就寝」などのような日によって活動の順序が入れ替わる可能性があるようなものにしてしまうと、予定の変更があったときに、カードが逆に混乱を招く場合があります。
したがって、カードの前後には「コップに水をためる」とか「歯ブラシを洗う」など「歯磨き活動」に付随するものがいいでしょう。もともと歯を磨くという活動はどこまで磨いたら終わりなのかがわかりにくいものなので、特に「おしまい」の活動は明確に存在しているほうが、終了が明示しやすく活動に区切りがつきやすくなります。
そうですね。終りを伝えることの大切さは理解しているつもりでしたが、実際の現場ではうっかり見落としていることもあるように思います。
あなたの使っている歯磨きカードに「終り」はきちんと入っているでしょうか?
そして他にもいろいろと学ぶことの多い事例の数々がつまった一冊だと思います。
(「育てる会会報 133号 」 2009.5)
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目次
はじめに
第1章 構造化とは
第2章 様々な場面における構造化による支援
Ⅰ 大学における支援の事例
【事例 1】 コミュニケーションの取れない自閉症幼児に対する
構造化によるコミュニケーション指導
【事例 2】 ロッキングや奇声が多い自閉症児に対する構造化による支援
実践事例へのコメント
Ⅱ 教育現場における支援の事例
【事例 3】 自閉症児が安心して学習に取り組むことができる環境づくり
【事例 4】 多動で感覚の過敏な自閉症児に対する物理的構造化と
視覚的スケジュール、およびAACを用いた支援
【事例 5】 子どもにわかりやすい教室づくり
実践事例へのコメント
Ⅲ 福祉現場における支援の事例
【事例 6】 言葉が理解できず、たびたび混乱し、
自傷、他害を引きおこす自閉症者への構造化による支援
【事例 7】 作業が嫌いで、自分のペースを崩されると
パニックを起こす自閉症者への構造化を生かした作業支援
【事例 8】 施設での日課の見通し、作業への集中力を高めるため、
スケジュールおよびワークシステムを用いた支援
【事例 9】 多動で言葉が理解できない自閉症者への
視覚的なコミュニケーションや構造化を用いた支援
【事例 10】 コミュニケーション場面における支援(カード・コミュニケーション)
実践事例へのコメント
Ⅳ 就労現場における支援の事例
【事例 11】 重度知的障害を伴う自閉症者に対する一般就労を目指した取り組み
実践事例へのコメント
Ⅴ 医療現場における支援の事例
【事例 12】 歯磨きがうまくできない自閉症児に対する構造化による支援
【事例 13】 歯磨きの順番がわからない自閉症児への構造化による支援
【事例 14】 歯磨きカードが必要な自閉症児に対する構造化による支援
【事例 15】 歯医者さんに行く前にできること
【事例 16】 診察室での工夫
【事例 17】 障害者人間ドックの構造化による支援
実践事例へのコメント
おわりに
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