思春期のアスペルガー症候群 | 私のお薦め本コーナー 自閉症関連書籍

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自閉症・アスペルガー症候群および関連障害や福祉関係の書籍紹介です by:トチタロ

佐々木 正美:監修 講談社 定価:1300円+税 (2008年11月)


    私のお薦め度:★★★★★


会報127号で紹介した佐々木先生と梅永先生の「大人のアスペルガー症候群」に続く、「こころライブラリー イラスト版」シリーズの続編です。


形式は、同じシリーズですのでイラストや図をふんだんに使って、見開きでパッと見ただけで視覚的に本質がつかめるように作られているのは同じでわかりやすいものとなっています。ただ、前著が大人のご本人の方を対象に書かれていたように感じたのに対し、本書はどちらかというと保護者や支援者向けに書かれているような印象です。


思春期というと、第二次性徴の前後で10~18歳頃、学童期から青年期にかけて、普通の子どもたちでも異性を意識したり、自我の葛藤、人間関係の複雑さなどから心が不安定になり大きく揺れ動く頃です。一方で知的障害を伴う自閉症児にとっても、思春期は鬼門と言われ、脳波の異常が出ててんかんの波が出たり、突然それまでの生活が崩れたりすることもある時期です。
そんな中、同じ自閉症スペクトラムであるアスペルガー症候群の子どもたちにとっては、この時期は自分が周りと違っていることが意識され、「ふつう」ではないと感じ始める頃です。


本書は、そんな思春期にあたって、子どもたちが友だちとの関係や異性との付き合いの中で、いたずらに傷ついたり、悩んだりしないように支援する方法について書かれています。
もちろん、思春期ですから、みんなと同じに壁にぶつかったり、悩んだりすることはあるでしょう。でも障害の特性を理解して周りが接することで、障害による不利が重ならないようにという援助です。


本書では、多くのページに「本人の気持ち」という欄があって、それぞれのケースで本人がどう感じることが多いのか、ということを説明しています。
例えば、「人の意見に耳をかそうとしない」という項目では、「ホームルームの時間をすべて、自分の意見を主張するB君」を例に挙げて説明しています。


この例で言うとB君は「僕は重要なことを話しているんだ!」「正しいことを伝えるべきだ」「意見をしっかり述べなければ!」という思いから、HRの時間を独占し、みんなが迷惑に思っていることに気がつきません。


正論をふりかざすあまり、まわりからは融通のきかないやつと思われ、また反対意見にキレてしまうこともあります。また相手の気持ちに意識が向かないため人の考えに興味がもてなく、話しことばの聞き取りも悪いため話を聞いていないと思われることもあると指摘しています。

結果として、しだいに対話に参加させてもらえなくなり、仲間はずれになっていきます。それがひどくなるとイジメにつながり、また自分はあくまで正しいと信じているため、ますますエスカレートしていくおそれもありますね。


本書では、この問題に対する対策としては「興味がなくても、話を聞く:聞くことが苦手な場合には、聞く姿勢だけでも示させる。ひとりで話し続けることを反省できれば、周囲のみる目が変わってくる」と支援のやり方を提案しています。
また実際の方法として「自分が話す時間、人が話す時間を具体的に区切ると、自然と話を聞けるようになる」と、彼らの特性に合わせた具体的なアイデアも紹介しています。

このように、各場面において、本人の思いは尊重しながらも、それぞれの場面での適切な行動が何かを教え、学校生活の中で周りとうまくつきあっていけるような支援を紹介しています。彼らがひきこもりや暴力などの二次的障害におちいることのないよう活用していただきたい一冊です。


ただ、最初に述べたように、本書は支援者向けの表現が多いので、本人向けには、以前に紹介した「あなたがあなたであるために」(吉田友子:著)などと併用して使っていただくことをお薦めしたいと思います。


       (「育てる会会報 129号 」 2009.1より)


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思春期のアスペルガー症候群 (こころライブラリー イラスト版)
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目次


  まえがき


  家庭に、学校に、居場所がない
     - アスペルガー症候群の子の悩み -


1 思春期独特の悩みとは


   アスペルガー症候群
     三つの特性をもつ発達障害

   行動特徴
     友達との会話が、かみあわない

   行動特徴
     ほかの子にあわせて行動できない

   行動特徴
     こだわりが強い子だと言われる

   思春期とは
     心身ともに成長する10~18歳ごろ

   思春期の悩み
     自分は「ふつう」じゃないと感じる

   コラム
     「障害」を認めたくない気持ち


2 友達と対等に付き合いたい


   自意識
     自分は人より劣っていると思いこむ

   自意識
     人の意見に耳をかそうとしない

   仲間意識
     友達グループに入れなくて戸惑う

   アドバイス
     ひとりでいたい気持ちも尊重しよう

   仲間意識
     クラスメイトを仲間だと思えない

   ケンカ・対立
     ほかの子のミスを執拗に指摘する

   ケンカ・対立
     金銭トラブルに巻きこまれやすい

   悩みの解決法
     まず、自分が何者かをよく知る

   悩みの解決法
     無理に友達を増やそうとしない

   悩みの解決法
     イライラ対策を自分でみつける

   コラム
     思春期の「ギャング・グループ」


3 恋の仕方がよくわからない


   恋愛感情
     相手の気持ちを考えずにアプローチ

   恋愛感情
     男性より、女性のほうが積極的

   恋愛感情
     発達障害の人は、結婚できるのか

   性の意識
     マンガの通りに交際しようとする

   性の意識
     悪気なく、異性の体にふれてしまう

   アドバイス
     性の知識は隠さずに、前向きに伝えます

   性の意識
     手がふれあうことにストレスを感じる

   性の意識
     人前で自慰行為をすることが問題に

   悩みの解決法
     恋愛観のずれを認識する

   悩みの解決法
     「ソーシャルストーリーズ」で学ぶ

   悩みの解決法
     不適切な行動は、予防できる

   コラム
     性犯罪とアスペルガー症候群


4 将来への不安がぬぐいきれない


   挫折感
     勉強についていけなくて挫折する

   挫折感
     不登校・ひきこもりになって苦しむ

   挫折感
     感情表現ができず、家庭内暴力に

   アドバイス
     とがめるより先に、理解しましょう

   将来への不安
     自分にあった仕事がわからない

   将来への不安
     不安をつのらせ、うつ病になる子も

   悩みの解決法
     正しい「アセスメント」を受ける

   悩みの解決法
     進路はマッチングを考えて決める

   悩みの解決法
     問題にとらわれず、長所をいかす

   コラム
     大学進学、就職に向けての準備


5 家族や友達に理解してほしいこと


   本人の思い
     命令しないで、話を聞いてほしい

   本人の思い
     公私の境界線をはっきり知りたい

   本人の思い
     理解してくれる相手に出会いたい

   本人の思い
     自分らしさを表現する場がほしい

   コラム
     正確な診断を受けられるところ