指導年齢がわかる　社会的自立のための指導プログラム

上岡一世：著　　明治図書　　1,920円 + 税　（1990年7月）

　　私のお薦め度：★★★★★

この本は新刊本ではありませんが（1990年初版）、近年IEPがとり沙汰されるより、ずっと以前から、その「本人」のための指導プログラムを作るための、指導課題チェックリストが集大成されています。
私は今でもこの本に勝るIEP関連（？）書籍を知りません。

なにしろ、最初（健常児の生活年齢２才レベル）から表のリストの質問に従って○、×をつけていけば、いま我が子にとって、どのあたりが遅れて、課題となっているか一目瞭然なのです。
しかもそれに対する指導方法まで右ページの枠内に書かれているのです。

我が子の自閉症児としての精神年齢までの項目で、× がついているところを集めていけば、それだけで我が子のIEPと指導課題のできあがりです。（もちろん、オーダーメードとはいきませんが、充分イージーメードぐらいには仕立てあがります。）

なおありがたいことに、健常児、精薄児の隣に自閉症児の枠がちゃんとあり、自閉症児としての通過年齢の標準が記載されているという、まさに自閉症児を育てている私たち親のために書かれたような本です。

項目も基本的生活習慣から、集団参加、くらしの技術、職業意識まで、4領域、29項目、159下位項目、795課題にわたり、細かく課題別に整理されており、子どもの精神年齢も２才から12才までのレベルまでチェックできるようになっています。

たとえば、指導年令：４才

基本的生活習慣　　　　　健常児　　精薄児　自閉児　　

トイレットﾍﾟｰﾊﾟｰを　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　適量使うことができる　　　　４　　　　　　３　　　　　６

（排せつ－排便）

できない時の指導のポイント

面倒でもその場その場で指導します。両手で交互にﾍﾟｰﾊﾟｰを引っ張り、３重に重ね、ケースの縁で切らせる指導を定着するまで行います。

表の数字の意味は、健常児であれば、４才ぐらいでできるようになる課題であるが、自閉症児であれば、精神年令６才レベルになって通過できる種類の課題である、という意味です。

つまりこの課題でいう「適量」という判断が自閉症児にとって難しいためだと思われます。精薄児（ちょっと気になる表現ですが・・10年も前に書かれた本なので）のところに３才とあるのは、実年令３才ではなく、たとえば６才ぐらいになって３才程度の精神年令になればできるようになる、ということです。そう考えればこの課題、自閉症児にとっては結構ハードル高いですね。

でも一方逆に「夜中でも一人で用便できる」などという課題では健常児５才、自閉症児２才（精神年令）というような課題もあるわけです。なにしろ、暗闇ではちっとも怖がらない子ども達ですね。

電気をつけまくる子（我が家もその時期がありました）もいますが、あれは怖がっているというよりは、ただのコダワリでしょうか。
　

ともかく、こういった課題が795課題、続いているわけです。

こんなにすばらしい本ですが、残念ながら事務局では貸し出しはしていません。
・・もう第１回の評定欄に息子の ○、× が記入してある、すでに使用済の本だからです。
さほど高価ではないので、（定価 1,920円 +税）、ぜひ一冊購入して、ご家族で話し合いながらチェックしてみてください。
我が子の弱いところが浮かび上がってきて、療育の役に立つこと請け合いです。

今月の事務局イチオシの一冊です。

　　　　　　　（「育てる会会報 15号」1999.7）

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