つのだじろうの「グリグリ」である。



つのだじろうはご存知でもこの作品を覚えている方はいるんだろうか。あの頃の漫画家は、今よりもずっと作品に多様性があって、シリアスからギャグ、少年漫画から少女漫画まで幅広いジャンルに対応して作品を描いていた。
もちろん作風があまり変わらない漫画家も大勢いたと思うが、総じて売れっ子漫画家は幅広いニーズにお応えしていたように思う。
つのだじろうもそのひとりで、すでにこの頃もこう言ったスラップスティック的なギャグ漫画からシリアスなものまで幅広く作品を描いていた。

今では「恐怖新聞」や「うしろの百太郎」などのオカルトや「空手バカ一代」などの一大空手ブームを巻き起こした格闘モノなどの作者としての方が通りがいいだろうけど、俺らが親しんでいたこの頃はそんな一辺倒な作風の漫画家ではなかったし、むしろあらゆるジャンルに貪欲に挑戦していくタイプの漫画家だったと思う。

この作品の前後には少年誌では珍しい「競走馬」の物語、「俺の太陽」とか、「空手バカ一代」に先立つ、梶原一騎とのコンビ作品、本格空手漫画の「虹をよぶ拳」を描いており、どちらもコミックスを買うくらい好きであった。(この頃、少ない小遣いでコミックスを買うのはかなりの英断だったのだ)



この「グリグリ」と言うなんだかよく分からない生物を主人公にした漫画の前に、やはり同系のギャグ漫画「怪虫カブトン」があり、そちらも大好きだった。

割りと早めに漫画漫画していた画風を劇画タッチに移行していった漫画家だし、いわゆる「トキワ荘グループ」のメンバーでありながら(トキワ荘には住んではいない「通いのトキワ荘メンバー」)、師匠が手塚治虫ではなく大きな影響を受けていないのも珍しい。(師匠は「冒険ダン吉」で有名な「島田啓三」)



と書いてきて、俺は結構当時はつのだじろうがお気に入りだったんだんだなあと気づいた。コミックスも買ってるし、雑誌掲載作品も割りとよく読んでたしなあ。

なお、中学生になって音楽好きになった頃に、ドラマーの「つのだ☆ひろ」が実弟だと知ったときは驚いた。つのだ☆ひろは、当時サディスティックミカバンドの立ち上げメンバーで、よもや弟とは思ってもみなかった。ま、よく見れば二人とも名前の表記が平仮名なんだよね、弟は何故か☆があるけど、兄貴への対抗心だったのかな。