いま、原子力発電所から半径30キロ圏内に拡大される緊急防護措置区域に対応するため、該当する自治体では地域防災計画の見直しを急いでいる。

 皆さんはご自分が住んでいる、あるいは通勤通学している自治体の地域防災計画を、ご覧になったことがあるだろうか。

 そもそも地域防災計画とは、都道府県の地域防災計画が策定され、それに齟齬をきたさないかたちで、市町村の地域防災計画が策定される。
 これらは今に始まったことではなく、災害対策基本法に基づき、以前から策定が義務づけられていたものである。

 今回、原子力緊急防護措置区域が大幅に拡大されたことに加え、東日本大震災で広範囲にわたって激しい揺れと津波の被害を受けたため、ほとんどの自治体で見直しが行われることは間違いないだろう。

 さて、その中味は大変幅広いものであるが、今回は避難場所、避難施設について述べる。

 真夏に津波警報が出ても、高台の学校の校庭などが近くにあれば、なんとか一晩しのげるかも知れない。
 しかし、大雨や台風、ましてや原発事故に伴う放射線漏れ、そして季節や時間帯など、いくつかパターンを想定すると、建物内への避難が不可欠となる。

 よく地域防災計画では、「〇〇に避難するものとする。」という書き方がされる。

 たとえば、住民がその地域の学区となっている「小学校や中学校に避難するものとする。」などと記述されるのであるが、住民すべてを収容することができるだろうか。

 一部の過疎化の進んだ地域では、かつてのなごりで、現在の人口に対して比較的的大きな学校施設が確保できるかも知れない。

 しかし、いわゆる町場や都市部では、すべての人がそれらの施設に収容しきれないことは明らかである。

 ではどうするか、「すみやかに他の施設へ移動するものとする。」と書いてある。どうやって移動するのか。移動できる施設はあるのか。
 たとえば、仙台市では
今回の大震災で、どの公的施設も避難者であふれかえり、また、移動するにしても、バスの営業所も津波にのまれたのである。

 私は、この「〇〇するものとする。」という表現は何物をも担保するものではないと思っている。
 つまり絵に描いた餅であって、本当にそうできるかどうかはまったくわからない、根拠のないものなのである。

 日に日に計画見直しの期限が迫るなか、この「〇〇するものとする。」が羅列されるのではないかと危惧している。

 地域防災計画は本来、その内容が具体的に実現可能なことが検証されたものでなければならないのである。