朗読劇『バイオーム』の世界 | to-be-physically-activeのブログ

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 上田久美子さんの書き下ろした戯曲に,一色隆司さんの演出が加わったスペクタキュラーな朗読劇である。『バイオーム』というのはbiome,すなわち動物や植物,細菌やウイルス,菌類すべてを含む“生物圏”を暗示する言葉であろう。人間だけが生きている世界は不気味であるが,言葉をもたない動物も植物も,人間と同様にさまざまな思惑を孕んで葛藤していると思うとおもしろい。一筋縄では括りきれない生命界の無言のざわめきやカオスをフクロウの声というフィルターを通して別の次元で聴くと,不協和音も美しいメロディーとなり,悲劇も喜劇に昇華されるのかもしれない。

 上田さんの提示したお芝居のあらすじを読んだだけでは内容はさっぱりわからないが,中村勘九郎や麻実れい,花總まりや古川雄大など名優が知性と演技力を注いで舞台で演じられると,あら不思議。「一つも美しくない物語」がなんとなく「美しい生物圏の循環の物語」になってしまう。

 トンカツではなく黒酢酢豚の弁当を食べながら,豚の気持ちなって「人間って,しょうがない生き物だわね」とため息をついてみた。