医学界にはいろいろな秘密が隠されていますが、そのひとつに「ヴードゥー死」もしくは「ノーシーボ」という現象があります。第二次世界大戦前のヨーロッパで次のような実験が行なわれたそうです。
ヨーロッパのある国にブアメードという名の死刑囚がいました。彼はある医師から、医学の進歩のために危険な実験に協力してもらえないかと持ちかけられました。人間の全血液量は体重の10%が定説となっているが、われわれは10%を上回ると考えているので、ぜひそれを証明したいというのです。彼はその申し出を受け入れ、間もなく実験が開始されることになりました。
目隠しをされてベッドに横たわったブアメードは、血液を抜き取るために足の全指先を小さく切開されました。足元には容器が用意され、血液が滴り落ちる音が実験室内に響き渡ります。ブアメードには1時間ごとに累積出血量が告げられました。やがて実験開始から5時間がたち、総出血量が体重の10%を越えたと医師が大喜びしたとき、哀れこの死刑囚はすでに死亡していました。
ところがこの実験、実は血液など抜き取ってはいなかったのです。彼にはただの水滴の音を聞かせ、体内の血液が失われていると思い込ませただけだったのです。これが最近注目を集めている「ヴードゥー死」、あるいは「ノーシーボ」と呼ばれる現象です。
心と身体は本来、別々のものではないということです。彼は、体内から血液が抜き取られていると思い込んでいました。そして、体重の10%にあたる血液が失われれば人は死ぬものだ、という暗示をかけられました。これらの否定的な信念によって彼は命を落としたのです。
(拙著『腰痛は怒りである』より)