私が4~5歳の頃、同い年くらいの子供もいない頃…独りぼっちで遊ぶことが多かった私にとっての話し相手は、年上ばかり。

一番近い年齢の人でも、17歳の暴走族のヘッドでした。

一番話をしていたのは、父の会社の会長さん。ひ孫のように可愛がってくださいました。

そして、一番思い出に残っているのが、ダイトウリョウです。

ダイトウリョウと言っても…大統領ではありません。大・頭領です!

親方とか親父(オヤジ)とか頭(かしら)とか言われてもいました。

大工の頭領のことです!

これは、その頭領と幼い頃の私との話。



小さい子供が、木の杭で仕切られた一角の建築現場で足を止めて中の様子をじっと見ていました。


あぁ~、おやっさん。さっきから、ずぅ~っと…見てるんすよね。

あっ?何がだよ!

ほら、あそこ。あの子供。

おぉ~!子供か…あぶねぇな。

子供の方に近づいてきて。

おぉ~、おめえ~どこの子だ。

ん?

おめえ~どっから来たんだ?

あっち(^O^)/

おっ…あっちか…そっか…おぉ~チビ、あぶねぇから…そっから、入んじゃねぇ~ぞっ。

うん。入んないよ(^O^)

コレが、初めて言葉を交わした日の思い出です。

ちょっと、変わったしゃべり方をするおじちゃんでした。

それから、ほぼ毎日、その建築現場に足を運ぶこと…1週間。

おやっさん、また来てますぜ。

おぉ~、チビ…またか。おめぇ~…毎日見てて、飽きねぇのか?

うん。飽きないよ。だって…面白いもん。

えっ!?おもしれぇ?何がそんなに面白れぇんだ?

アレヾ(゜0゜*)ノ

カンナ掛けかぁ?

うん。しゅるるるるぅ~って、カツオブシみたい♪

カツオブシぃ~?おめぇには、アレがカツオブシに見えるってぇ~ことか!

うんo(^o^)o

あっははははっ…こいつぁ~いいや。そうか!おめぇには、コレがカツオブシにな…はっはははははっ。

おやっさん、そろそろ一服しましょうぜ。

おう!!…そうだ!チビ、おめえも…どうだ。

えぇ~…こっから、入っちゃいけないんでしょ?

あっ…今は、いいんだ。

えぇ~ホントに?

おう…おいらが言ってんだ。こっから、入ってきな。

うん。

1週間も通いつめたら、親近感を覚えたのか皆の輪の中に入れてもらいました。

チビ、おめえ~いくつだ?

うんとね、4つ。…もうすぐで5!

そっか…もうすぐ5歳か。そしたら、オイラんちのせがれの長男坊といっしょか。

へぇ~、おやっさんちにそんな小さい子供が居たんですね。

おう。

会えなくて、寂しくないんですか?

寂しいに決まってるだろっ…オイラ、アレだぜ!!いつもは、遊び相手になってやってたんだからよ。

へぇ~…でも、良かったっすね、この子と出会えて。

ん?

この子を通じて孫と遊んでいる気分になったんじゃ…。

バカいってんじゃねぇよ。チビは、オイラの一番新しい弟子だ!!

へぇ~、おやっさんが弟子を!

おう!!オイラが大工の頭領だろ…で、コイツが弟子だ!!

ねぇ~、トウリョウってなぁに?

ん?…頭領ってのはな、この中で一番エライ奴なんだ…だけどよ、コイツらが何か間違ったことをしちまったらよ…それは、全部オイラの責任なんだ!!

ふう~ん。

だからよ、コイツらが間違った方向に行かないようにうるさく言ったりな…コイツらにとったらよ、父親みてぇなもんなんだよ。エライってのは、そういうもんなんだ!!

頭領は、エライ人なんだぁ~。エライって、なぁに?

おう…おめぇには、エライって難しいか。エライってのはな…おっきな存在…大小のダイな。

う~ん。頭領のおじちゃんは、おっきい…ダイな人なんだぁ~。じゃぁ…ダイトウリョウだね♪

大頭領…あっはっははははははっ…大頭領か!おめぇは、頭がいいな。



本当に気のいい大工の頭領さんでした。
頭領の口調は、独特で…下町の江戸っ子って感じで、聞いているだけでも楽しかったのを覚えています。

幼稚園に入る前の出来事ですが…とても大事な何かを教わった時期だったかもしれないです。