作品が生まれた理由を探るため、鶴田さん本人が監督を直撃。
anan 2000.12.15号
鶴田:「セブン・イヤーズ・イン・イベット」や「クンドゥン」を観たときは、西洋から観た東洋思想というようなものを強く感じたんです。しかし、「キャラバン」では、東洋人のマインドをもとにして作られていると強く感じました。ですから、西洋人であるあなたが、このような視点で、このような素晴らしい映画を作った背景にとても興味があります。
厳しい自然との間に築いた愛情が根底に流れる映画。
ヴァリ(以下V):私は20年以上もヒマラヤに暮らしています。また、この映画は、お金儲けのためでも、誰かから頼まれて作ったわけでもありません。ただ、私自身とヒマラヤとの間に築かれた愛情というものがベースになっているのです。
鶴田:ネパールに魅了され、住むようになったのはなぜですか?
V:旅が好きで、好奇心旺盛だったからなんです。初めは山登りをするために、ヒマラヤに行きました。そして、そこに住む、厳しい自然に鍛え抜かれた人々と、広大な自然、自由に惹かれたのです。特に人々は、文明の中の現代人とは全く違います。仮面をつけ、偽りを演じることが出来る都会とは違い、嘘をついて生きることが出来ない世界なのです。生活、そして人生というものが、人と人との直接的な真実の関係に基づいた上に成り立ってます。
鶴田:プロの役者を使わずに、ヒマラヤに生きる人々で作品を作ろうと思ったとき、ドキュメンタリーという形にせず、どうして物語の形にしたのですか?
V:この映画の舞台に住み、心から感動する、素晴らしく、強烈な印象を受けた瞬間がいくつもありました。プロデューサーのジャック・ペランにその印象について話し、ドキュメンタリーで撮りたいと持ちかけました。つまり最初はドキュメンタリーのつもりだったのです。しかしジャックは、資金面はすべてこちらで何とかするので、それらの素晴らしい経験を再構築し、フィクションで作った方がいいとアドバイスしてくれました。人生の本当のリアリティーを再現するには、フィクションが最も適していると。
鶴田:それがこの映画の新しさでもありますね。
V:ええ。ドキュメンタリーは、様々な瞬間を再現するのではなく、その時どきの映像をとらえるものです。ですから、そこに情念や感動を積極的に再現する余地がない。「セブン・イヤーズ・イン・チベット」を作ったとき、J.J.アノーも私にこうアドバイスしてくれました。「写真家として活躍してきた君は、イメージキャッチャーだ。これた映像に携わるのなら、自ら映像をクリエイトするイメージメーカーにならなくてはいけない」
鶴田:とても過酷なロケだったと聞きました。そのストイックな取り組みにも、惹かれました。
V:映画の中に出てくる「道が2つあるならば、厳しい方を選べ」というセリフは、まさに私の言いたかったことです。
『キャラバン』
監督・脚本:エリック・ヴァリ/制作:ジャック・ペラン/音楽:ブリュノ・クーレ
出演:ツェリン・ロンドゥップ、カルマ・ワンギャル
ストーリー・・・
冬を生き抜くために、ヤクに塩を積みヒマラヤを行き来するキャラバン隊。ある日、村の長老の長男であるリーダーが不慮の死をとげる。次期リーダーを自負する若者カルマと、反対する長老は対立。カルマは神託を待たず、ヤクに塩を積み若者を率いて出立してしまう。吉日を待った長老は幼い孫や家族を引き連れ、カルマたちを追う旅にでる。