ChouChou 2000 No.19
鶴田真由が、愛娘を殺された母親を演じている「つぐみへ・・・」。誘拐殺害事件の被害者の家族をリアルに描き、スタート当初から社会派ドラマとして注目された。
「確かに深刻な内容ですし、タイムリーな話題を含んでいるという意識はあります。ただ社会性が強いといっても、ドラマの基本は人間。人間を描くという意味で、興味深い作品だと感じました」
今回の役を演じるにあたり、ある殺人事件の被害者の母親が書いた手記を読んだ。
そのなかの「多くのことを乗り越えたいまでは、自分が犯人の少年の母親のようにさえ思える」という主旨の一節に、感じ入ったという。
「女性の持つ母性の深さに脱帽しました。そこに至るまでというのは、想像してもしきれないほど大変だったはず。でも最後に母親のような気持ちで少年の更生を願うところに行き着いたのは、さまざまな現実から目をそらさず、きちんと乗り越えてきたからだと思う。今回、優美という役を通して、女性がその大きな母性に目覚めていく姿を演じているつもりです」
熱意を感じさせる語り口。
しかし「一番伝えたいことは?」とたずねると、冷静にこう答えた。
「見る人が何を感じるかは、私が押しつけるものじゃないと思う。見る側の人間性や理解力によって違うのが当然ですから。声を荒らげて何かを伝えたいというより、作り手としてウソと作為の無いものを提供していきたいと思うんです」
質の違う緊張感を感じています
企画を聞いたときから一貫して「あざとく作ることは、絶対にしたくない」と思っている。
それは彼女だけでなく、スタッフ、出演者全員の一致した考えだ。
「事件モノってあざとくする気になればいくらでもできるんです。わざとエグいシーンをはさむとか、何か過剰な描き方をするとか。娯楽性の強いドラマで楽しさを強調するのはありだと思うけど、このドラマの場合は・・・・・。(ドラマと同じような事件の)遺族の方々いらっしゃるわけですから、その方々を絶対傷つけてはいけない。いままでかかわったドラマとは質の違う緊張感があります」
娘の死を事故と決めつけ捜査を始めようとしなかった警察、興味本位のマスコミ。
優美を取り囲んだ環境は、いまの世の中を映している。
そんな社会に鶴田真由自身は何を感じているのだろう。
「特別な職場や立場の人だけじゃなく、みんな責任感がなさすぎると思う。劇中に、近所のおばさんが警察にポロッと適当なことをいう部分があったんです。その無責任な発言をきっかけにウワサが出回ってしまうんですが、なんだかいまの時代、自分の言動の意味や影響力についての感覚が鈍くなっている気がしますね」
思慮深く答える言葉ひとつひとつに、間違いなく説得力がある。自分の言動に責任をもちたいという強い意志が、そう感じさせるのかもしれない。