70年代の初期から後半にかけて、イギリスでパブロック・ムーブメントが起こった。

 

これは、ほぼイギリスだけの現象。

そのパブロック・ムーブメントが、

パンク誕生につながる。

 

 

ところで、パブロックって何よ?

 

イギリスにはパブという、

酒を飲む場所がたくさんある。

軽食を出すところもあるけど、

基本はひたすら酒を飲む。

 

パブにもよるけど、

ミュージシャンが演奏できるような

狭いステージを持ってるところがあり、

そこで地元のバンドが演奏している。

 

そこではロックありの、

フォーク、テクノありの、

なんでもござれの世界で、

パブロック自体に音楽的ジャンルは無い。

 

 

 

そのパブで細々と演奏されていた環境に、

時代の追い風が吹く。

 

当時の音楽シーンは、

やたらと曲が長いプログレッシブロックや

派手派手なグラムロック全盛時代。

レコーディングに時間と金をかけ、

ライブはどでかい場所でやる。

 

そんな音楽シーンに

みんなうんざりしていた。

 

だからパブで演奏される

シンプルかつストレートな

ロックが新鮮にうつった。

(実際は、派手にやる金が無いだけだけど)

 

それで本来のロックンロールに戻ろうという、

Back To Basicムーブメントが巻き起こった。

これは今でいうと、オルタナティブ・ロック誕生と同じ現象。

 

ただ、パブロックの商業性を疑問視していたメジャーレーベルが興味を示さず、

パブロックバンドは、

なかなかデビューできなかった。

 

 

それならってんで、

小さな独立レーベルを作って

レコードを売り始めた。

これがのちの

インディーズレーベル隆盛につながる。

 

そうこうするうちに、

すごい音楽をやるバンドが出てきて、

パブロックムーブメントが

ついにメインストリームに躍り出る。

 

 

ドクター・フィールグッド

 

 

ウィルコ・ジョンソンという、

ハンドピッキングの超絶ギタリストが現れる。

 

60年代のビートバンドを

思い起こさせるサウンド。

多くの若手バンドに刺激と勇気を与えた。

 

 

残念ながらドクター・フィールグッドが凄かったのは、このウィルコがいた時代だけ。

 

1976年に発売されたライブアルバム「Stupidity」全英No.1に。

ロックファンは一家に一枚ほしいアルバム。

Stupidity

Stupidity [12 inch Analog]

 

 

 

 

イアン・デューリー&ザ・ブロックヘッズ

 

 

イアンの前身のバンドでは、とにかく派手で過激なパフォーマンスで話題になる。

 

ライブでは喧嘩沙汰が絶えないヤバい奴で、彼こそゴッドオブパンクと言っていいかも。

 

そのバンドでは上手くいかず、次に作ったザ・ブロックヘッズで爆発する。

 

 

ここに曲もかけるチャズ・ジャンケルというギタリストがいて、

彼の才能とイアンの狂気が融合する。

 

※「愛のコリーダ」

クインシージョーンズで有名なこの曲

オリジナルは、このチャズ・ジャンケル。

 

彼らの凄いところは

ロックだけでなく、ジャズやファンクまで

サウンドの幅が広いこと。

 

デビューするや、

立て続けにヒットを連発する。

 

 

 

 

でも80年代に入ると、

また新しいムーブメントが起こって、

バンドも低迷し解散状態になる。

 

そんな彼らを救ったのは、

なんと日本人アーティスト。

 

 

忌野清志郎

 

彼のアルバム制作にザ・ブロックヘッズを起用したことから、またバンドが息を吹き返す。

 

新たにアルバム制作やライブ活動を始めるなど活発に活動するものの、

2000年3月

イアン・デューリーは、癌で57歳の生涯を遂げる。

 

彼らの作った

「Sex & Drug & Rock&Roll」は、

パンクロックアンセムとして、

いまだに歌い継がれている。

Reasons to Be Cheerful: Best of

 

 

 

 

ニック・ロウ

彼こそがパブロックの象徴と言っていいかも。

 

そもそもパブロックの始まりは、

アメリカ公演に失敗し多額の借金を背負った

ブリンズレー・シュウォーツが

イギリスのパブでドサ回りを始めたのがきっかけと言われるくらい。

そのバンドの中心人物がニック・ロウ。

 

 

そしてインディーズレーベル

「スティッフレコード」

プロデューサーや新人発掘で活躍したのも彼。

 

スティッフレコードはパブロックを広め、

パンクを生んだ本丸のレーベル。

所属アーティストも

ニックロウ、

ダムド、

エルビスコステロ、

ディーボ、

マッドネス、

ザ・ゴーゴーズ、

モーターヘッド、

デイブスチュアート&バーバラガスキン、

ベルスターズ、

トレイシーウルマン、

ザポーグス

 

ここでニックロウは、ダムド、エルビス・コステロ、プリテンダーズのデビュー曲をプロデュース。

 

彼自身もソロになってから、曲作りの能力を爆発させる。

 

1978年に「Jesus Of Cool」を発表するや、

その皮肉に満ちたアルバムは批評家から大絶賛される(全英22位)

ジーザス・オブ・クール

 

 

※「Heart Of The City」

ニックの代表作のひとつ。

ザ・ストライプスのような

若手にも歌い継がれている。

 

そして次作

「Labour Of Lust」

からシングルカットされた

「Cruel To Be Kind」

 

イギリスだけでなく、アメリカでもブレイク(ビルボード12位)

パブロック組では最大のヒットになった。

 

クワイエット・プリーズ~ザ・ニュー・ベスト・オブ・ニック・ロウ

 

 

この曲は自分も大好きな1曲。

たしか佐野元春も大好きといっていた。

 

 

※「I Knew The Bride」

ヒューイ・ルイスにプロデュースしてもらい、

バックもザ・ニュースがやったもんだから、

ヒューイルイス&ザニュースっぽくなった。

 

ヒューイ・ルイスも出来が気に入ったのか、

自分たちのライブでもやってた。

 

 

 

ニックの作る曲は何ともチャーミングで

イギリス濃度が極めて高い。

 

トンがっていた時代よりも、

少し丸くなった頃のニックがなんともいい。

※「The Rose Of England」

 

※「She Don't Love Nobody」

ジョンハイアットのカントリーソングだけど、

ニックがやると、ニック節になる。

ライブでもニックがお気に入りの1曲と紹介してる。

 

ニックあにい、

オイラも好きです。

 

ローズ・オブ・イングランド

 

そんなニックが実はこのGWに

日本に来てライブやってたんだよね。

 

気づくのが遅かった。

一生の不覚!