『遊園地ぐるぐるめ』 青山美智子・田中達也/著 ポプラ社

 

 

この本の帯に『今まで見たことのないコラボ連作短編小説』とあり、ミニチュア写真家・見立て作家の田中さんが制作したミニチュア遊園地を見て、青山さんが小説を書いたそうです。びっくり

 

 

私も、表紙の写真に写っている、ハンバーガーのメリーゴーラウンドや、巨大フォークとスプーンが立っている入場門、その真ん中に立ってお客さんを出迎えているピエロなどに惹かれて、この本を手に取りました。

 

 

表紙を開くと、表紙の袖に『日常を忘れて、心ゆくまでお楽しみください。』とあり、それは「遊園地で」という意味もあるかもしれませんが、私はこの本を読んでいる間、わずらわしいあれこれを忘れ、お話の世界に思う存分浸ることができました。飛び出すハート

 

 

本扉に、どのお話にも必ず登場する、表紙でも見たピエロの人形が載っていて、お話の中で登場するたびに、本扉を開けてその様子を確かめました。

 

 

このピエロはお料理をテーマにしており、お玉で時計になっている太鼓をたたいて時を知らせるのですが、それを乗せているカートにはガスコンロもついていて、フライパンなどのキッチンツールも下がっているので、「どこから出したのかなはてなマーク」とか、いちいち確認したくなるのです。

 

 

通称「ぐるぐるめ」と呼ばれている山中青田遊園地は、地名をそのまま名前に付けただけの、古くからあるアミューズメントバークとのこと。

 

 

そこに訪れるお客たちについて、それぞれのお話が一話ずつというのはよくある形態ですが、この本はそれに加えてピエロ自身の話と、お客たちの話の締めくくりのような、種明かしのような、まとめのような一話も入っています。

 

 

 

こちらの気持ちと相手の気持ちの両方を読めることで、ともすればすれ違ってしまうかもしれない人間関係の危うさを感じますが、この本の登場人物は皆、一緒に遊園地に訪れるような親しい関係の人たちばかりなので、そこは安心です。

 

 

 

多くの人は自分に自信がなく、卑下しやすいのだな、でも、相手はそんな風に感じているわけではなく、逆に本人がマイナスだと思っている部分を長所と捉えてくれていたりするのだなと、なんか嬉しかったです。飛び出すハート

 

 

 

私も自分にダメ出しばかりしているので、もしかすると、他人はそんな風に思っていないかもはてなマークもしかしてそこが良いと思ってくれていたりするかもはてなマークなんて思えたりして。てへぺろ

 

 

 

しかしまあ、もしこの人たちが「ぐるぐるめ」を訪れなかったら、お互いの気持ちを言葉にするきっかけがないまま時が過ぎ、なんとなく分かり合えないまま、本当は長所だと思ってくれていたと知らないままだったかもしれませんね。

 

 

「ぐるぐるめ」という言葉について、とっておきの秘密が明かされている個所がありますが、それがどういうことなのか私にはよくわからないなあと思っていました。

 

 

でも、もしかすると、こちらが思い描いていたイメージと、相手が感じていたこと(すなわちリアル)が混ざり合う場所ということなのかもはてなマーク

 

 

だから、「ぐるぐるめ」に来るとお互いの気持ちが寄り添う形になっていけるのかもはてなマークなんて思いました。

 

 

まあ、あえて「秘密」についてはハッキリ書かなかったので、未読の方には何のことやらわからないと思いますが。てへぺろ

 

 

ピエロの話の章、『7 プール』から抜粋します。

 

 

『カートを引こうとしたときのことでした。

ピエロは初めて、ちょっと重いな、と感じたのです。

ああ、これは難儀なことだ、と。

そう思ってしまった自分にびっくりして、彼は戸惑いました。

こんなに大好きな、このカートがしんどくなるなんて。』

 

『今日のぼくは、ちゃんとやれていただろうか。』

 

 

仕事をしながら年を重ねている人には皆、このような瞬間が訪れるのではないかなと思いました。

 

 

私も、ずっと続けてきた図書館での仕事なのに、今までの自分ならありえないようなミスをしたことに気づいたときや、股関節に支障が出て、館内の見回りをこれからも続けられるだろうかと不安に思う瞬間がありました。

 

 

でも、ピエロが遊園地のオーナーである「アンナ」のおかげで気持ちを立て直した個所を読み、私もそうありたいなあと思いました。

 

 

『そんなすばらしい場所で、ぼくは今日、たくさんの人の笑顔を見た。

ここでそのひとときを共有して、自分なりの仕事をしたんだ。

なんて誇らしい気持ちだろう。』

 

『赤白しましまのエプロン、コックのような帽子。自分にぴったりの服を着て、お気に入りのアイテムを持ち、たくさんの人たちに話しかけながら、オリジナルのカートを引いて歩いていく――。

そんな自分がやっぱりいいな、自分のペースで、ずっとそういう気持ちでいられたらもっといいなと、ピエロは思いました。』

 

 

私も自分のペースで自分なりの仕事をして、少しでも利用者のお役に立てたらいいな、そんな自分でいられたらいいな、身体も頭もだんだん衰えてはくるだろうけど、それでも、私にしかできない言葉かけをし、私なりの笑顔で働き続けられたら良いなと思いました。笑

 

 

田中さんの作品を見て青山さんがお話を創作したというのは冒頭に書きましたが、田中さんがそのお話を読んでさらに作った作品も、各章の終わりのページに載っています。

 

 

それぞれのお話を読んだ後に、章の最初にある作品と最後の作品を見比べるのも楽しく、この本は一読で何度もおいしい本でした。飛び出すハート

 

 

この本も職場の選書イベントで頼もうと思っていたら、他のスタッフが既に選書していたので、同じ本を選んだ人がいたというのもなんだか嬉しかったです。爆  笑