北国の春は
雪解けから始まるのだが
毎年の事なのにも関わらず
それはまるで白銀の異世界から
無色の現実に引き戻されてしまった
2度目の冬のように感じる
気温がマイナスとプラスを
行ったり来たりしながら
次第に雪が解けていくその様を
毎日眺めながら今年もまた
見送りの冬が来たと感じるながら
改めて春を想う季節
氷点下の気温
とりわけ5℃を超えると
寒さよりも痛みに感じられ
その肌を刺すような
寒気が冬の醍醐味であり
まさに将軍なのである
真冬の日中に
プラス気温になるだけで
小春日和のような気持ちになり
日が落ちた瞬間から
また真冬に戻るという予兆から始まり
やがて日を追うごとに
雪が解けては汚されていく
雪解けの春先は
決して美しくはないけれど
痛みが寒さという感触に変わり
目に見えて見慣れた景色を
懐かしい雪の無い
街並みへとスライドしていく
不思議なもので
雪の降り始める頃は
積雪すると自転車にも
乗れなくなるのを思うと
移動するのが億劫になるが
歩く事に慣れた雪解けの頃には
すっかり雪景色の虜になり
次第に失われていく
その白い世界に留まり続けたいと
いつも願ってしまう
公園の木々の葉が落ち
街ゆく人々の暗い上着の色と重なり
モノクロームな季節となる冬から
白に染まる雪の季節へと移る
迎え冬の無色な街並みが
寒々しく感じては心が枯れ果て
雪の白さで生まれ変わり
その雪が溶けて送り冬の頃には
すっかり春に心を奪われる
関東あたりで
桜が満開になったという
ニュースを聞きながら
無色の冬を楽しむこの季節は
身体も冬モードから
夏モードへと切り替わり
その過程で必ず毎年
体重が増えてあたふたする始末