幼い頃から
抱きしめられた事がないせいか
他人に抱きつかれたり触れられたりするのが
異常に苦手で極端な話好きな相手でも嫌だ
子供の頃
誰かに抱っこされた記憶がない
そんな文化もなかったし
こちらからも求めなかった
いやでも耳掃除をしてもらう時は
母親の膝枕が気持ち良かった
ただそもそも母親が
あまりベタベタされるのを
好まなかったから
いつも遠ざけられるのが嫌で
自分から近づかないようにした
思い返すとあの何気ない母の習慣が
嫌われていると思い始めた切っ掛けだった気がする
だから姪っ子が母に抱きついて
それを受け入れている母を見た時には
驚いてしまった
あんなに抱きしめられた事はなかったから
嫉妬したのかもしれない
けれどその時の母の顔は明らかに嫌がっていたから
やっぱり嫌いなんだと納得もした
学校の体育やクラブ活動で
二人一組で行うトレーニングも嫌だった
運動会の二人三脚や百足競走も苦手
ただ高校一年の体育祭では
3年生の可愛い女子の先輩二人に挟まれて
三人四脚をさせられた時だけは
ちょっと嬉しかった
思春期で周りの先輩たちにも
イジられて恥ずかしくもあったけれど
ぽっちゃり癒し系だったから
青春真っ只中の先輩たちが
一番害にならない安パイな後輩を
人気女子二人と組ませるという妥協点を
見いだした結果の幸運だった
そういえば小学生の時に
休み時間に体育館で手つなぎ鬼という
鬼ごっこをした時の出来事も
トラウマになっているのかもしれない
手つなぎ鬼とは単純に
鬼に捕まったら一緒に手を繋いで
鬼になるというだけの鬼ごっこ
普通の鬼ごっこは
捕まれば終わりだけれど
手つなぎ鬼は鬼が増えれば増えるほど
動きづらくもなるから
校庭くらいに広くなると
終わりが見えなくなるという悪魔の遊びで
体育館くらいの広さでなければ
足の速い人を捕まえられずに
最後はみんな疲れて白けて解散になる
あの時も走るから
当然汗をかいてしまうから
繋いだ手がベタベタして気持ちが悪い
クラスで人気の女の子に
真っ先に捕まって手を繋いだ瞬間
「わッベタベタする」と言われ
ショックのあまりそれ以来
手つなぎ鬼には頑なに
参加しなくなったかどうか
記憶は定かではない