商店街を自転車で走ってると


アーケードの切れ目の寸前


文房具屋と


お稲荷さんの様な小さな社の間に


一瞬、駄菓子屋の様な店が見えた


そんな店あったっけ?


僕は引き返してみた


だが、そこに立って見渡してみても


そんな店は見当たらない


ただの見間違いの様だった


そんな事が2回ほどあった


なんか釈然としないけれど


動体視力だと


また違った物の見え方をするのかと


僕は無理矢理自分を納得させていた








2年付き合った彼女に振られた日


僕は自転車を押しながらゆっくりと


またそこを通りかかった


するとどうだろう


今度ははっきりと駄菓子屋が


そこで営業していた


僕は自転車のスタンドを立てて


店を覗き込む



たくさんのお面や紙風船、竹とんぼの下に


懐かしいねり飴にオレンジガムにチョコバット


妖しい色のキャンディーにBIGカツに酢イカ


タラタラしてんじゃねえよも、、、


店の奥では小柄なお婆さんがうたた寝の最中


僕は時間を忘れてその店の商品を


ひとつひとつ吟味して回った


そしてその中に


名前も値段も書いていない


青いキャンディーを見つけた





店のお婆さんにいくらか尋ねようと


話しかける


お婆さんがこちらを見ようと顔をあげた瞬間


駄菓子屋の風景は消え


僕はキャンディーを握ったまま


小さな社の前にひとり佇んでいた



彼女に振られたショックで


僕は変な角度で陽が差し込んでいるこの一角で


駄菓子屋の幻でも見ていたのだろうか




僕は手の中のキャンディーの包みを開き


口に放り込んだ





その塊は


漢方の様なほろ苦い味がした、、、、、