ちょっと両手を広げてバタバタと


鳥が羽ばたくみたいに動かすと、、、




ほらね


身体が宙に浮いた


もう俺くらいの歳になると


この現実離れした状況を見て


ああこれは夢の中だってわかってしまう


夢の中なんだからなんだってありなのよ


まるでワンダーランドさ




俺はしばらく手をバタバタ動かして


低空飛行を続けていたけれど


じきに飛ぶのに飽きて地面の上に戻って来た


そして、なんだか歩くのが急に嫌になって


手を挙げてタクシーを拾った




スルスルと走り出すタクシー


ドライバーは、、、なんてこった


会社の中で一番嫌いな奴


歳下のくせに生意気で全く言う事を聞かない


だが俺はどうせ夢の中だから


まあいいやって思ってそのまま乗っている



しばらく走っていると


だんだんと道が雪に埋もれていく


雪は空から降ってくるわけでもなく


どうも地面から湧いて出て来てる様だ


それにしてもボコボコした酷い道だ



大きなカーブに差し掛かると


車はスリップしてコントロールを失い


派手に雪の壁に刺さって止まった


俺は頭に来て


後ろの席から助手席に乗り込み


ドライバーを外に蹴り出した


どうせ夢の中だ、コイツの事は


いつかぶっ飛ばしてやろうと思ってたから


丁度いいさ


俺は自分でハンドルを握って


車を道に戻して走り出す




しばらく走っていると


いつの間にか道路の雪は消え去り


代わりに酷い渋滞に巻き込まれた




俺はイライラしてクラクションを鳴らす


すると前の車から


厳つい髭面の男が降りて来て


助手席のドアを乱暴に開け乗り込んで来た




あーあ しまった 


ドアをロックして無かった、、と思うと同時に


男はいきなり人の腹に拳銃を突きつけて来て


なんの警告も躊躇もなく引き金を引いた





まあいいさ、、、どうせ、、、









「、、、でさっき運ばれて来た男


まだ身元が分からないのか?」





「こんな田舎なのに


いきなり腹を撃たれるなんて


物騒な国になったもんだ、、」






ひと仕事すんだ当直の若い医者が


白衣を脱ぎながら面倒くさそーに呟いた