君には僕が見えるのかい?




私は数十年ぶりに目の前で


ベッドに座っている男の子に話しかけた


男の子はコクンと頷いた






「例えば教室で騒いでいた皆んなが


何かの気配を感じて一斉にサッと


静まりかえる瞬間を覚えているかい?」





「アレが僕の仕業なのさ」





私は目の前の子と同じくらいの歳の


男の子の姿になってそう言った、、、





私の目の前の子はもうすぐ寿命が尽きる


私はただそれを見守り


大樹の記憶として残しておく為だけに


そこにいた





この世界は


目に見えるもの


現象として現れるものはほんの一部で


人間は時間が過去から未来への一方通行だと


感じされられているが実は違う




だがそれをこの子に説明する為に


私がここにいるわけでもない





ただ本当に久しぶりに


私を認識してくれる人間に出会い


私は嬉しくて饒舌になってしまっている




私の仕事は


この子の魂が


迷わず元の場所に帰れるように


見守る事だけだから


あまり余計な話はすまい、、、






男の子の澄んだ瞳を覗き込むと


今の私の姿が映っている


私には決まった姿は無いが


この姿はとても気に入ってしまった





あと少し待って


この姿のまま君と一緒に帰ろう





君が生きたという



美しい現象を記憶に残す為に