小学校の時、小梅の酢漬け(商品名は忘れました。円形の透明な容器に入った不自然に赤いもの)が大好きで、よく食べていました。口の中で2,3粒コロコロところがして、頃合いを見計らってはカリッと噛んで、「すっぱ~」と顔をしかめる。実を食べた後は、種を奥歯でかみ砕き、種の中の芽を食べるというのが通の食し方。
ある日、いつものように2,3粒口に入れて自転車でそろばん塾へ。
授業が始まる前の賑やかな時、口の中で小梅をコロコロしている事をすっかり忘れて、何やら大声でわめいてしまった。
すると、口の中から小梅がポロポロと3粒飛び出し、床をコロコロ。
一瞬、いやな静寂の後、友達のひとりが
「うわ~っ!コイツ赤い玉吐いた~!」
と大声で叫んだ。教室中の生徒が一斉に集まってくる。
「うわ~っ!3つも吐いた~!すぐ死ぬぞ~!3回死ぬぞ~!」
いやいや、これは梅干しなので酸っぱいだけで、死ぬわけねぇじゃん!
と否定するまもなく、教室中のアホが「ヤバイ」だの「医者行け」だの「かわいそう」だのすごい勢いで叫んでいる。中には涙ぐんでいる女子まで。
しばらく責め続けられ、同情し続けられ、もちろん否定する隙さえ与えられず。
すると何を思ったか当の本人も、
(え?ひょっとして、オレってば死んじゃうの?)
と思い始めてきた。何といってもいたいけな小学生だったし。
これはヤバイ。ホントにヤバい。早く家に帰らなきゃ。死んじゃう死んじゃう。
そして「うわ~っ!」と大声で叫びながらそろばんの授業も受けずに家に帰った。
子供が突然「死ぬ~」と叫んで帰ってきた家では、母親が「はぁ?」と端からスルー。
しばらくしてから、あれっ?オレって何で死ぬんだっけ?と冷静さを取り戻し、バッカじゃねえの、と自分にクレーム。
さて、翌朝の小学校では。
大変な騒ぎになっているんじゃないか、机の上に花が活けられているんじゃないか、
大丈夫だったんか~とみんなが駆け寄ってくるんじゃないか、と若干の期待とともに登校。みんなをびっくりさせようと思い、教室へ入るなり開口一番、
「オレは不死身だ!」。
ここでも一瞬、いやな静寂の後、友達のひとりが小さな声で、
「なぁ、小梅好きなん?」と。
なんだ、みんな知ってたのね。