地震って個性的 その1 液状化


地震って、とっても個性的だと思います。

こういう言い方は、少し不謹慎かもしれませんが、

地震の発生原因がいろいろあるように、

地震の姿というか、被害の表れ方なども

地震の度に、違っているように思います。

今度の熊本地震では、

震度7の激しい地盤の揺れが特徴的で、

沢山の民家だけでなく、

阿蘇神社や熊本城などの観光施設や

市役所の庁舎などの公共施設、

などなど、建物被害の報道が多いように思います。



そうした中で、報道されない被害もあります。

報道されないとは、そんな被害が発生しなかった、

目につかなかったということです。

例えば、液状化は、今回の地震ではあまり耳にしません。


新潟地震で、5階建てのアパートが倒れたり、大きく傾いたり、

信濃川河口に架かる国道の大きな橋が落ちたりしましたが、

その原因が『液状化』という現象でした。

阪神淡路大震災で、港の岸壁が倒れたり、大移動したり、

クレーンの台座が移動して、大きく傾いたり、

埋立地のアパートの周囲の土地が陥没してしまったり、

これらも液状化がした悪さです。


液状化は、砂が十分にしめ固まっていない土地、

例えば、池などを埋め立てた土地、

海岸近くの新しい造成地がそうですが、

そのしめ固まっていない土地が地震で揺すられて、

砂が水の中に浮いたような状態、

すなわち、土地が液体のようになり、

その土地に乗っかっている建物を支えられなくなる現象です。


マンホールがにょきっと顔を出した異様な光景も、

液状化が起こしたものです。


都市が発展していくとき、新しい土地を郊外に求めることになりますが、

池などを埋め立てて土地を確保することが多くあります。

池だった場所を埋めて、

学校、公共施設、大規模商業施設などを建設するわけです。

どれも、都市施設として大事なものばかりなので、

地震の液状化に対して、充分に備えておく必要があります。


液状化を防ぐ方法はそんなに難しくはなく、

新潟地震で液状化が問題になってから、

いろんな対策方法が考えられ、

最近は建物が横倒しになるような被害は発生しなくなりました。

要は、建物の基礎をしっかりとした基盤につなげておけばよいのです。


原理は簡単ですが、費用はばかにはなりません。

しかし、条件の悪い土地に住み、大事な施設を建てるのであれば、

そこに住む人の命を守り、

そこでの都市活動が地震で中断されないように、

予算を惜しまないことです。








地震、その時、新幹線は?


自動車や鉄道のスピードアップは、

早く走る技術もさることながら、

安全に止まる技術があって初めて、実用的なものになります。

超高速で走る新幹線にとっても、

止まる、止める技術があってこその高速化です。


地平区間も走る在来鉄道に比べ、

完全立体交差化された専用軌道を走る新幹線は、

昭和391964)年の開業以来、半世紀以上を経過してなお、

乗客の死者ゼロ、という絶対の安全神話を誇っています。


通常運転時の絶対の安全は実証されていますが、

地震の時は、新幹線はどうなるのでしょう?

この半世紀、新幹線は何度か地震、それも激震に見舞われ、

新幹線構造物が甚大な被害を受けたことは、ありましたが、

車両が転覆し、乗客に死傷者を出すような惨事は起こしていません。

地震に対しても、新幹線は安全神話を誇っています。


しかし、地震時の安全神話にとって、大変きわどい瞬間がありました。


平成7(1955)年の阪神・淡路大震災では、

鉄筋コンクリート製の高架橋が崩壊し、

レールが宙に浮く激甚な被害が何か所も発生しました。

あの崩壊現場に新幹線車両が突っ込んでいたら、

車両は確実に脱線し、悲惨なこととなっていたでしょう。


それが起こらなかったのは、

地震発生の546分、新幹線はまだ動いてなかったからです。

始発の新幹線が崩壊現場に差しかかる、

僅か5分前に地震が発生、

という実にきわどいタイミングでした。

地震当時、「神の与えたもうた5分間」と言われたものです。


阪神淡路大震災での被害を教訓として、

新幹線構造物の設計基準は見直しをされ、

既存の構造物も耐震補強工事を施されましたので、

その後の地震で、新幹線構造物が壊滅的な破壊をこうむることはなくなりました。


安全に止まるためのネックは、高速で走っていることにあります。

ですから、新幹線は開業以来、地震の揺れを感じた瞬間に、

電気の供給をストップするとともに、

電気供給ストップを検知した車両サイドで緊急ブレーキを作動させ、

車両のスピードを落とす技術を開発、改良し、

その為の地震計を高密度に設置しています。


地震の揺れを感じた瞬間と言いましたが、

もう少し詳しく説明しましょう。

地震の揺れにはP波とS波の2種類があり、

構造物に被害を生じさせる主要動のS波は、

初期微動のP波よりも遅れて到着します。

遅い早いといっても、ほんの数秒のことですが、

その数秒が勝負を決するわけで、

初期微動をキャッチした瞬間に車両をストップさせるのです。


原発事故などを経て、安全神話に疑問符のつく時代ではありますが、

新幹線は、安全神話を今後も守りとおして欲しいと願っています。











大震災の教訓を伝えるために  

関東、阪神・淡路、東日本とくれば、

「大震災」が念頭に浮かぶことでしょう。

各地震での死者数は関連死も含めて、

順に105千余人、6千4百人余、195百人弱に及んでいます。

それぞれの地震は発生場所、時刻や、

地震に伴う災害のありようが異なっています。

関東大震災では、地震時に発生した火災が

大勢の犠牲者を出したため、

地震発生後何時間も犠牲者が増え続けました。

一方、阪神・淡路大震災は、

初めての震度7の激震で、多くの建物が崩壊して、

その建物の中で圧死した犠牲者が多数でました。

東日本大震災は、三陸沖で発生した地震のため

大規模な津波が沿岸地方を襲い、

犠牲を大きなものにしています。

いずれにしても、多くの犠牲者の死を無駄にしないためには、

それぞれの地震で得た教訓を後世に伝え、

同じ被害を繰り返さないことが肝心です。

しかし、悲しいかな、人は忘れる動物です。

忘れないと生きていけないとも言えます。

それでも、決して忘れてはいけないことがあります。

大震災の記憶を伝え、地震にいかに備えるべきかを、

思い起こすために、『防災の日』が定められています。

91日は、関東大震災の発生した日で、

台風が本土上陸する確率の高い二百十日にも近いことから、

この日に、全国各地で防災訓練が行われています。

また、『防災とボランティアの日』が117日と定められています。

この日は、阪神・淡路大震災の発生した日で、

学生さんを中心としたボランティア活動が活発化し、

「日本のボランティア元年」と言われたことにちなんでいます。

また、『津波防災の日』は、東日本大震災の発生した311日ではなく、

1115日』と法律で定めています。

この日は安政元(1854)年の安政南海地震の発生した日で、

我が国だけでなく、東南アジア各地の小学校教科書に

「稲むらの火」の逸話で知られています。

「稲むらの火」は、和歌山県広村に大津波が押し寄せた時、

庄屋の浜口梧陵さんが収穫したばかりの稲わらに火をつけて、

村人たちに急を知らせ、高台に呼び寄せ、その命を救ったことを

後世に伝える逸話です。

この逸話は、我が国の教科書では一度消えてしまい、

東南アジアのそれから逆輸入されたものです。

くれぐれも、教訓を風化させないように、

しっかりと伝えていきたいものです。

地震はなぜ起こる?

昔の人はナマズがはねて地震が起こる

と考えてナマズ絵を描いたけれど、

いまどきの人はそんなことを信じはしません。

では、なぜ地震が起こるのでしょうか。

最近は地震がよくおこり、

活断層がどうのこうのという報道を多く見かけるけれど、

断層が地震を引き起こしているのでしょうか、

それとも地震が起こって断層が動くのでしょうか。

なんだか鶏と卵の関係のようでもあります。

地震の原因については、いろんな説があるようですが、

私には3つの原因が比較的わかりやすいように思われます。

1つは、火山性地震。

火山活動に伴って地面が隆起または沈降したり、

地中のマグマが噴出してくるときに地面が揺れる。

火山の噴火が地震を引き起こすのは

直感的にありそうに思えます。

2つ目は、プレートテクニス説による地震。

『マントル流に乗って地球表面のプレートが動き、

その動きの境目の岩盤にひずみがたまり、

岩盤がそのひずみに耐え切れなくなったとき、

一気に岩盤が崩れて地震となる』と説明されています。

普通は動かないと考えている地球表面が

徐々に動いてひずみが溜まっている

とは信じがたいことですが、

その証拠に、例えば室戸岬は年々、沈みこんでいて、

地震の時に跳ね返って元に戻るといわれると、

そんなものかと思ってしまいます。

このタイプの地震は海溝型地震とも呼ばれ、

プレートの境目である海溝で、一定周期(100300年)で発生し、

その発生個所は三陸沖や東海沖、

南海トラフなどおおむね一定しています。

地球規模の変動が原因となっていますので、

巨大地震となり、

海の底を震源とすることから、

津波の発生を伴うことも多いです。

3つ目は、直下型地震です。

阪神・淡路大震災や今回の熊本地震のように

活断層にひずみがたまり、

たまったひずみがある限界を超えると

断層に沿って一気にずれ動くためで、

地震としての規模は小さいのですが、

地中の浅いところに震源があり、

しかも人の住んでいるところの近くで起こりますから、

震度階は高くなります。

日本全国に無数の活断層があり、しかも、

地中の中ですから、未発見の断層もあることから、

日本ではどこで起こってもおかしくはないと言われています。

そうした日本に住む以上、

地震にどう備えるのかを日頃から考え、

身近にある広域避難場所の位置を確認し、

どこに避難するかを家族と話しておきたいものです。

震度7!? 


今回の熊本地震では、「前例にない」ことが続いています。


4142126分発生の、

「極めて強い」地震(震度7)が、実は「前震」で、

416125分に発生したのが、本震(同じく震度7)となりましたが、

震度7の前震なんて、聞いたこともありません。


本震の後にしばらく余震が続くことや、

小さな前震が本震の前にあることは、ないわけではありませんが、

震度7の前震には驚きました。


それに、熊本県益城町では、震度7の地震が立て続けに発生しましたが、

これも前例のないことです。


そもそも、震度7の地震は、これまで何度もあったわけではありません。

極めてまれなことが、同じ場所で続けて起こるなんて前代未聞です。


震度7の地震って、ほとんど聞いたことがありませんので、

改めて学習してみました。


教科書的に言うと、

『震度階とは、地震の揺れの大きさを階級制で表す指標で、

日本で独自に使用されているもの』で


『昭和231948)年628日の福井地震までは、

震度階の最大は6でしたが、福井地震で建物にものすごい被害が発生し、

震度6ではこの甚大な被害を表現できないことから、

新たに震度7が導入』されました。


そして、震度7と判定された最初の地震が

平成71995)年117日の阪神・淡路大震災です。


その後、震度階を計測する地震計が日本各地に設置され、

その地震計で、震度7が観測された最初の地震が

平成16(2004)1023日の新潟県中越地震


平成23(2011)311日の三陸沖地震が2度目、

3度目が今回の熊本地震というわけです。


ところで、震度7の地震によって

建物はどの程度の被害をこうむるのでしょう。


昭和24年に制定された震度7(激震)では

『家屋の30%以上が倒れ、山崩れや地割れができる』との簡単な表現でした。


その後改訂され、現在は1ランク下の震度6強ですら、


『木造:耐震性の低い住宅は倒壊するものが多い。

耐震性の高い住宅でも、壁や柱がかなり破損するものがある。

RC造:耐震性の低い建物は倒壊するものがある。

耐震性の高い建物でも、壁や柱が破壊するものがかなりある』とされており、


『震度7だと、耐震性の高い住宅・建物でも、傾いたり、

大きく破壊されるものがある』、とされています。


テレビで見る

震度7の益城町などの建物被害は、まさにこの表現のとおりです。


最近は耐震診断や耐震補強に、

補助金も出るようになりましたから、ぜひそれらを活用して

自宅の安全性向上を図りたいものです。


それがすぐにできないのであれば、

少なくとも倒れやすい家具や

下敷きになって命を落とす恐れのある家具は、

寝室には置かないようにしたいものです。





















ハザードマップ

 

最近は市役所のロビーに、水害や地震の時に、

どこの地区にどのような被害が及ぶ恐れがあるのかを示す

ハザードマップが置かれており、

市民は自由に閲覧し、持ち帰ることができるようになりました。

 

現在は当たり前になりましたが、

一昔前には、そうではありませんでした。

 

阪神・淡路大震災の後、

震災を教訓として様々な提言がなされました。

 

その一つにハザードマップの公表もありました。

断層に近いとか、地盤が悪いとかで、

大きな被害が発生する恐れのあるところを

市民に知らせるべきだという意見です。

 

ところが、そんなことを発表すると地価が下がる、

下がった地価の補償を誰がするのか。

 

どの程度の危険性があるのか、はっきりしないのに、

無責任に公表はできない等の

反対意見が行政サイドの主流でした。

 

地価が下がれば、条件の悪い危険な土地を買う人は、

安く買った分だけ自己責任で対策を講じるべき

との反論もしましたが、

すぐにはハザードマップの公表には至りませんでした。

 

公共事業の整備、特に環境問題や防災をテーマに仕事をしていた私は、

ハザードマップを公表してしかるべき対策を講じるべきだ

との立場でしたので、その後、

世の中が公表の方向に進んだことをうれしく思っています。

 

誤った情報でいたずらに危機感をあおるのでなく、

現時点で知り得る限りの情報を

正しく市民のみなさんにお伝えして、

みなさんの安全・安心な生活維持に

役立っていただくべきだろうと思います。

 

市民のみなさんも、

そうした行政サイドの公開情報に日頃から関心を持って、

出来る範囲で自助努力を重ね、

自分と自分の家族は自分で守ることも必要でしょう。