さてさてと、「ザリガニの鳴くところ」読んだので感想書きに来ました。

 

ただね、ここ文学トピなんじゃけど、こういったもの書くと、誰も来なかったりするんじゃよね。

まあ、いつだってひとクラス分くらいの人しか来てないので、そんなの気にしなくても良いのかもしんないんじゃけどね。

でも、気になるじゃんね(笑)

寂しいし。(=_=)

 

 

まずはじゃ、このお話をする前に。

ちくわは今日(8日)ちょいと小倉まで行ってきました。お休みだったので「あるあるシティ」でやってる「森薫 大乙嫁語り展」観に行って来たのでしたがね。

知らない人も多いと思うのだけど、この森薫さんという人はじゃね、漫画家に成るべくしてなったというか、同人からの拾い上げらしいんじゃけど、編集者の目のつけどころが凄かったんじゃろうね。他の職業で食べて行ける気がしない。そういった類の漫画家さんなのでした。

 

自分の好きなモノに全力投球して、それらが読者に受け入れられているという、とっても幸運な作家さんなんじゃよ。

いいよねー、そういうのって滅多にないんじゃないかな。

そんで森さんが好きすぎた題材はというと「メイド」じゃ。

19世紀の英国のメイドさんを描いた「エマ」は、もうね、完全に趣味の世界で、その入り込みようはマジで常軌を逸していてやね、編集さんのあいだでも「メイドの人」って言われてたらしい。冥途の人ではないので間違えないようにな。(間違わないって)

メイドさんというと例のモエモエキュン♪ を想像しちゃう人も居るかもだけど、この時代のメイドさんというのは地位的にもあまり高くなくて、けれど少なかった女性の仕事としてはかなりまっとうな物だったようじゃ。そこいらが読んでて楽しい。

 

「エマ」という物語の簡単なあらすじ。

両親を亡くし漁村で暮らす叔父の家に引き取られたエマは、貝を売りに行く途中で人攫いにさらわれ、娼館に売られる寸前に逃げ出す。日銭稼ぎの花売り娘などを始めるのだが、上流家庭の家庭教師を辞めたばかりのケリーに見いだされ、メイドとしての教育を施される。

エマは真面目で聡明であったので、いろいろなことを学ぶうちにその知識と才覚を見抜く人々が現れ、メイドとして働きだすのだったが、有力な貿易商人の息子ウイリアムに見初められ、互いに惹かれ合うのであった。しかし、ふたりの身分の違いからエマは身を引いてロンドンから逃げ出してしまうのだった。

 

まあ、こんなじゃな、誰が読むん? こんなの?ってお話なのじゃ。まるでなんとかロマンス文庫みたいじゃろ?  しかし、ちくわはけっこうちゃんと読んでじゃな、密かにファンだったというわけじゃ。すごい応援したくなるわけよ、このエマちゃんがじゃな。

身分のの差とかそんなのどうにでもなるから、いいからウイリアムのとこに行けよ早く、この分からず屋あ。( ノД`) みたいな感じじゃ。

 

その後、二十世紀初めの中東の年齢差婚を描いた「乙嫁物語」が称賛を浴び、さらに国際的な賞も獲り、現在も書き続けてるのでした。

しかしじゃな、誰が中東の嫁さんの話を読むん? そんな面白そうにない話。ねえ。

 

ええ、ちくわが読みます。(笑)

 

もうね、ますますファンになってるのでしたよ。とにかく書き込みが凄すぎて、漫画って呼んでいいのかしらんって感じじゃ。どうかしたら一枚の絵画じゃよ、ええ、とにかくすごいのじゃ。惚れ惚れしちゃう。

 

そおいうわけでやね、この展示会も良くてまじで充実したお休みになりました。焼けちゃった鳥町食堂街も見てきたざんす。

その後「鉄なべ」で昼間っから餃子にビールで良い気持ちになったす。ほんと楽しかった。良いお休みでした。

 

いや、楽しかったじゃないでしょ。

「ザリガニ」の話はどうなってんのよう。

 

そうだった。(ヲイ)

 

いや、実は森薫先生のお話もこれにちゃんと繋がっててね、なのでいまからお話していきまんがな。あわてないあわてない、ひとやすみひとやすみ、なのじゃ。(これの意味もわからなくなるのかなあ、若い世代)

 

ザリガニの鳴くところ、のざっくりしたあらすじ。

 

この地でも有力な一族の息子、チェイスアンドリュースが死体で見つかる。

 

カイアは湿地に住まいがあるクラーク家の一番下の女の子なのだが、父親は傷痍軍人でその恩給で暮らしているのだけど、飲むと暴力をふるい暴れるために、とうとう奥さんはカイアを残したまま家を出て行ってしまう。他の兄妹も父親に愛想をつかして出て行ってしまうので、カイアは一人きりで父親と暮らすしかなくなる。

料理も見様見真似で何とか切り盛りしていきます、父さんも少しだけ優しくなって、一緒に釣りに出かけたりしてくれるようになります。しかし出て行った母さんから手紙が届き、それを読んだ父さんは手紙を燃やして、元のような飲んだくれに戻ってしまいます。そして出て行ったきり戻ってくることはありませんでした。

恩給も当然途絶えて、カイアは生きるためにどうすればいいのか、そこから考えねばなりません。ムール貝を朝方に掘って、それを持って行くことで舟の燃料と幾ばくかのお金を手にすることが出来ました。湿地の少女、彼女を見る目はいつも冷たく偏見なしで接する人は少ないのですが、その中でもほんの一握りの優しい人たちによって彼女の生活はなんとか息をつくことができました。そんな中、兄の友人だというテイトに出会い、彼から文字を習い教科書を貰い、湿地の娘は徐々に教養を身に着けていくのですが、テイトは大学に進むことになり、必ず会いに来るからという言葉とは裏腹に、二度と現れないのでした。

 

うわ、長いわ。まあね、そんなでカイアは自分からみんな離れて行ってしまう、という悲しみに陥って、当地のプレイボーイ、チェイスアンドリュースの甘言に騙され、そして付き合い始めるがチェイスに結婚する意志など無く、カイアは捨てられてしまうのでした。

ということで、死んだチェイスの件でカイアに殺人の嫌疑が掛かり裁判が行われる。

 

はあはあ、まあ、ざっとこんなお話ですかね。

ちくわはここに出てくる「湿地」というものに理解が薄くて、もちろん日本とアメリカのそれとはまた違うにはちがいないんじゃけど、とにかくかなりあいまいな感じで読まなきゃならなかったす。釧路湿原くらいかしらね、大きな湿原って。

水路が迷路のように入り組んでて、陸地もあるんだけれど全部が繋がってるわけでは無くて、それらが膨大な面積で存在する感じはイメージしにくかった。(妻は有明海(笑)をイメージしてたらしいぞ)←あそこは干潟なんだよなあ。

なんにしても役立たずな荒れ地扱いで、かなりの地が埋め立てられてしまってるんだけど、ここって生命のゆりかごでもあるんじゃよね。作者のオーエンズさんは湿地の生物に関する研究者でその辺が異様に詳しい、初めて書いた小説がこれらしいぞ。

 

それで、感想なんだけどね。まあ、本当に読み易いお話でじゃね、600ページくらいあるのに二日くらいで読んじゃった。カイアの生きる姿に共感し、人々の差別を憎み、正しい道を進むときに応援し励まし、初めて心を開いたテイトと上手く行くことを願い、チェイスが近づいた時にこいつは止めとけなどとハラハラしじゃな。

つまり、主人公に寄り添いながら彼女の人生を共に生きる感じの読書であったりするわけじゃ。

まだ見ぬ湿地に生きる強かさや、そこに生きる生物や自然が織りなす美しさや厳しさを、共に味わい共感していく物語。

とても分厚くしかも細かな筆致は学ぶ点も多かったす。

 

けれど読後感はもうひとつでした。(まあ、個人の感想じゃからな)

ネタバレになるので書けないのじゃけれど、こうする必要はあったんかなあってちょっと思っちゃったよ。

先に出した「エマ」ではメガネ+美人+無口+照れ屋という森先生曰く最強の要素を持ったエマに対し、共感し、幸せを願い、それとともに読者も歩んでいくわけでじゃな、カイアの場合とかなり似ているわけじゃ。(なんとなくなんだけど設定も似てるよね、カイアの方がより悲惨なんだけど)

ただし、エマは優等生的な行動を取り続ける、絶対にそれを崩さないので、こちらも全てを受け入れてある程度の行動原則の枠内で見ることが出来るんじゃな。

ずっと応援していたあの娘がシアワセになる、それが見たいと思うわけじゃ。

そういう意味ではザリガニはすごく良く似た構成じゃ。

しかるに、こちらはミステリー要素が入ってくるために、なんだかそう一筋縄ではいかないのじゃったよ。

 

関係ないけれど、ちくわはミステリーがどうにもつまらない。ここミステリー好きも多いので反感買うかもだけど。

いえ、若いころはけっこう読んだし感心したりもしたんだけど、なんかこう動機だとかで躓くことが増えて、あんまり読まなくなってしまいました。

あれはミステリーであるための必然なんだけど、そこが気になっちゃうというのは、割と致命的ですよね。

まあ、ザリガニではここのとこのミステリーに対する個人的な引っかかりが減点になっちゃった感じかな。

ううん、それ要ったんかなあ、なんかずっと知らないでおきたかったよって、そういうワガママなとこが出ちゃった(笑)

当然じゃけれど、こうした方がいいに決まってるんじゃけどね。

 

うちの妻はカイアという名前で読んでる間、川崎麻世の奥さんの顔が出てきて困ったいうてました。あっちはカイヤだけどな。

それはさぞ困ったじゃろうな。(* ̄▽ ̄)フフフッ♪

 

そんで、どうもザリガニにはロクデナシの男しか出て来んような気がする。いや、良い人も出てくるんじゃけど、カイアに関わる男はみんな最低じゃないか、そうそう親父もそうだしな。というかテイトがクズ過ぎる! お前が約束を破らなかったらこうはなってないんだぞ、わかってんだろうなくらあ! くらい言いたくなったす。

作者の男性観ってちょっと厳し過ぎかも。

まあ、なんやかんや書いたけど、今年初の読書としては最高に面白かったね。

おすすめしますじゃ。