名作#4 “父が腹の底から笑うワンシーンだけで胸が一杯” 『リトル・ダンサー』
『リトル・ダンサー』
・製作 2000年・イギリス
・出演 ジェイミー・ビル ゲアリー・ルイス
あらすじ
1984年、ストライキに揺れるイングランド北部の炭坑町。
母親を亡くし、父(ゲアリー・ルイス)も
兄のトニー(ジェイミー・ドラヴェン)も炭坑労働者の
ビリー(ジェイミー・ベル)は、ボクシングを習ってるが、
試合に負けてばかりの11歳。
そんな時、偶然目にしたバレエ教室に強く惹かれ、
女の子たちに混じって練習するうちに夢中になっていく。
ウィルキンソン先生(ジュリー・ウォルターズ)は
どんどん上達するビリーに自分が
果たせなかった夢を重ね合わせ、熱心に彼を教える。
だが、家族の金をバレエに使っていたことがバレてしまい、
父は激怒。バレエ教室を辞めさせられてしまう。
ビリーは悔しさをぶつけるように、一人で踊っていた。
だが、ストライキが長引き町中が暗く沈んでいる
クリスマスの夜、親友マイケル(ステュアート・ウェルズ)の
前で踊るビリーの姿を見て、息子の素晴らしい才能に
初めて気づいた父は、彼をロンドンの名門、
ロイヤル・バレエ学校に入学させる費用を稼ぐため、
スト破りを決意する。
それは仲間たちへの裏切り行為であった。
だがスト破りの労働者を乗せたバスの中に
父を見つけたトニーが、バスを追いかけて必死に止め、
父は泣き崩れる。
その事情を知った仲間たちがカンパしてくれ、
ビリーは学校に行くことができた。
そして15年後・・・
☆ワタクシ的見所
長引くストライキ、うらびれた街に暮らす貧しい一家、
主人公を取り巻く背景は、とてつもなく暗いです。
やりたくないボクシングをやらされ、
家に帰れば、ストライキにイライラする父・・・
そんな中、彼はバレエに出会い、のめり込み、
それをたった一つのよりどころのようにしていました。
しかし、それすら取り上げられてしまう・・・
前半は
『なんでだよ!!くそ親父』
みたいな感じで観てました。
しかし、ビリーの踊りを観てから、父はその才能に気付き、
ビリーを学校に行かせる決意をします。
そのシーン――――
友達とふざけて踊っている所を、偶然父に見つかり、
バツの悪そうなビリー・・・
しかし、次の瞬間、ビリーはセキを切ったように、
父の前で踊りまくります。
その間、ビリーの息遣いと、音楽しか音がありません。
歓声もなければ、拍手もない・・・
ひたすら、父に見せつけるように踊り続けます。
「俺はこんなにバレエが好きなんだ」
と無言で父に訴えるように。
そして踊り終わると、父は何も言わずにその場を
離れるのです。
父はスト破りを決行。
スト破りのバスに乗る父に気付き、
「何でだよ」と問い詰めるトニーに対し、
泣き崩れる父・・・
仲間を裏切っても、ビリーのために・・・
その気持ちが痛いほど伝わってきます。
冒頭から思い通りにいかないことばかりで、
イライラしている父が初めて見せる喜怒哀楽。
そして、なんと言っても大好きなシーンが
本当はこんなにビリーを愛してたんだなあ―
っていうのがすごく伝わる、
私の中で1,2を争う名シーンです。
父が『唯一』心底楽しそうに笑います。
笑いまくります。
確かに、ビリーのためという気持からでた
父の行動ですが、それだけではないように思います。
仕事がうまくいかずイラつく父にとって、
ビリーが『希望』になっていったんだと思うんです。
仕事につまずき、うまくいかない日々、
更に遠い学校にビリーをやる不安、さみしさ、
仲間を裏切った後ろめたさ・・・
その全てを背負っても、自分の果たせなかった『希望』を
ウィルキンソン先生と同じように
ビリーに託したかったんじゃないでしょうか。
そして、不遇な自分と同じ道は
歩んで欲しくないという気持ちも・・・
15年後、ビリーの舞台を見るために、
劇場を訪れる父とトニー。
慣れない場所に、普段着慣れない服(多分一張羅)
を着て、客席に着く父。
自分には場違いな場所に、オロオロとする父。
それでも、息子見たさにここまで来た父。
それを思うだけで、父のその行動が愛おしく感じます。
そして、舞台が始まり、圧倒される父の目の前に、
ビリーが登場し―――
父は堪えられない涙をため、それでも目を見開いて
舞台を見続けます。
その視線の先には、あのクリスマスの夜、
「これでもか」と踊り続けたビリーが映っていたんでは
ないでしょうか・・・




