朝、駅のエスカレーターの左側に立っていると
その右を追い抜いていく男の人がいた。
颯爽と…いや、なんとなくイキって。
イキるというのは、粋がることを揶揄する関西の言葉です。
その人の左手にはセカンドバッグ。
セカンドバッグ…。
急に昔の恋人のことを思い出した。
四半世紀も前のこと。
全ては時効となるでしょう。
割と、いやかなり年上の人と付き合っていたことがある。
ありがちな学生バイトと社員という間柄。
その彼は、セカンドバッグを持っていた。
30そこそこだった人を、わたしはかなりのおじさんだと思っていたから、なんら不思議に思わなかった。
そして別れ。
社会人になったわたしが、大人だと思っていた人を、
そう思えなくなったことが原因だと思っていた。
環境の変化が原因だと。
今朝までは。
セカンドバッグを目にした時、気付いてしまった。
元来、わたしはセカンドバッグを持つ男の人が苦手だ。
どちらかというと、トートバッグを持つ人に好感を持つ。
当時は、おじさんだからセカンドバッグを持つのだと思い込んでいた。
ちょっと待て!
30そこそこは、おじさんじゃない!
年を経て思う。
セカンドバッグに違和感を持ちつつも、つっこめなかったことに全ての原因があるんじゃないかと。
今となっては、なぜ好きになったのかも分からない。
ひどい女である。
ただ、それはそれで悪くはなかったと、
埃の積もった思い出を、半径100mの恋だったなと振り返るのです。