WBC準決勝 山本監督「行けたら行け・ダブルスチール」の訳 | 元日本代表のテレビ・新聞で言わない野球評論

WBC準決勝 山本監督「行けたら行け・ダブルスチール」の訳

WBC準決勝 山本監督「行けたら行け・ダブルスチール」の訳



WBC準決勝「ダブルスチール」の解説


いろいろと8回のダブルスチールについて賛否両論されていますが

あのダブルスチールについて、自分なりに納得、理解した内容を記載します。


 野球は、状況により作戦が変わってきます

大きくは、点差、イニング、アウトカウントにより作戦が決まるのはご存知かと思います。


さてWBC準決勝の場面を思い出してみましょう


7回まで3点差の1点を返して1-3の2点差

イニングは8回

アウトカウントはワンアウト

ランナーは、1塁2塁でした。

打者は4番阿部選手


さて日本ベンチの考えは?。



終盤8回で2点差、残すは最終回の9回

もう回がなく、このチャンスで同点、もしくは一気に逆転といきたいところです


日本としては最低でもこの8回にあと1点をとらなければ負ける勝負どころと

考えたのでしょう


その最低でもあと1点の意味は


残す9回最終回を1点差でむかえられることにより

まだ勝負は決まらないからです。


その最低でもあと1点を取る作戦として

「ダブルスチール」を選択したのです。


ダブルスチールが成功した場合は

ワンアウト2塁、3塁となり


4番阿部選手なら、ヒットで良くて同点まで


犠牲フライで1点、または

引っ張って内野ゴロの間に1点

もしくは、スクイズまで。

最低でも1点を取る確立が高まります


ではこの場面で、どうしてダブルスチールを選択したといいますと

ゲーム終了後の山本監督のコメントは以下のとおりでした


山本監督・「あの投手(ロメロ)の動きが大きいというのは
ビデオで見てわかっていましたし、そういうチャンスがあれば
行くということはミーティングで話していました」


こうコメントしています。


これは日本代表のスコアラーからの情報でしょう。


そしてこの情報を元に

勝負どころに選択した作戦はダブルスチールだったのです


そのスチールについてですが

スチール(盗塁)には「次のボールを投げる時に必ずスタートを切る」サインと

「行けたら行け」タイミングを盗んだら行けというサインがあります


山本監督はじめ日本ベンチは、「行けたら行け」のサインを選択しました


この「行けたら行け」についてウェブ上でもテレビでも無責任だとか

都合のいいサインだとかいろいろと評論されていますが


ここは、「行けたら行け」のサインじゃないとダメなのです。


その理由は以下のとおりです


前に記載したとおり

この8回は最低でも1点を取らないと負けの場面です。


走るなら絶対ワンアウト2塁、3塁にしなければいけない状況。


「次のボールを投げる時に走れ」のサインだと

井端選手は、相手投手を100%のタイミングで盗めなくても

スタートしないといけないのでこのサインではリスクがありすぎます。

絶対3塁でアウトになるタイミングで走ってはいけないのです。


ですから投手とのタイミングを計り

100%、いや120%成功するタイミングで2塁走者である

井端選手がスタートしなければ、行かなくてもいい

「行けたら行け」のサインじゃないとダメなのです。


無責任でもなんにもありません。


その勝負の分かれ目の結果が、井端選手がタイミングを盗めず、途中でやめて

一塁ランナーの内川選手が飛び出したというかたちで失敗という

結果になったわけですが


なぜ、内川選手が飛び出したのでしょうか。


それは以下のとおりです


ダブルスチールというのは、基本は前の2塁ランナーがスタートをしたら

1塁ランナーはスタートを切りますので、通常のスチールより

1塁ランナーは少しタイミングが遅くなります。


内川選手もプロですからそんなことは承知しています。


しかし、この場面はそれではダメなのです


あの場面内川選手には、2塁ランナーよりプレッシャーがかかっていました。


絶対ワンアウト2塁、3塁にしなければいけないことです。


ツーアウト3塁では絶対ダメなのです。


通常のダブルスチールをすれば、捕手は3塁に送球して


1塁ランナーは少しタイミングが遅れても2塁へすすめますが


ここは違います。


相手の捕手は強肩


同点のランナーは内川選手です


「行けたら行け」のサインですから


井端選手は完全に盗んだスタートを切ります


それを見た捕手は


間に合わない3塁へ投げるより


同点のランナーを2塁で刺すほうを選択します


通常のダブルスチールでスタートをした場合では

余裕で2塁でアウトにされてしまいます。


内川選手は、それがプレッシャーになっていました


当然絶対に2塁、3塁にしなければいけない場面であることはわかっていますから

通常のダブルスチールの2塁ランナーのスタートを見て(一瞬遅れる)ではなく

できるだけ早くスタートを切らないといけない状況になっていましたので


井端選手の動きを見て、行くしかなかったのです。


ですから、内川選手は飛び出してしまったように見えますが

あのタイミングでスタートしないといけなかったのです。


敗戦後の選手は、多くは語りませんので

このあたりのコメントは出ていませんが


私はこのようにあの場面を理解しています。


勝負どころであり、さまざまなリスクのある場面でしたが

準決勝の勝負の別れ目、のワンアウト1塁、2塁で日本が出した

ダブルスチールの選択は、私は良かったと思います。


結果がでてからいろいろという人はいますが

出した作戦が失敗しただけだと思います。


やっぱり野球は面白いですね。




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