ナース

 

 23 . バス停
 

 外に出た。

 夜の街。

 すべてが、輝いていた。

 

 すぐ隣に、五十嵐さん。

 

 瞬く、ネオン。
 光あふれる、ショーウィンドー。
 その中に、一つ一つ小世界が。

 すべてが、まぶしかった。


 五十嵐さん、ぼくの方に手を。

 「 手をつないで帰りましょうか?」


 「 はい!」
 
 

 いきなり手を握ったのはもう許した。

 手をつなぐことで、それを意思表示?

 酷い侮辱的行為をしたぼく。

 なのに、そこまで気を遣ってくれる。

 

 街行く人達に叫びたかった。

 

 「 見て、見て!

 こんなにも美しく、優しいスゴイ人。

 ぼくは、手をつないでますよ。」

 

 「 あっ」


 と、五十嵐さん。


 ちょうど、バス通りに出た時。
 目の前を、五十嵐さんが乗るバスが。


 10メートル先のバス停、たくさんの人。
 何人が乗るにせよ、出発まで時間が。

 「 走れば、間に合うよ!」


 「 いいの、次のバスにする。」

 

 「 でも次の直通バスは1時間後って。」


 「 いいの、本当に、だいじょうぶ。」

 「 7時30分のバスで帰る必要が…… 」


 五十嵐さん、Rで申し訳なさそうに。
 大事な用があったに違いない。

 

 本当にいいのか ?
 でも、正直、大喜び。

 もっと、いっしょにいたかったので。 

 用事よりぼくを選んでくれたのだし。 

 

 ぼくらは、バス停奥のベンチに座った。

 冬の夜、当然寒くないはずがない。

 他の喫茶店とかに行くこともできた。

 が、なんとなく座ってしまったのだ。

 暗くて周囲に誰もいないのが好くて。

 

 五十嵐さん、メチャクチャよく笑う。
 ジョークとか特に言ってないのに。

 Rにいたときより、ハイテンション。

 その点は、ぼくも負けてないが。


 座ってからも、手はずっと握ったまま。
 どこからが自分の手かわからないほど。

 残った手が、寒そうだし、かわいそう。

 ぼくは、両手で握ることに。
 すぐ、五十嵐さんも残りの手を重ね。


 肩だけでなく、頭も密着。
 このまま、冬の夜空に舞い上がりそう。

 一瞬、目の前が、暗くなった。
 直前を、人が横ぎったのだ。
 顔を上げた。

 母上様 !


 まさに、目が飛び出そうに。
 が、母上はぼくに気づかず通過。

 下を向いてたのが幸いしたよう。

 

 危ない、危ない。 

 この時間に、何の用 ?

 ここが、家から徒歩5分を忘れてた。

 「 知ってる人 ?」

 

 「 うん、まあ。 」 


 「 あの、背の高いきれいな人 ?」


 「あ、 違う、違う。」 

 
 「 ドラマとかだと、こういう時……

 カノジョが通ったりするのよね。」


 「 そういうの、ドラマだけだよ。」 


 「『 どのもこのもないですよ。

 ぼくにカノジョとか一人もいません』

 は信じていいのね。」


 五十嵐さん、ぼくの口マネを。


 「 もちろん。」


 ホントにそうなので、キッパリ。

 カノジョはいないし、いたこともない。

 

 「 五十嵐さんこそ信じていいのかな。

 今現在、彼氏がいないのは ?」 

 

 「今現在」、を強調。 

 少なくとも今は、絶対聞きたくない。

 過去に「不倫」とかあったとしても。

 

 「その質問、どう答えていいか微妙。」

 

 まさか、噂の不倫相手と今でも ?

 

 「 だって、今現在、私の隣にいる人。
 彼氏なの、彼氏じゃないの ?」

 

 良かった、そういう意味か。

 

 「 それは、五十嵐さんの気持ち次第。」
 

 「 私は決めたから、後はKさん次第。」
 

 「 ぼくの気持ちはさっき言った通り。」

 

 五十嵐さん、例のいたずらっぽい表情。


 「 もう一度、ちゃんと聞きたいな。
 私が 『特別』のあたりから。」

 

 「 それって、ほとんどイジメだよね ?」
 

 「 どうして ?

 あれは、口から出任せだったの ?」

 

 「 それは違う、本当にそう思ってる。」

 

 「 じゃ、言えるわよね。
 もう一度ちゃんと私の目を見て言って。」

 

 「 わかった、言うよ。 

 ぼくにとって五十嵐さんは特別な存在。

 心から尊敬してるし、崇拝してます。」

 「崇拝とかはやめて、照れるから。」

 「よく言うよ、わざわざ言わせて。」

 

 一応、スネるふりをしておいた。

 

 「ぼくは言ったから五十嵐さんも。
 『 前から鼻をつまみたかった 』
 とかじゃ、普通はわからないよ。
 もう一度、ぼくにも解る言葉で。
 ズバリ言ってほしい。」

 

 「 それは、さすがにちょっと 。」

 

 「 あ ~、なんでだよ ?」

 

 「 だって私、シャイな女の子だもの。」

 

 「うるシャイ。」


 そう言って、軽く鼻をつまんでやった。
 さっきの、仕返し。

 「 あ ~、なんでだよ ?」

 

 ぼくの口マネ、鼻をつまみ返してきた。

 二人、鼻つまみ攻防、じゃれ合う事に。


 だれが来るかわからぬ繁華街のバス停。

 完全、バカップル ?

 

 あの頃はすべてが……

 

 (続き「24.お人が悪い」明日公開)

 

 

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 地 球 一 人 旅 ( 改訂版 )

 

 第一部 しげしの道

 

 A. 天使と悪魔
 

 B. 化け物屋敷
 

 C. ぼくらのアイドル
 

 D. スターダストメモリー
 

 E. 10月のクリスマス
 

 F. 未確認生命体
 

 G. あの頃はすべてが (公開中)

 

 第二部 しげしの旅

 

 1. アジアの純真
 

 2. あの頃のあの国
 

 3. 隣のスーパーレディ
 

 4. ローマンチック
 

 5. 恐るべき姉妹
 

 6. クリーブフィルの妖精
 

 7. 奇跡の雪

 

 第三部 しげしの話(近日公開)

 (1)裁判官に怒鳴られ脅された体験