怪しい補助金は他にも 検察よ、矛先は不正入学局長だけか
巨悪は誰か

 文科省の局長が、私立大学支援事業の対象校に選定されることの見返りに自分の子を入試で合格させてもらった受託収賄の疑いで逮捕された件に驚き、怒りを感じた国民は多かったのではないか。といっても、それは事件の悪質性に関しての驚きではない。

 もちろん、文科省幹部が補助金をエサに不正入学を依頼するなんて言語道断。論外である。容疑が事実ならば逮捕・起訴されて当然だ。しかし、検察は他にもっとやるべき案件があるだろう。政権中枢には決して切り込まず、巨悪は眠らせたまま、ケチな不正入学に矛先を向けるのか。そういう驚きと怒りだ。

 東京地検特捜部の発表などによると、前科学技術・学術政策局長の佐野太容疑者は、官房長だった2017年5月、東京医科大から私大支援事業の対象校に選定するよう依頼を受けた。その見返りに、息子が今年2月に同大を受験した際、点数を加算して合格させてもらった疑いがある。

 東京医科大側は、トップの臼井正彦理事長が関係者を通じて便宜を図るよう依頼。鈴木衛学長も加わって、佐野容疑者の息子を不正に合格させるよう指示したとみられる。在宅での捜査が続いている理事長と学長は、事件への関与を認めているという。

 事件の舞台になったのは、文科省が16年度から開始した「私立大学研究ブランディング事業」という支援事業だ。独自の研究に取り組む私大に補助金を支給する。交付期間は3年間から5年間だ。

 東京医科大は17年度に応募のあった188校の中から選ばれた60校のうちの1校で、まずは1年分の補助金として3500万円の交付を受けている。

■東京医科大はダメで家計学園は2校も選定

「東京医科大はこの前年の16年度も応募したが、ダメだった。それで、文科省の偉い人に口利きしてもらおうと考えたのでしょう。決して許されることではありませんが、こんなケースは山ほどあるのではないか。安倍政権は政治主導の名のもとに、従来の仕組みやルールを無視して、親しい人や、自らの政治目的に共鳴する同志に便宜を図ってきた。行政のトップがそんな態度だから、役人も真似をする。行政私物化の表れです」(政治学者の五十嵐仁氏)

 実は、東京医科大が選ばれなかった16年度は、加計学園が運営する大学が「私立大学研究ブランディング事業」に選定されている。198校の応募があり、選定されたのはわずか40校。そのうち2校が加計学園系列だ。

 獣医学部新設で注目された岡山理科大は「恐竜研究の国際的な拠点形成」で認定。創立10周年記念行事に安倍首相が駆けつけて、加計理事長を「腹心の友」と呼んだことで知られる千葉科学大は「『大学発ブランド水産種』の生産」で選ばれた。同じ学校法人から複数選ばれたのは、加計学園だけだった。

 加計学園は14年度の文科省の「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業」の対象校にも選ばれている。申請があった237件から25件が選ばれ、その中に加計学園が運営する千葉科学大学と倉敷芸術科学大学の2件が入っているのだ。

 また、ほとんどの私学は国から私学助成金の交付を受けているが、17年度の交付額を見ると、東京医科大も加計学園も、大学の規模に比べて交付額が多いようにも見える。東京医科大の約23億円は助成金を交付された573大学の中で上から25番目の額だ。加計学園の岡山理科大は約10億円で、59番目の多さである。
官邸の犬に成り下がった(C)日刊ゲンダイ

局長はオトモダチではないから逮捕されたのか

そこに口利きや忖度はなかったのか。国民が疑念を抱くのは当然です。文科省の局長の口利きがすんなり通るのだから、官邸や首相の意向ならなおさらだと考える。同じ文科省の案件でいえば、加計学園は総理の威光なのか意向なのか、自治体に嘘をついて獣医学部新設にこぎ着け、100億円規模の補助金をだまし取った疑いが浮上しても特捜部は動かない。

 森友問題でも総理夫人との関係で国有地が8億円も値引きされた。それを隠すための公文書改ざんも明らかになったのに、誰もおとがめなしです。政権中枢に切り込まず、国民の信頼を失った検察が、誰でもいいからキャリア官僚を捕まえて名誉回復を図ろうとしたのが、今回の事件ではないか。

 文科省の局長が、たった3500万円の案件で逮捕されたのは、総理のオトモダチではなかったからと言うほかありません」(五十嵐仁氏=前出)

 下村元文科相の献金問題はウヤムヤにされてしまったが、この政権では学校がらみの怪しい話が多い。それは、あからさまに教育現場に国家権力が介入する政治姿勢と無関係ではないだろう。


 安倍政権は国立大に対し、文学・人文科学系学部を廃止して、実学重視に組織転換することを要請している。物事の本質を考えるようなインテリは要らない、企業が金儲けできる人材を育成しろということだ。

 一方で、軍事研究の助成費用は大幅アップ。軍事への応用が期待できる基礎研究を行う企業や大学に研究費を助成する防衛省の「安全保障技術研究推進制度」で、昨年度の予算は110億円と、前年度の6億円から18倍に増やした。

 しかも今年度から、経営が悪化して教育の質が低下している学校法人への私学助成金を大幅にカットする仕組みを導入。教育内容が評価された場合は、補助金をアップすることもあるという。

■補助金も犯罪も基準は権力者との距離

 教育内容の良し悪しなんて、誰がどう判断するのか。

 この少子化で、どこの私学も経営が厳しい。そこへ助成金というアメをぶらさげられ、補助金事業の対象は政権の胸ひとつで決まるとなれば、政府の方針に沿うような学部や研究に注力するようになる。権力者に取り入って口利きしてもらおうと考えるヤカラも出てくる。

幼稚園から日の丸、君が代で愛国心を植え付け、道徳の教科化で小中学校で国家主義的な思想を叩き込む。さらには大学教育の自主性を蹂躙して、安倍首相は教育現場への国家統制を強めている。

 森友学園の籠池前理事長が夢見た神道系で教育勅語を教える小学校は、首相の理想だったはずです。国会で『私の考え方に共鳴している』とまで言っていたのに、存在が邪魔になると大阪地検特捜部に身柄を拘束させ、300日も拘置所に閉じ込めてしまった。

 しかも、森友問題で公文書改ざんを不問に付した特捜部長は函館地検の検事正に栄転です。露骨な論功行賞で、検察官僚も官邸の言いなりなのです。そこに正義はありません。今回、文科省の局長が逮捕されたのも、何か裏があるのではないかと勘ぐってしまう。例えば、安倍首相の“腹心の記者”で準強姦もみ消し疑惑もある山口敬之氏が関わっていたスパコン詐欺事件で、助成金の闇を知っていたのか。

 あるいは、霞が関全体に対して、都合の悪い文書をこれ以上は出すなという脅しなのか。いずれにせよ、モリカケ問題と比べたら、あまりに小粒な事件でバランスを欠く。小悪で巨悪を隠そうとしているようにしか見えません」(政治評論家・本澤二郎氏)

 補助金の額も犯罪構成要件も、権力者のオトモダチかどうかで決まるとしたら、それはもう民主主義国家でも法治国家でもない。その片棒を検察組織が担いでいる醜悪。今回の事件で、どこからも「快哉」が聞こえてこないのは、検察が官邸の犬だということを自ら露呈しただけだからではないのか。