メタボラ 桐野夏生 | 国内航空券【チケットカフェ】社長のあれこれ

メタボラ 桐野夏生

大雨降ったらこんなに涼しくなるとは具合悪くなりそうだ。
時間かかったけど桐野夏生さんの「メタボラ」読破したので感想とか書いてみます。

破壊されつくした僕たちは、“自分殺し”の旅に出る。なぜ“僕”の記憶は失われたのか?世界から搾取され、漂流するしかない若者は、日々の記憶を塗りかえる。孤独な魂の冒険を描く、まったく新しいロードフィクション。(By amazon)

「よくある主人公が記憶喪失になり、記憶を取り戻すまでの話か・・・」
と、読む前には思わなくもなかったが、全然違った。
確かに主人公が記憶喪失になって記憶を取り戻す話ではあるけど、こんな話は読んだことがなかった。
こんな時代を生きているんだと思うと暗澹なる気分だが、面白く読めた。

若者にとって、この時代の閉塞感の原因であるあらゆる社会問題をもりこんでいる。
ワーキングプアー、派遣(請負)労働者問題、集団ネット自殺、沖縄基地問題、放浪二ート、セクシュアリティ、家庭内DV、親からのネグレクト etc...
ざっと思い付いただけでこれだけの問題が取り上げられている。
ちょっとあれもあれも盛り込みすぎな感じはしたが、話の幹となっているのはこの記憶喪失のワーキングプアーの若者の行く末はどうなる?というところ。

------------以下ちょっとネタばれしてると思います--------------

舞台は沖縄。
記憶喪失の青年ギンジ(アキンツがつけた名前)と宮古の能天気そうに見える青年アキンツが、行き当たりばったりではあるがなんとか社会の底辺でサバイブしているあたりは楽しく読めた。
後半のアキンツの転落ぶりには「やはり・・・」と思ってしまうのだが、ギンジが思い出した記憶がすざましすぎた。
ここで舞台は東京と柏崎に移るのだが、記憶を失う前のギンジ(本当の名前はユウタ)の生活はあまりにも悲惨すぎる。

柏崎の工場に請負労働者として働くのだが、請負業者はありとあらゆる手段を使って、若者たちから搾取するという平成蟹工船状態。
この部分がとてもリアルだった。
努力してもどうにもならない状況なんだけど、これが小説だけの話じゃない事でますます気分が重くなる。

救いも希望もないような結末なのはどうかな、と思った。
この若者の抱える問題がワーキングプアーだけじゃなくて、父親のDV、ネグレクトとかもあるから現実的には生きて行く事すら過酷だろうとは思うけど、小説だからほんの少しだけでも明るい兆しが見える感じでもいいのかな、と思ってしまったのは、多分私個人の趣向の問題だと思う。
でもすごく面白かった!

メタボラ(上) (朝日文庫) メタボラ(下) (朝日文庫)
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