安倍内閣は成長戦略として、「規制の緩和」とTPPによる「グローバル化(外需)」を目玉にしています。

日本経済は規制が厳し過ぎてイノベーションが起こらず、外需が猛烈に成長していて、日本人の賃金コストが低いならば、この方針は正しいでしょう。しかし、実際には、日本でイノベーションが起こらないのは「規制が原因」ではありません。外需(米欧中)は停滞していますし、日本人の賃金コストは高いです。

安倍内閣は、日本経済にイノベーションが足りない原因を誤って認識しているし、世界経済と日本が立たされた環境を全く理解していないと言わざるをえません。

日本でイノベーションが足りない原因は、筆者はむしろ「需要の不足」と「実質利子率の高止まり」にあると考えます。需要が伸びない国でいくら新商品を発売しても、どうせ売れません。また、日本経済はデフレでGDPデフレーターが極めて低い状況にあります。つまり、毎年売上高が減っていく状況ということです。こんな状況では、借金して設備投資するメリットがありませんよね?借金しても、デフレだからといって銀行は利子を減らしてくれません。一方で売上高(収入)は減ることから、実質金利(実質的な債務金額)は上昇してしまいます。

アメリカ・ヨーロッパ・中国の景気が停滞し、特に中国バブルが崩壊しそうで不安定な状況では、外需は期待できません。アベノミクスは、外需依存をキッパリとやめて、財政出動による内需重視に路線変更するべきです。

もちろん、筆者は「外需は全く必要ではない」と言いたいわけではありません。内需中心で経済成長した上で、外需もある程度は伸びたほうが良いと考えます。

しかし、円安誘導や、非正規雇用を活用した「自国を低コストにした」輸出成長には反対です。結局、それは中韓などとの価格(安売り)競争にすぎず、実に不毛な「底辺への競争」を招くだけだからです。

小泉内閣の時は、円安誘導と非正規の活用、正社員も賃金を抑制することで、「安売り」によって輸出を伸ばしました。結果として、内需は伸びず、デフレ脱却にも失敗しました。当時はアメリカが抜群に景気が良かったにもかかわらず、です。

もし輸出を伸ばすにしても、為替レートや「人件費の高低」に左右されない成長を目指すべきです。為替レートは永遠に円安を維持することは絶対に不可能です。アメリカの量的緩和や金利、中国経済の状況、日本国内での危機発生(震災など)によって、為替レートは変動します。予測が非常に難しいし、コントロールも難しいのが現状です。リーマンショックや震災の後、一気に円高になったのは記憶に新しいです。また、自国民の賃金を抑制して低コストにした場合は、内需が伸びなくなります。

筆者は、①内需を拡大する⇒②外需へつなげる・・・というタイプの外需成長を提唱したいと思います。

例えば、自民党が提唱した「国土強靱化」によって、国内のインフラ技術を高めます。日本は世界で一番、地震が多い「災害大国」です。だから、防災関連のインフラ技術は非常に高いし、伸びしろもあります。

国内で国土強靱化によってインフラ技術を伸ばし、それが結果的に、海外に売れることになります。ギリシャやニュージーランドなどでも地震は発生しており、十分に海外への商機があると考えられます。原発に関しては賛否両論があると思いますが、日本が原発を輸出できるのも、国内での実績があるからです。実績が無いインフラは、海外に売れません。

他にも、アニメや漫画、テレビゲームといったコンテンツも「内需⇒外需」型の成長パターンだと思います。日本人は、高度成長の結果、生活に余裕ができました。だから、娯楽にお金と時間を使うようになりました。そのため、日本国内には膨大なコンテンツが生まれました。海外にも売れるほど、レベルが高いコンテンツです。

フランスのヴィトンや、イタリアのアパレル、日本のアニメ・ゲームなど「娯楽品・贅沢品」は、中国など途上国と競合しにくい特質があります。途上国よりも、先進国に比較優位があるのです。

そのため、内需が成長して賃金・金利・為替レートなどが高騰しても、中韓などに需要を奪われない(輸入が増えない)メリットがあります。

贅沢品や娯楽品は、日本人が十分に遊び、楽しみ、余裕を持たないことには、生みだすことができません。遊ぶ暇も無いし、節約して必需品しか買わないのであれば、贅沢品や娯楽品のレベルは上がりません。結果として、世界にも売れなくなります。

日本人は、世界で一番働き過ぎ(激務)で、世界で一番通勤に時間をかけて、世界で一番節約して貯金して、世界で一番デフレなわけです。

こうした状況では、世界に通用する娯楽・贅沢品を生みだすポテンシャルが損なわれることになるでしょう。

安倍内閣の成長戦略は「落第」であり、もし筆者が成長戦略を立案するならば、以下のような案を提案します。

国民に「政府発行商品券」をバラマキし、内需を拡大してデフレ脱却し、贅沢や娯楽を存分に満喫させて、中韓に負けない世界トップレベルの「贅沢品・娯楽品・ブランド品」による経済成長を目指すのです。商品券に期限をつければ、必ず使用されます。お金と違って、貯金されないので、必ず内需が増えてデフレ脱却できます。券の金額を「1枚10万円」など高額にして「お釣り無し」とすれば、必ず国民は贅沢品・ブランド品を購入するでしょう。

デフレ脱却(不況脱出)と成長戦略を両立させることが可能になるのです。