昨年末だったか、短期間のドラマで
『自転しながら公転する』というのを観て
興味を持った作家、山本文緒さん。
他にどんな本を出しているのかなと
図書館で見つけた本なので
サブタイトルにある
『120日以上生きなくちゃ日記』が
何を意味するのかは
読み進めて初めて知りました。
そして、
山本文緒さんはお亡くなりになった
ということも
世間知らずで恐縮ですが
この本を通じて初めて知ったことでした。
この本は余命宣告を受けた著者が
緩和ケアを受けながら
その後の生活をどんなことを
考え感じながら過ごされていたのか
がつづられた日記をまとめたものです。
その時のリアルな気持ちが書かれていると
なると、ネガティブなことや
詳細な闘病内容などにも触れられて
いるのかと思いきや
最後の最後まで優しく、あったかく、
おだやかな文章がつづられていて
山本さんのお人柄が素敵な方
だったのだろうなということを
感じました。
でもそれはつらかったことがなかった
からではなく、
体調の一進一退を感じながらも
残された時間をどのように生きたいか
が貫けた方だったから
そして、作家としてこの本を通じて
お別れの挨拶にしたいという、
もう一冊「書きたい」という強い
気持ちもあったからだと思います。
作家さんはこういうときでもなお
本が支えとなり、
書く、読む両方を通じて
生きる意欲、生きる楽しみ、豊かさ
につなげる職業なのだなということも
感じました。
本の持つ力の強さというのでしょうか。
それだけに、実際読まれた本のタイトルは
とても気になっており、
次読みたい本としてメモをしたくらいです。
同時に
言葉の選び方もとても素敵で
ウイットに富んだ表現もあったり
この本を読み進めるということは
山本さんの命の終わりに近づいている
はずなのに、
悲壮感まで感じさせなかった
すごさというのも読み終えた
感想としてあります。
”明日また書けましたら、明日”
と結ばれている最後数日の日記は
死への覚悟と生きる希望といろんなことを
受け取らせてもらいました。
闘病生活を逃病生活、と表現されていましたが
いろんなことを受け入れていらっしゃったからこそ
病と闘うのではなく、
逃げるというより抗わず、”逃がしながら”
ご主人と大切な時間を過ごされていた山本さん。
むしろ冷静に向き合ってこられたの
ではないでしょうか。
私自身の命の終わりを考えるときに
この本のことを思い出すと思います。
少しでも山本さんのように
最後まで穏やかに、感謝の気持ちを持って
終わり方を選択できたらいいなと
思いました。