モデル系公務員あおいが仮面妻ひろみとまさかの顏馴染み同士で、しかも佐野っちなる横浜の男性ともつながりがあったとは、まさに青天の霹靂とはこのことだと思い知った。
この三人は僕がひろみと付き合う以前に、学大のスナックパブの常連客として知り合っていたのだ。
あおいにとっても意外な真相が発覚して驚いたことだとは思うが、とりあえず待たせてある連れの女性達のテーブルに戻って、ひろみの来るのを待つようだ。

佐野っちなる彼が僕に話しかけてくる。
「あおいもひろみも学大の店では、男性客連中にはピカ一を争う人気だったので、まあ、おたくがそんな綺麗どこの二人の女性にもてるのは男冥利につきるけど、二股をかけるなんてさ、それを知ったプライドの高い女性同士が鉢合わせするのは修羅場になるかもね。」と心配顔で言うそぶりだが、その目は、興味津々、面白がっているようにも見える。
「いや、二股なんてしてないよ、あおいと付き合いはじめたのは、ひろみの音信が途絶えた後だから、二人と同時進行した関係ではないし、それにあおいにはひろみの存在を前もって伝えていたからね。」と言い返す。

彼とそんな話のやり取りをしていると、待ち合わせ定刻になり、仮面妻のひろみが来て、「あら、佐野っちもいるんだ。もう二人は仲良くなっているのね。」と彼を見ながら会釈をする。
彼が「こちらにひろみのこと聞いたよ、もう元気になったのかな?」と聞くと、彼に「ええ、どうにかね。」と応えながら、
僕には「しばらく会えなかったけど、貴方とも久しぶりになるわね。何事もなかった?」とちょっと含みを持たせた言いようだ。そして店内を見渡し、
「あの女性グループはあおいちゃん達だわ。彼女もこの店に来るようになったのね。ずいぶん会ってなかったけど、久しぶりに挨拶してくるわ。」と言うので、
僕は慌てて、「ちょっと待ってくれるかな。その前に話があるんだ。」と言って止める。
「えっ、話って何なの?」と怪訝そうだ。
佐野っちが、そんなやり取りを聞き入っているような感じで、彼女もその尋常じゃない空気を察してか、「あおいちゃんと関係があるの?」と問い詰める。
「君にはすまないと思っているんだけど・・」と応え始めると、
「分かった! 貴方がここで会っていた女性って、あおいちゃんのことなんでしょう。」
と僕が白状する前に言い当てている。女の色恋沙汰についての勘が鋭い
とつくづく認識させられた。