駅の改札を出るとすぐにあるパン屋さん、
いつもは２０時にしまるのに１５分過ぎてもまだ開いていた。
（あぁ良かった）とこころで呟き、
慌てて明日の朝のためのパンをトレーに乗せてレジに向かう。
すると、ミニのプリーツスカートにブラウス姿の女子高校生が、
肩にかけていた大きなバックを隅に置き、
パンを袋に入れている女性の横に立ちレジを打ち始めた。
「メロンパンが１点、チーズロールが２点…合計８２０円でございます！」
その堂々とした張りのある声にあっけにとられて千円札を出すと、
「千円おあずかりします！」と丁寧にお札を受け取り、
もうすでにレジを〆るために数え終わった現金の箱からおつりを出し
「１８０円のお返しでございます！」と小銭を手渡した。
受け取った小銭を私が財布にしまうと「レシートでございます！」と、
きっと私の手元をよく見ていたのであろう、タイミングよくレシートを手渡した。
「はぁ…しっかりしてるわねぇ。立派な社会人だわ！」と、
あまりに素敵な接客に思わず声をかけてしまった。
すると、隣の女性もパンの入った袋を私に手渡しながら、
「そうなんですよ～」とにっこりとうなずいた。
いやはや素晴らしい。何が素晴らしいって、
２０時を１５分も過ぎて、店の制服から着替えを済ませていたのだから、
そのまま帰ってもまったく問題はないのに、
客が入って来たと見たら、すぐにレジの応援に入るその精神だ。
働く仲間を思いやる気持ちか、家路を急ぐ客のためか、
なんとも機敏で爽やかな動きの理由に想いを馳せていた。
その女子高校生はうれしそうに目を輝かせてこう言ったのだ。
「わたし、働くのが大好きなんです！」
働くのが好きなんだ！だから、労力を惜しまないのか！なんという衝撃…。
小さなことに文句を言っている日頃の自分を振り返り
不満の陰が映っていやしないか、自分の背後が心配になった。
まったく近頃の若いもんときたら…近頃の若いもんときたら
なんと立派なんだ！!