今回ご紹介するのは「ブルーバレンタイン」(2010年)。ある夫婦の関係の終わりを描きます。
”Namorados pra Sempre" Photo by Água com Açúcar
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看護師のシンディ(ミシェル・ウィリアムズ)と塗装業のディーン(ライアン・ゴズリング)は結婚して数年の夫婦。
娘のフランキーと3人暮らしです。
シンディはキャリアアップを考えており、実際、勤務先の医師からその話があります。
この話を受けると、シンディはウィークデーは家族と離れて暮らさないとならないため、一人思案中です。
ディーンはビールを飲みながらペンキを塗る稼業を気楽にこなしています。
ディーンは稼ぎは少なくとも、何より妻と娘と多くの時間を作ることを大切にしている、と言います。
娘とも仲良しな父親ではあります。
シンディはそんなディーンに「もっとしたいことはないの?」と尋ねる。
例えばキャリアアップしなくて良いの?と。
ディーンは怒るんです。
誰かの夫になり、誰かの父親になる人生を想像してなかったけど、俺は今幸せなんだ、そんな自分に自分でも驚いている、と。
シンディは元々医師志望です。
過去が描かれますが、ある件のため一旦断念しているんです。
だからキャリアアップには情熱がある。
2人のどちらが悪いとかじゃなく、価値観が違っているんですね。
2人は既に気持ちやら何から何まですれ違っている。
だから一緒にはいられない、そういう状態になっているんですね。
対して、2人の出逢いから結婚までの経緯が現在と交錯する形で描かれます。
ディーンが結婚を決意した場面、普通出来ないことなんじゃないですかね。
そんな過去があっても、うまくいかなくなることがあるわけで。
情熱的な結婚をして数年後には彼の愛は一方通行になっている。
スーパーで最悪の元カレと再会したシンディがわざわざそれをディーンに報告するんです。
ディーンが怒るのもそりゃそうだと思いましたが、後で出てくる過去シーンを観ると、彼が怒った理由がさらに分かります。
と言うか、このシーンはシンディがよく分からなかったかな。
シンディが一番元カレの名前を出したくもないはずですけども。
まぁ、 ディーンの言動もアレだから、良いときも悪いときも夫婦はお互いさまなんですね。
どんなに相手に身を捧げても、終わるときは終わってしまうのが恋とか結婚生活です。
ディーンもシンディも壊れた家庭で育ったので、娘にはそうさせたくなかったはず。
しかし、悲しい歴史が繰り返される。
ディーンの 後を追う娘と娘を制止するシンディ。
出逢ったばかりの頃、店の灯りを頼りにディーンがウクレレを弾きながら歌い、シンディが踊るシーンがあります。
店のドアにハートの飾り付けがしてあるんですが、バレンタインだったのかな。
歌詞が数年後を暗示しているような内容ですが、出逢った頃はそういう歌も楽しいものです。
エンドロールでこのシーンの音声のみがもう一度流れるのが切ない…。
関係が破綻している現在と2人が出逢った煌めく過去を交錯させて描く作りがこの重さを引き立たせるんです。
「ブルーバレンタイン」はこうして愛の終焉を淡々とリアルに描いてゆきます。
いや~、重かったですね。
ロマンティックとかそういうのを期待すると裏切られます。
それに生々しい表現が苦手な僕には合いませんでした。
何度か観たら解釈が変わったり深まりそうな作品ですが、僕は観ないでしょうね。