「007/スカイフォール」~過去を許して今を生きる。 | ネコ人間のつぶやき

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 今回は「007/スカイフォール」(2012年)。イスタンブールでジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)は重要機密を強奪した犯人と列車の屋根の上でもみ合ううちに、M(ジュディ・デンチ)の指示で味方が撃った銃弾に当たり川へ転落する。・・・

 

"skyfall-poster" Photo by  22860
source: https://flic.kr/p/dKZFrL

 

(※今回はネタバレです。御了承下さい)

 

 イスタンブールでの事故から3か月後、MI6本部が何者かによって爆破される事件が起きます。

 

 トルコの海辺で密かに休養生活を送っていたボンドは、事件を知ってロンドンに帰還しますが、死んだと思っていたボンドの登場に驚くM。

 

 ボンドが「あなたの『さっさと撃ちなさい!』という声が聴こえましたよ」と嫌味を言うとMは「私に謝れって言うの?あの時はああするしかなかったのよ」。

 

 見方を変えると、息子が過去の過ちについて母親に謝罪を求めても口喧嘩に終わる、という感じかも・・・と。

 

 その後心身ともにボロボロのボンドはなぜか復帰試験を合格しますが、それはMの独断だったんです。

 

 なんだかんだと言いつつMはボンドを信頼しているんですね。

 

往年のファンに嬉しい1964年式アストン・マーチンDB5とトム・フォードのスーツが映えるクレイグ・ボンド

"Skyfall-007" Photo by Miguel Angel Aranda (Viper)

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 古風なボンドと対照的に最先端のハイテクを駆使してMを追い詰める今回の敵がシルヴァ(ハビエル・バルデム)。

 

 かつてMの部下で優秀なエージェントだったシルヴァは、不正行為のためにMに見限られたことをずっと恨んでいて、復讐のために生きている男です。

 

 ボンドに「最後の二匹のネズミの話」をしたシルヴァは「ネズミは老婆に本性をねじ曲げられたんだ」と言います。

 

 シルヴァは、今現在を過去をすべてMのせいにしているんです。不幸な人の特徴ですけれども。

 

アカデミー賞監督サム・メンデスによる映像美が素晴らしい。

"Skyfall" Photo by Craig Duffy

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 対するボンドは「僕は自分が選択した」と言うのです。

 

 ボンドも一度Mに見捨てられたわけですが、Mを恨んでいない、と答えたのですね。

 

 シルヴァは、自分はMのお気に入りだった、「君はその頃の私の足元にも及ばない」とボンドに言いますが、現Mのお気に入り・ボンドへの嫉妬心がうかがえます。

 

 シルヴァはMへの愛憎が激しいのです。

 

 母親的なM。そして二人の疑似的な息子たちがシルヴァとボンド。

 

 例えると、母親Mへの愛憎に燃えるシルヴァがボンドへの兄弟葛藤を抱いているという構図です。

 

 対してボンドは、Mに複雑な思いを抱いていても、恨みではなく赦し、彼女を守るという、いわば親孝行に昇華しているんですね。

 

 生家のスカイフォールを自ら吹き飛ばす際にも「前からここは嫌いだったんだ」と言い放ったボンドは、必要なら過去を忘れることさえ厭わない男ですからね。

 

"Daniel-Craig-as-James-Bond-in-Skyfall.jpg" Photo by Christopher Penn

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  これまで「後悔しない。私はプロよ」と言ってきたMですが、さすがに今回はうなだれながら「私は最低な女ね」とつぶやく。

 

 するとボンドは「いいえ、あなたは仕事をしただけです」と返す。

 

 ボンドはMを既に赦し、慰めているんですね。

 

 Mを守りながら生家「スカイフォール」でシルヴァを迎え撃つボンド。

 

 でもMは重傷を負ってしまい、ボンドの腕の中で息を引き取りますが、彼女の最期の言葉は「あなたを信じたのは正しかった」。

 

名優ジュディ・デンチのMが見納めなのは寂しい。

"1123220 - Skyfall" Photo by bridgevillepennsylvania

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 Mがデスクに置いていたユニオンジャックを背負うブルドックの置物はロイヤル・ドルトン社製「Jack the Bulldog ジャック・ザ・ブルドック」。

 

 イギリスの国犬はブルドックで、その意味は「勇猛で粘り強い英国人の象徴」とのこと。

 

 ジャック・ザ・ブルドック(以下、ジャック)の意味も同じです。

 

 奇しくもMがボンドの追悼文に「彼はイギリスの不屈の精神の模範」と書いた、というくだりがありました。

 

 シルヴァの攻撃で吹っ飛んだMのデスクから唯一残ったものがジャックですけども、Mは遺言でそれをボンドに遺したのです。

 

 ボンドはMから譲り受けたジャックを「現役続行せよ」というMの意志だと解釈しましたが、「決して負けるな、屈するな」というMの遺言だったのでしょう。


こちらはロイヤル・ドルトン社製「チャーチル・ブルドッグ」

"Churchill Bulldog" Photo by annapolis_rose

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 考えてみれば、ジャックはずっとMの一番のお気に入りだったんですよね。

 

 爆破でデスクと共にジャックが吹っ飛んでも、その破片を貼り合わせて直してまでして新しいデスクに置いたくらいですから。

 

 向こうの人は愛する家族の写真を職場のデスクに飾ったりしていますが、Mにとってジャックは愛息の写真のようなものだったのでしょう。

 

 Mにしたらずっと前からジャック=ボンドだったわけです。

 

 ちなみに、Mの遺品であるジャックは、続く「スペクター」、そして最新作「ノー・タイム・トゥー・ダイ」にも登場するようですよ。

 

"OCD007-SKYFALL" Photo by Olivier Carré-Delisle

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 振り返れば「カジノ・ロワイヤル」でボンドを00(ダブル・オー)に昇格させたのはM。

 

 ルール無視のボンドに「昇格させたのは早すぎたかしら」とチクリと言いつつも彼を理解し続け、「慰めの報酬」でもボンドに「戻って来て」と言ったM。

 

 Mは危ういボンドをずっと心配しながらも彼に絶大な信頼を置いてきましたからね。

 

 そんなMへの恩返し・親孝行が「スカイフォール」のボンドです。

 

 「カジノ・ロワイヤル」で散った恋人ヴェスパーが遺した試練とは「復讐への誘惑を克服できるか?」だった、という話を前に記事にしました。

 

 ボンドは続く「慰めの報酬」で悟り、ヴェスパーの遺した試練を乗り越えたんです。

 

 こうして成長したボンドは、過去にこだわらず、今現在を生きるようになっているのだと思います。

 

 ボンドはMを赦すことが出来たのもいわばヴェスパーのおかげでもあったわけで、そういう意味でも、やはりヴェスパーは運命の女性だったのですね。

 


(※今回の記事は2014年10月23日の過去記事をリライトしました)