ノーマン・ロックウェル。私がこの画家を知ったのは、かれこれ四半世紀くらい前。わたせせいぞうさんの「ハート・カクテル」を読んでからです。その後私はノーマン・ロックウェルの画集を購入し、心を奪われました。
中でも一番のお気に入りは「ランナウェイ」。家出少年と彼を保護した警官のおじさん。そしてダイナーの店主の心あたたまる風景ですね。
「ランナウェイ」(1958年)
少年を相手して彼の話を「そうか、そうだったんだね」という感じで聴く心優しき人情あふれる大人たちの姿。きっとお腹を空かせているであろう少年に食事もさせたんだろうなあ…。
ノーマン・ロックウェルはアメリカの庶民の平凡な日常の風景を描きました。そこにあるのは人生の喜びと哀しみ。そして「こうあって欲しい」というロックウェルの優しい願望です。
「Homecoming」(1924年)
"Homecoming" Photo by Cliff
source: https://flic.kr/p/8XF6UL
「Homecoming」は何か事情があって長く家を離れていた男が帰宅し、ワンちゃんが男を出迎え、再会したふたりが抱き合うという心温まる作品です。
帰還兵の息子や父親が無事に家に帰り、家族が驚きと喜びで出迎えるといった彼の他の作品と共通するモチーフです。やはり「無事に帰ってきて欲しい」、「再会を果たしたい」のが人の情です。
「初めてのデイト」(1957年)
"1957...After the Prom-by Norman rockwell" Photo by James Vaughan
souece: https://flic.kr/p/71SdWd
「初めてのデイト」(1957年)はプロムの後、少年が相手の少女にブーケを贈り、店主が少女と一緒にそれを見つめるという図。
微笑ましく、ユーモアあふれる大人と子どもたちの風景ですね。横に座っている客も微笑んでいます。
子どもたちのピュアな心に触れて、大人たちも自分の心のタンスを開けて、奥からかつての自分の純粋無垢さを取り出す一瞬ですね。そして若いふたりの恋を祝福するという、ね。
「自画像」(1960年)
原題にあるように、三重に自画像が描かれている、というノーマン・ロックウェルの有名なセルフポートレイトです。
ノーマン・ロックウェルがユーモアに溢れ、それを絵筆で表現する卓越したセンスの持ち主だったことがよくわかりますね。
ノーマン・ロックウェルは、人や社会の光と影の両方を見てきたのです。そして現実を踏まえたうえで「こうであって欲しい」という願いを込めているのですね。
彼が描いたユーモラスな大人と子どもたちの姿にホッとするような気持ちになる。だから私たちの心にじんわり温かく大切なことを伝えてくれる。
いつの時代も、もちろん現代社会もノーマン・ロックウェルが描いた優しさや思いやり、人情って必要だなあ・・・と感じますね。
それはユーモアを失わない心です。だから私はノーマン・ロックウェルがずっと好きなんでしょうね。これからも。