3)蓄蔵貨幣

W-Gが終わったところで変態を中断し、流通から引き揚げられて、留めおかれると、貨幣は蓄蔵貨幣となる[i]



・金が金の現物のままで貨幣としてあらねばならない。[ii] (本来の貨幣)


[本来の貨幣蓄蔵]

貨幣蓄蔵を繰り返して、蓄蔵貨幣を積み上げていく。


[資本主義的生産の下での貨幣蓄蔵]

貨幣所持者は貨幣を資本として運動させることによって増大させる。[iii]


4)支払い手段

商品が掛け売りされ、その譲渡と価格の実現とが同時でなく、時間の上で分離されると、貨幣は支払時点で〈支払い手段〉として機能。(=債務を決済して債権債務関係を終わらせる。[iv]


5)世界貨幣

貨幣が国内流通から国際流通へ出る場合は、国内流通でとるようになった価格の度量標準、補助貨幣、価値商標などのいっさいの「国民的な征服を脱ぎ捨てて」金の地金形態に戻る。[v] 世界市場では、重量による度量システムがそのままの価格の度量水準としてもちいられるのであり、そのような姿をもって世界市場で機能する貨幣が世界貨幣である。[vi]


[世界貨幣としての貨幣の諸機能―非産金国間の場合―]

 国際的支払い手段

輸出入によって生じる債権・債務の差額決済のために支払われる貨幣

 国際的購買手段

諸国の間で、商品の輸出入を直ちに現金で決済する場合

 富の絶対的形態

なんらかの理由である国から他の国に対して富が引き渡されなければならない場合[vii]

例)戦後の賠償金


以上が本来の貨幣の機能であるが、支払い手段の機能が発展すると〈信用貨幣〉が生まれてくる。商業手形が債務請求権を体化するものとして流通するようになり、信用制度の発達とともに銀行が金の支払いを約束する一覧払の手形である銀行券で商業手形を代位するにいたると、金と銀行券との交換が行われるかぎり、銀行券は信用貨幣として金と同様に流通する。銀行券とならんで預金通貨も信用貨幣として機能するようになり、発達した信用制度のもとでは、金は流通の表面には表れないようになり、さらに銀行券の兌換が停止される不換制のもとでは金は国内流通から姿を消し、もっぱら管理通貨として流通する。[viii]




[i] 大谷禎之助『図解 社会経済学』(2001)桜井書店p102103参照

[ii] 都留重人『岩波経済学小辞典』(1999)岩波書店

[iii] 大谷禎之助『図解 社会経済学』(2001)桜井書店p104参照

[iv] 大谷禎之助『図解 社会経済学』(2001)桜井書店p105参照。

[v] 富塚良三・種瀬茂・浜野俊一郎[]『資本論体系2 商品貨幣』(1984) p106-111三宅義夫 有斐閣。

[vi] 大谷禎之助 『図解 社会経済学』(2001)桜井書店p111参照。

[vii] 大谷禎之助 『図解 社会経済学』(2001)桜井書店p111参照。

[viii] 都留重人『岩波経済学小辞典』(1999)岩波書店。










金貨幣論

貨幣の5つの機能 

1) 価値尺度

・商品の価値表現の材料となり、価値を量的に比較しうる大きさとして示す。[i]

・価値尺度としての金は、ただ観念的、表象的な形態であり、表象・指示しているのは実在の金。[ii]

〈派生機能―価格の度量標準〉

金の一定量で商品価値を表現したものが価格であって、いろいろな商品の価値はいろいろな金量であらわされるから、金の固定された量を度量単位として価格を示す必要が生じる。

この固定された金量に円とかドルとかポンドとかいう貨幣名がつけられ、価格はこの貨幣名で表示されるようになる。ポンドの場合は、最初は重量名が貨幣名とされたが、貨幣素材の銀から金への変更その他の原因で、貨幣名は重量名から離れるようになった。[iii] この時、金は計算貨幣として機能する。[iv]

・価値尺度として機能する金や銀のような貴金属を〈本位貨幣〉という。[v]

2)流通手段

・商品流通[vi] の媒介物としてのW-G-WにおけるG。(=社会的な物質代謝を媒介する)

・この機能では、貨幣は商品と商品との交換を媒介するのにとどまり、一時的・経過的な存在。

・流通手段として機能するために、貨幣の鋳貨形態〈本位貨幣〉(⇔補助鋳貨)が生まれるが、鋳貨は流通中に必然的に摩滅し、価格の度量標準としての金量と流通する金貨の金量とが分離し、後者は〈価値章標〉(=貨幣の単に象徴的な存在[vii] )となる。

・流通の手段において、貨幣は一時的存在であるから、摩滅した金貨も価値章標として完全重量の金貨を代理することができ、さらにまた金貨は補助貨幣や紙幣(強制通用力をもつ)によって代理されうる。[viii]



[i] 都留重人『岩波経済学小辞典』(1999)岩波書店。

[ii]  大谷禎之助 『図解 社会経済学』(2001)桜井書店p93参照。

[iii] 都留重人『岩波経済学小辞典』(1999)岩波書店。

[iv] 大谷禎之助 『図解 社会経済学』(2001)桜井書店p95参照。

[v] 都留重人『岩波経済学小辞典』(1999)岩波書店

[vi]  商品流通は、物物交換の場所的制限を打ち破って、人間労働の物質代謝を発展させる。

[vii] 大谷禎之助『図解 社会経済学』(2001)桜井書店p102参照。

[viii] 都留重人『岩波経済学小辞典』(1999)岩波書店

[ix] 大谷禎之助『図解 社会経済学』(2001)桜井書店p102103参照

[x] 都留重人『岩波経済学小辞典』(1999)岩波書店

[xi] 大谷禎之助『図解 社会経済学』(2001)桜井書店p104参照

〈反対に作用する諸要因〉―本間要一郎・富塚良三[] 『資本論体系 第5巻 利潤・生産論』(1994) 有斐閣 第三篇 利潤率の傾向的低下法則p64-79 富塚良三。より― 


資本の累進的蓄積に伴う労働生産力の発展と資本の有機的構成の累進的高度化にもかかわらず、利潤率のそれほど急速な低下現象が見られないのはなぜなのだろうか。マルクスは、それは、この法則の作用と交錯して現れ、それを阻害し、この法則に「たんに一傾向という性格のみを与える」ところの「反対に作用する諸要因」が資本蓄積と生産力発展に伴って、その過程そのもののなかから絶えず生み出され、複合的に作用するからであるとする。

以下、これらの諸要因について説明していく。

剰余価値率の上昇

労働生産力の発展は一般には資本の有機的構成の高度化を伴うであろうが、しかしまた反面では労働力の価値の低下=剰余価値率の上昇をもたらす。

『資本論』第3部第3篇第15章「法則の内的諸矛盾の展開」の第2節に次のような叙述がある。

「充用される労働力に関しても、生産力の発展は二重にあらわれる。第一には、剰余労働の増加、すなわち労働力の再生産に必要な労働時間の短縮において。第二には、あたえられた一資本を運動させるために一般人充用される労働力の量(労働者数)の減少において。この両運動は、相携えて進むのみではなく、相互に条件づけ合うものであり、同じ法則の表現たる2つの現象である。だが、それらは、利潤率については反対の方向に作用する。」

(K..S.257-258)

労働搾取度の増大

「労働日」の延長および労働密度の増大、すなわち「労働の外延的ならびに内包的増大」による〈労働搾取度の増大〉は、資本が同数の雇用労働者から搾出する生きた労働力そのもの、したがってまた(剰余価値量の増大の限界たる)価値生産物量そのものの増大を意味するのであるから、それ自体「機械制大工業の所産」たる相殺要因は利潤率低下法則の貫徹を緩慢にする。しかし、これには「元来つねに24時間よりも小であるところの平均労働日の絶対的制限」が存在する。

労働力の価値以下への切り下げ

不変資本の価値低下

労働生産力の発展による機械設備ならびに原料・補助材料などの不変資本諸要素の価値の低下は、生きた労働量と対比しての生産諸手段の増大と同じ割合で不変資本価値量が増加することを妨げるのであって、時には生きた労働量に対する生産諸手段の増大にもかかわらず不変資本は同じままかあるいは減少する場合さえもありえないではない。もっとも、そうした場合が一般的であるとは到底いえない。しかし、こうした不変資本諸要素の価値の低下は生活手段の低廉化による労働力の価値低下・剰余価値率上昇と同様に生産力発展の直接の帰結なのであるから、これもまた利潤率低下傾向に対する有力な阻止要因になる。

相対的過剰人口の圧力

資本の有機的構成の高度化は絶えず相対的過剰人口を創出する。この過剰人口が提供する低廉な賃労働は、それを直接の搾取基盤としてこれに吸着する、劣悪な労働所条件の生産諸部門、中小零細規模企業に存立の余地を与え、また絶えずそれらを再生せしめる。これらの諸部門において低い資本構成のもとで、しかも以上に高い率で搾出される剰余価値もまた、社会の利潤総額の一部をなし、種々なる機構を通じて平均利潤率の形成に参加せしめられる。

外国貿易の利益

1)外国貿易が不変資本の諸要素を、または労働力の再生産に要する生活必需品を、より安価にせしめるかぎりでは、剰余価値率を高め不変資本価値を低下させることによって、利潤率の上昇に作用する。

2)生産力の発展度のより高い先進国が生産力の発展度のより低い後進国に商品を輸出する場合に、輸出国はその商品を輸入国の価値以下に、だが輸出国の価格以上に販売することによって「超過利潤」を得る。この超過利潤は「質的により高い労働として支払われない労働がかかるものとして販売される」ことによって修得されるものであり、それは新たな生産方法が一般化する以前にそれを利用する資本家が特別利潤を実現するのとまったく同様なのであるが(K,,S247-248.[266])、


この場合の超過利潤率は、輸出国と輸入国との間にその産業部門における生産力格差が持続する限り引き続き獲得されうべきものであり、しかも(通常の特別利潤率の場合とは異なって)、輸出国にとっての社会的な価値の純増加を意味する。

そして、この価値の純増に裏付けられた特別利潤率もまた、競争を通じて一般的利潤率の均等化に参加せしめられるのであって、それゆえにまた一般的利潤率の上昇に作用する。

同じことは、先進国相互間の貿易においても生じる。なお、賃金率が低く、労働搾取度の高い、また多くの場合自然的諸条件にも恵まれた植民地ないしは発展途上国に直接に投下された資本の習得する効率の利潤もまた、母国の一般的利潤率の上昇に作用する。

株式会社の増大

たとえば鉄道のような巨大な、そして資本構成のきわめて高い生産企業に投下されている資本は、株式投資としてただ、配当を取得するだけであって「一般的利潤率の均等化には参加しない」ので、それだけ利潤の低下が緩和されるであろう、というのが、その趣旨である。←妥当でないとの指摘が多い。