金廃貨論をめぐる論争 

富塚良三・種瀬茂・浜野俊一郎[]『資本論体系2 商品貨幣』(1984) 有斐閣 p272-278 執筆者:小野朝男。より―

背景

1922年 ジェノア会議

金に代わって金為替が国際間の最終決済手段に利用されるように。対外支払い準備のなかに金と並んでポンドやドルの主要外貨(金為替)が加えられる。→あくまでも、金との兌換が条件

戦後 IMF体制下でのドルの基軸通貨化

→アメリカ政府が外国通貨当局保有のドルに限り金兌換を保証

19718月 ニクソンの声明によりドルと金の兌換が一時停止

→しかし、ドルは今でも、公然と大々的に国際間の一般的な支払い手段および一般的な購買手段として、さらにいえば最終的な決済手段として利用されている。


不換ドルであっても国際通貨として機能できるのでは・・?(=金廃貨論)

代表的な見解

岩野茂道氏(金廃貨論支持)

・流通手段や支払い手段、価値尺度機能でさえも、現実の金素材から分離される。そして、そのことから、不換ドルでも国家機関のような何らかの統合システム自身の「強制通用力」が与えられれば、通貨として流通する。→システムマネー論

岡橋保氏・楊枝嗣朗氏

・ドル手形は兌換、不換を問わず信用貨幣。

・「世界貨幣=金の国際的支払い手段としての機能を代理する貨幣代替物」であることから、国際通貨が存在する。

・金の価値尺度機能は否定されない。

楊枝氏―イマジナリ―マネー論[i]

富塚文太郎氏

・金は限られた範囲と機会において世界貨幣として機能しうる。

・国際通貨としての金の現代的意義については否定的。

各論者の共通点

世界貨幣の領域と国際通貨の領域を明確に区別され、前者において金の機能を認めながら、後者においては、金の全面的な廃貨を認める。


久留間健氏・片岡尹氏・平勝広氏

金廃貨論者だが、国際通貨の領域に限っても、金が現身で現れる余地を残す。

今日の不換ドルが国際間の最終決済手段として大々的に利用されているのは、国際協調の名のもとに行われている「最終決済の繰り延べ」(平氏)、あるいは「為替リスクの回避」(深町侑彌氏)に支えられた準備通貨としての保有を根拠としている。

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小野朝男氏の見解― 金廃貨論は理論的に行き詰る

金に対する民間の主な需要は,産業用,インフレ・ヘッジを目的とする投資的退蔵,値上がり期待の投機的退蔵である。このような金の民間取引の活発化は,固定相場によるものではないにせよ,金本位制下で行われていた銀行券の金兌換の事実上の復活ではないか?[ii] という意見もある。→金は廃貨していないという立場

松尾匡先生-『資本論』が書かれた時代は、金本位制であったため、貨幣は金であるとして話が進められているが、今日ではあてはまらない。[iii] →金廃貨の立場



[i]  岡本悳也 *忘却された貨幣論*~貨幣金融システムの虚構性現実性~[wwwsoc.nii.ac.jp/jsme/kinyu/pdf/07f/07f209-okamoto.pdf]2011719ダウンロード)

[ii]  富塚文太郎 貨幣は価値尺度ではない[www.tku.ac.jp/kiyou/contents/economics/259/119_tomizuka.pdf]2011719日ダウンロード)

[iii]  松尾匡 『図解雑学 マルクス経済学』(2010) ナツメ社 p186-187参照。