「双仮名手本三升/裏表忠臣蔵」@新橋演舞場 | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

補綴/演出 石川耕士

演出/振付 藤間勘十郎

團十郎/梅玉/児太郎/廣松/梅花/歌昇/右團次/男女蔵/虎之助/市蔵/九團次

 

 「仮名手本忠臣蔵」を “表” として要点を押さえ超スピードで通しながら、その間に、その “表” に描かれていないエピソードを “裏” として挿入したもの。ところどころ???の部分はあるけど、面白かったです🎉

 團十郎は高師直、勘平、斧定九郎、大星由良之助の4役師直は品格とかはあまり見せてなくて、好色の憎ったらしいパワハラ爺という風だった😅 判官(梅玉)をいじめるところはちょっと戯画味を感じたな。

 定九郎のようなどろりとした悪党は、團十郎はぴったりで、雨でじっとりと濡れた着物の裾を絞り、髪に付いた水滴を払うところに凄みと色気がありました

 勘平柔らかさとそこから漏れる色っぽさがあって良かった。撃ったと思った猪をさぐるうち、それが人であることに気づくも、財布を見つけて奪うところまで丁寧に見せていて、若かりしころの海老さんを思い出しちゃった。続く六段目も、自分が撃ったのが義父だと知った時の絶望から切腹まで、気負うことなく自然な演技。

 そして由良之助。これが意外にも悪くない……というか、かなり良かったです👏 判官切腹の場では、主君の悔しさとその意思を、胸をポンと叩いて受け止めるところまでしっかり見せ、城明け渡しのあと仇討ちをググッと決心するところ、言葉は少ないけど確かに伝わってきた。七段目での遊びに耽るフリをするところは、はんなりした柔らかさ不足かな。

 で、前にも書いたけど、團十郎はまだ「仮名手本忠臣蔵」で由良之助を演じてないのですよ。なのにこの「裏表版」で由良之助を初役で演じる。しかもそれが割と良いときている。早く王道「仮名手本忠臣蔵」の由良之助をやらなくてはって思わないのかな😔 3月歌舞伎座での通し狂言「仮名手本忠臣蔵」ここに、本来は真ん中にあるべき團十郎の名前がないのは非常にまずいと思うのですけど。

 

  “裏” の部分は勘平と定九郎に焦点を当てていて、加古川本蔵も少し。1場をまるまる使ってしっかり見せていたのが、江戸へ向かう由良之助(團十郎)が金谷宿で加古川本蔵(梅玉の二役め)と邂逅するところ。ここで本蔵が由良之助に通行手形を譲るんだけど「勧進帳」のパロディみたいになってました😅 本蔵の主君である若狭之助(右團次)も師直にパワハラ受けてたので「もし若狭之助が師直を斬りつけていたら、家臣である本蔵は由良之助と同じ立場になっていたかも」という運命の綾を見せたそうですが、この場が必要かどうかちょっと疑問。判官切腹後に出番がなくなる梅玉さんのために作ったような気がする。

 

 おかる(児太郎)が師直に顔世御前からの文を届けに行くシーンを見せたのはよかったです。「このあと勘平と逢引きするんだな」と案内する奉公人に言わせることで、おかるのこの行動が勘平の悲劇的運命につながることが分かる。で、その勘平(團十郎)、六段目で切腹した後、亡霊となっておかるの前に現れたり……その後もあちこちに……😊

 

 いちばん面白かったのは斧九太夫(九團次)定九郎(團十郎)の父子の話。山崎街道で定九郎がおかるの父を殺して50両を盗むのを見ていた父九太夫が、それ俺に貸せって50両をもらい、結局その九太夫が勘平の鉄砲玉に当たって死んでしまう。七段目で、由良之助が読む密書を縁の下で盗み見て殺されるのは定九郎と一緒に忍んでいた相棒。つまり、定九郎はまだ死なないんですよ、これが大詰に繋がるわけで

 團十郎は「由良之助に対峙する悪として」定九郎の設定をこのように変えたらしい。しかも定九郎はおかるに横恋慕しているのだと。どうせなら1場を作ってそのあたりじっくり見せて欲しかったくらいに面白いスピンオフです。

 その定九郎は師直の家臣になっていて、最後は赤穂浪士たちと戦うんだけど、すっぽんから現れた勘平(團十郎)の亡霊に撃たれて死ぬ。これで、勘平(の霊)が義父の仇を討ったことになるという、なかなか良いアイディア。そして、死んだ定九郎の霊は宙乗りでユラユラと黄泉の国へ旅立ち、観客は大喜びでした~😆

 

 塩冶判官と加古川本蔵の2役で梅玉さんがお付き合いしてくれたの本当にありがたいです🙏 特に判官には気品と程よい重さがあり、白装束姿が悲しくも神々しいくらいに美しい。切腹の場はフルでたっぷり見せていて、由良之助を待つ心情が伝わってきて切なかった。児太郎のおかる廣松の顔世御前梅花のおかや歌昇の平右衛門も良かったな。

 一方、團十郎の4役早替わりが見どころなんだけど、男女蔵とか右團次とかせっかく良い役者さんが同座してるんだから、そういう人たちに重要なお役をつけて欲しかったです😔 また、市川右近くんの名前をしばらく見ないの気になっていたんだけど、今回、浪士の1人として(この時だけ師直側になった)パパ右團次と立ち回りを見せていた。動きが緩くセリフも心許なかったな。筋書に「久しぶりの舞台です」とあったけど、同世代の御曹司たちはどんどん舞台に立っているのに気の毒😢 もっと舞台に出してあげてほしいです。

 

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