アイルランド映画祭2023「ステップス・オブ・フリーダム」(2021年) | 明日もシアター日和

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 駐日アイルランド大使館の主催による「アイルランド映画祭2023」(@角川シネマ有楽町)が開催されていて、上映作品のひとつ、アイリッシュ・ダンスのドキュメンタリーを観てきました。紹介文を引用すると「イングランドによる支配の中で原型が生まれ……その何世紀にも渡る物語や抵抗運動ともいえる歴史を、貴重なフィルムや力強いオリジナルパフォーマンス映像と共に追う……」ということで、ダンサーや振付家や音楽家などのコメント、豊富なダンスシーン、歴史を物語る映像・画像を組み合わせた作品。日本初公開です。

 予想以上に面白かった🎊 タイトルからも分かるように、アイリッシュダンスはイングランド/GB(以下、イギリス)の圧政に抗い続けたアイルランド人の自由への希求の象徴、アイリッシュ魂の拠り所であり、彼らのアイデンティティーの表出だったったんだなと痛感しました。

 

トレイラーを貼り付けます。ダンス映像かなり多い。

 

 アイリッシュダンスの話をおよそ800年前、イングランド王ヘンリー2世によるアイルランド侵攻・支配にまで遡って語り始めます。それ以降、断続的に繰り返されるイングランド/イギリスによる侵略・支配・弾圧。中でもアイルランド史上で最も残酷だったのは、ピューリタン革命の首謀者クロムウェルによるアイルランド侵略(1649~53)で、5年間で60万人のアイルランド人が殺され、アイルランドはイングランド化されます😭 生き残ったアイルランド人の多くは年季奉公者として西インド諸島に強制移住させられ、そこでアフリカ人奴隷と一緒に働き、夜は皆で焚き火を囲んで踊り、そこから両者のダンスが混じって……という歴史は全く知らなかったのでとても興味深かった。ちなみにクロムウェルはアイルランドで最も嫌われている人物ですよ☠️

 

 その後アメリカ本土でも、黒人のダンス文化とアイリッシュダンスとが、影響しあい交わっていく。抑圧からダンスが生まれていくという意味で両者は同じだ。

 イングランド/イギリスの支配・圧政でアイルランド人が失ったものは多いけど音楽とダンスは残るんですね。18世紀、ダンス教師たちが村から村へステップを伝えて歩いたそうで、それを通してアイリッシュダンスが体系的になっていく。19世紀末にアイルランドでは文化の復興が始まり、ダンスはイギリスに対する抵抗運動(自治回復運動=脱イギリス化)のシンボルになったのだと🇮🇪 20世紀に入りイギリスからの独立を経て1960年以降、それまで軽視され忘れられていた文化が蘇り、今に至ります。競技化やステージショー化することで、その在り方も変わってきているようです。

 

 ステップの形式は打撃系で、アフリカのダンスに似ている。フラメンコやインドのカタックにもステップ系ダンスが見られるけど、そうしたダンスの中でアイリッシュダンスの足捌きは最速だそうです。その後、上に飛び上がるステップが加わったりした。でもなんといっても特徴的なのは、上半身は動かさず脚と足だけで踊ることですね。この、上半身を硬直させたようなスタイルこそ、イングランド/イギリスの圧政に屈しない精神性の象徴なのだと。アイルランド人の反骨の表現方法、弾圧から生まれ進化したダンスという言葉が印象的だった。屋外で踊る映像も多く、アイルランドの美しい自然の風景は目の保養でした。それにしても(私はイギリス贔屓ですが、それは置いといて💦)イングランド/イギリスはアイルランドに本当に酷いことしてきたなと、胸が痛みます😢

 

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