愛之助/玉三郎/鴈治郎/吉弥(休演される前の回を観ました)/歌之助/松之助
仁左さまのばかり観てきたので、この作品を観るのはかなり久しぶりです。その間、幸四郎の「廓文章」も観ましたが、あれは清元&東京型だったので、ちょっと違うものだったしね(もちろん良かったですが)。幕が開いて格子先の場、餅つきの風景を見ていたら懐かしさがドドッと込み上げてきました。
自分で調べた限りですが、愛之助は伊左衛門を2012年浅草歌舞伎でやったきりなんですね、ちょっとびっくりです(夕霧は壱太郎)。東京以外では何度か勤めていて、今回は満を持して歌舞伎座で……なのかと思っていました。ということは、仁左さま伊左衛門のときに太鼓持で何度か同座してきているとはいえ、いきなり歌舞伎座で玉さま夕霧相手とは、相当な緊張とプレッシャーがあったのではないでしょうか😅
その愛之助の伊左衛門、なるべく仁左さまと重ねないように、比べないようにして観ましたよ。で、さすがに良かったです🎊 花道を歩いてくるときの心持ちクネ…とした動き、店の暖簾越しに奥の様子を伺う後ろ姿、和事独特の色っぽさがほんのりと感じられます。もちろんね、寒くて手がかじかんでしまう感じとか紙衣で身をやつした自分が惨め~というしょんぼりした感じとか、もう少し繊細に見せてくれるといいなあと思いはしたけど、すぐに、いや仁左さまを思い出してはいけない!と自分に鞭当てましたよ👍
笠を取ったところで見せる顔が上品で柔らかで、豪商のボンボンやな~と納得させる佇まい。お座敷での、なかなか自分を言い当ててくれないおきさ(吉弥)に「わしじゃわいのぉ~」と顔を見せるところ、夕霧の話題が出なくてジリジリする感じ、夕霧が出ていると聞いた松の間へ向かう例の見せ場、その夕霧が他の客の相手をしていると分かり「帰りましょ😠」と拗ねるも実は引き止めてもらいたいあのイジイジ、そのあとのふて寝からの、夕霧がこっちに来ると分かってソワソワするところまで、我儘だけど憎めない、愛之助なりの愛嬌、可笑しさ、柔らかさ、揺れる気持ち、よく出ていました。夕霧を待つ間にお酒を一口飲んで、赤い襦袢の袖をちょっと出し口元を拭く姿が色っぽかったな。仁左さまをしっかりなぞりながらも愛之助の伊左衛門ができていく予感がしました👏
玉さまの夕霧はもはや動く芸術品✨ 品格と艶やかさを振りまき、超豪華な打ち掛けに負けないどころか自分の一部として着こなす貫禄はさすがです(打ち掛けは、登場時=黒地で雪持ち柳と白鷺と流氷で風情があり、幕切れ=鳳凰と牡丹で客席から声が漏れるほどゴージャスだったー)。出てきて早々の、病み上がりのちょっとフラッとした気だるそうな動き、「わしゃ、わずろうてなぁ……」のセリフがまた妙に色っぽくてねー💓ゾクッとしました。しっとりと品のある佇まいと所作、そのゆったりとした動きで描かれる曲線の優美なこと。でも、伊左衛門に甘えるような拗ねるようなセリフにも傾城としてのプライドが感じられます。
愛之助と玉さま2人のやり取りは、香りがこぼれ落ちて3階まで仄かに香ってきそうな艶やかさ。最初は夕霧につれない態度を見せる愛之助伊左衛門、それを見て悲しくなり、かき口説いては涙する玉さま夕霧。でも、2人のお互いに対する愛情の深さはバレバレですね。やがて手を取り合う2人の姿の絵になることよ。
鴈治郎の喜左衛門と女房の吉弥は安定の夫婦。特に、どんなお役でもスッとその人物になって違和感ゼロの吉弥さん、とても好きだ(休演されたそうで、すごく心配です)。太鼓持は歌之助で、やはりとても緊張したと思いますが、懸命に勤めている姿が微笑ましい。玉さまは成駒屋3兄弟を育てようと目を掛けてくださっているようで、ありがたいことです。私もこの3兄弟は応援していますよ。
はぁ……良かったですワ。難しいことは何も考えずに、ただただ美しいー、可愛いー、華やかー、お目出度いーと思いながら観ていられる至福の1幕でした🎉