河東節開曲三百年記念演奏会・夜の部@歌舞伎座 | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

 歌舞伎は好きだけど、浄瑠璃はおろか、歌舞伎の音楽全般に関しての知識がない私ですが、行ってきました。お目当てはただ一つ、海老さんのお子たちです。レイカちゃんとカンカンが踊りを披露する、それを観たいという不純な動機。十寸見會の方々には失礼このうえないことです、申し訳ないごめんなさい

 昼夜で内容が違うのですが、夜の部に行きました(昼の部では菊五郎と菊之助が海老さんと一緒に「松廼寿翁三番叟」を踊られたようです)。夜の部の構成は以下の通り。舞踊の伴奏も、もちろん河東節十寸見會の方たちによる浄瑠璃と三味線です。

 

1 浄瑠璃「太平住吉踊」

2 口上 市川海老蔵

  舞踊「海老」

   立方 堀越麗禾/堀越勸玄

   後見 海老蔵/市川ぼたん

3 浄瑠璃「邯鄲」

4 舞踊「松竹梅」

   立方 市川ぼたん

5 舞踊「助六所縁江戸桜」

   立方 海老蔵

 

 というわけで、浄瑠璃については下手に感想は書きません。1つ目が終わって、いよいよです。まず、海老さんが下手から登場して口上。河東節のこと、その歴史、市川宗家との関係などを、敬意を表しながら分かりやすく語られ、その真摯な感じに好感持ちました。言葉の間や語尾の調子が團十郎さんにそっくりでハッとしました。「ゆくゆくは息子が『助六』を勤めさせていただく時も……」と言ったとき、ああ、それまで私は元気でいられるだろうかと、ふっと寂しくなりました。

 

 次の踊りの紹介では「(麗禾と勸玄の)2人は踊るというより、ここに存在しているという感じですので、なにとぞ……」と言って笑いを誘います。後ろの金屏風が開くと、赤布を敷いた平台に2人がちょこんと並んで座っていました。客席からわぁと温かく華やいだ歓声が沸き起こる。「れいかっ!」「かんげんっ!」と大向こうが飛び交います。

 レイカちゃんは赤い柄の着物を女の子らしく着こなしていて、その目鼻立ちの可愛いさは予想以上。ほんっと、美人道まっしぐらのお顔です。カンカンは落ち着いた格子柄の着物に、7・3に分けた髪でお澄まし顔。ちょっと首を傾けた姿が、精一杯「立派な役者」に見せているようで愛おしい。

 台座がスルスルと前に出てきて、2人が舞台に降り立ち、踊りが始まりました。カンカンは台から降りるのもたどたどしくて、転ばないでねっと心の中で祈りましたよ。

 2人の所作は愛らしく、まさに天使の舞です(語彙力なさすぎ苦笑い)。レイカちゃんはのびのびと気持ちよさそうに踊っていて、時々笑顔を見せる余裕も。3年前の初御目見え@八千代座を思い出し、大人になったなーとしみじみ。カンカンは神妙な面持ちで、お稽古してきたことをきっちり見せなくちゃという使命感が感じられる真面目な雰囲気(これがボクの仕事なんだという職業意識がもう根付いているのかな)。2人の個性の違いが出ていて面白かったです。

 ヒラヒラと舞台を左右に滑り、また中央でくっついて、2人が顔を見合わせてコックンと首をかしげる仕草がもう萌え萌えきゃー カンカンがレイカちゃんの肩にそっと手を置く仕草にキュンとなりましたキャッ

 

2人が踊ったのは「海老」という作品ですが、

 そもそも海老は親ににて

 幼少より髭長く

 目さえ めでたき次第なり

こ、これだけです汗 あっという間に終わりました〜 Queenly もちろん間を置きながらゆったりと歌うのですが、5分もなかった。でも、覚えたことを懸命に披露している2人にとって、それは長い時間だったことでしょう。6歳と4歳のちっちゃな子が歌舞伎座の舞台で3000人の観客を前に踊っていると思うと、胸が熱くなりました。海老さんが言ったように、その存在、この瞬間自体が貴重。強烈に記憶に刻まれました。

 

 最後は海老さんの素踊り「助六」。幕が開くと浄瑠璃方と三味線方合わせて100人を超える十寸見會の方たちがひな壇にずらりと並んでいて、その壮観さに思わずうわーっと声が出る。歯切れのいい河東節の調べに乗って「江戸随一のいい男」助六/海老さん、花道から登場……かと思ったら、下手から、傘で顔をかくしての登場でした。色彩感豊かな伴奏にも負けず、海老さん、華と粋をふりまきます。傘を操る所作が綺麗。いつの間にか後ろの十寸見會の方たちから海老さんが浮き出てきて、やがて舞台を支配していきました。ニラミもなんとか封印して、ひと安心。

 その前にぼたんさんの踊りがありました。ぼたんさん、凛とした姿で品があり、たおやかな舞の動きに見惚れました。

 今回は本当に貴重なものを観させていただきました。皆さんありがとう。