「エリザベート」3回目@帝国劇場 | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

井上芳雄/田代万里生/京本大我/涼風真世/成河/蘭乃はな

 

 前回、城田トートの素晴らしさを堪能したんだけど、私としてはやっぱり、今年のMy「エリザベート」は芳雄くんトートで締めたかったんですよね(遠征はしない)。

 

 あー、やっぱり、(城田くんもいいけど)芳雄くんトート、いいわ〜♡ あの声(歌もセリフも)を聞いた途端、一瞬で芳雄くんトートの世界に引き込まれる。特に、のびやかで深みがあって、きちんと発声されている歌声、中音の透明感ある響きにハートを掴まれます。ちゃんと歌詞がセリフになっているから、演劇性も高いのです。ときどき低音部分を荒げると、そこから人間的な感情が放たれて、とってもセクシーなんですよねハート

 城田トートは、日本人キャストの中にあるとビジュアル的に突出していることも手伝って、「人にあらざるモノ」=シシィの心が生み出した「死」の概念が視覚化されたモノであることを感じるけど、芳雄くんトートには人格(霊格?)や、青い血の流れを感じます。シシィに誘われて降臨した「黄泉の帝王」が、シシィに恋をしてしまった、そのシシィに自分を愛してもらいたいと願う存在、spiritなんだけど「heart/mind」をもった何かのよう。

 初日近くに比べると、さらにパワーアップしていました。立ち姿、歩き方、マントさばき、そのいちいちが美しい。特にその腕、手、指が表現豊かで、動くたびに言葉を発しているかのようでした。

 「最後のダンス」では、シシィのように、あんな風にトートに翻弄されたいと思ってしまいましたよハート 執務室でシシィに拒まれたときの表情は、少し寂しそうに見えたけど、体育室で追い出されたときは、そのうちオレを求めるに決まっているさ、という余裕の表情でした。

 

 成河はルキーニがすっかり体に染みつきましたね。この作品のコンセプトが、霊廟の中で行われる裁判劇であるということが、成河ルキーニの狂言回し手法によって、とってもクリアになっている。

 そして、相変わらず、舞台を縦横無尽に動き回る成河ルキーニです。巨大な棺のオブジェから飛び降りるところでは、膝のバネがしなやかに効き、ミルクを乗せたカートから後ろに飛び降りるところもヒョイって感じ。セリフが崩れることもなく、歌もきっちり歌う。出ずっぱりだから、終わったらクタクタだろうなー。

 三角ヤスリをトートから渡され、やっとトートさまのお役に立てると、狂喜でうっとりした表情が、こ、怖い。トートを「閣下」と呼ぶのはルキーニなわけで、その崇拝の度合いがわかるというものです。今回、シシィの刺し方がよかった。腕に勢いをつけて突くのでなく、スッとすれ違うと見せかけて、気がつくとヤスリがシシィの胸に突き刺っている。個人的にはこちらの見せ方の方が好き。

 

 田代フランツは年齢を重ねるに従って、その物腰、声の質、歌い方を変えています。若いころは四角張った感じで知性的、年を経るにつれて角が取れてまろやかになり、その分、情が勝っていく。ルドルフと対峙するところでは本当に父親に見えてちょっと驚き。高年では声を低く太く保った説得力のある歌い方で、そこに皇帝としての悲哀が感じられ、とても感動しました。

 また、今回は若かりし頃のフランツにも萌えました。お見合いの席でシシィを見つめるキラキラの瞳、宮廷には自由はないんだとシシィを諭し、「わかったわ」とシシィが頷くと(本当は何にもわかっていないんだけど)、ニコッと笑顔を見せる田代フランツが、いじらしいのよねー。

 

 京本ルドルフは、やっぱりまだ歌が弱いと思うんだけど、今回はそれがそのまま性格の弱さや不安定さと重なって見え、よかったかも。シシィに対する「ママは僕を見捨てるんだね」というセリフが、最初のほうでシシィがフランツに言った「あなたは私を見殺しにするのね」というセリフと重なって、あー、本当に2人は鏡どうしなんだなあと。マイヤーリンクで銃をこめかみに当てるとき、その恍惚とした表情には狂気が混じっていましたね。

 

 涼風ゾフィーは、その美貌を覆い隠すように冷たさをまとった皇太后として、かなりインパクトあります。今回は最期のシーンでちゃんと歳をとっている風に見えました。帝国の運命を背負い、そのために子どもたちを育てようと腐心し、最期まで凛として生きたゾフィーだけど、涼風さんからは、最後に一人の女性を感じることもできました。

 

 蘭乃さんの歌は、とっても不安定でした 苦笑 前回の初見のときは噂を聞いていたから、かなりハードルを下げて身構えたので、予想していたほど悪くないと思ったんだけど、今回は気持ちを改め、帝劇でタイトルロールなんだよ、という通常モードで拝見しました。

 音程を外さず歌うことに神経を集中させているような感じで、だから余裕がないのか、歌詞に感情がこもっていなくて、セリフとして聞こえてこないこともしばしば。精神病院の狂人シシィのほうが歌が上手いって、まずいんじゃないか?

 でも、セリフ&演技=蘭乃さんのシシィ像は悪くないと思う。十代の心のまま皇后として年齢を重ねてしまった、精神的に成長してないシシィ。自分をコントロールする術を知らずに大人になり、感情の吐露は少女のように激しいけれど、常に心は揺れている。夫も息子も民衆も国も犠牲にして、自分の自由だけを求めて生きた不幸な女性。最後まで気高さをまとうことができなかった蘭乃シシィも、ありかなと思いました。

 

 DVDが出ることが決まりましたね。キャストの組み合わせを変えて2ヴァージョンあるんだけど、なんと、シシィは両方とも花總さん。これって、蘭乃さんにとってはすっごい屈辱的なことじゃないかなあ。京本ルドルフが入っていないのは、ジャニーズ絡みか。